お知らせ・トピック FSC

ニュースレター25号が完成しました。是非ご覧下さい。

2021年7月14日

研究エッセイ
  水圏ステーション 忍路臨海実験所 四ツ倉 典滋
フィールドエッセイ【森の樹冠における植物と昆虫の相互作用】
  森林圏ステーション 和歌山研究林 中村 誠宏
動植物エッセイ【知床菫】
  耕地圏ステーション 植物園 東 隆行
Photo Gallery (1)
新任教員紹介
  森林圏ステーション 雨龍研究林 森田 健太郎
  森林圏ステーション 苫小牧研究林 植竹 淳
北方生物圏フィールド科学センターへの要望
  大学院農学研究院 西邑 隆徳(センター外運営委員)
Photo Gallery (2)
編集後記 

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植物の胚乳から三倍体と六倍体を同時に作る技術を開発

2021年1月29日

生物生産研究農場の星野洋一郎教授が、本学院環境科学院博士後期課程2年の中野有紗氏、千葉大学環境健康フィールド科学センターの三位正洋名誉教授の研究グループで倍数性育種の新たな手法を考案しました。

詳細は本学プレスリリースでご覧ください。

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ニュースレター24号が完成しました。是非ご覧下さい。

2020年12月25日

研究エッセイ「マイクロプラスチックが海洋生物に与える影響の研究」

  水圏ステーション 厚岸臨海実験所 仲岡 雅裕

動植物エッセイ「草でウシを飼う」

耕地圏ステーション 静内研究牧場 河合 正人

Photo Gallery

フィールドエッセイ「森林伐採に伴い放出されたCO2 を回収するために必要な時間」

  森林圏ステーション 天塩研究林 高木 健太郎

新任教員紹介

  水圏ステーション 七飯淡水実験所 黒田 実加

北方生物圏フィールド科学センターへの要望

  大学院理学研究院 小亀 一弘(センター外運営委員)

編集後記

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余市果樹園産リンゴ販売会のご案内

2020年11月4日

北海道大学・北方生物圏フィールド科学センター・生物生産研究農場・余市果樹園では、実習教育や研究のため、20品種以上のリンゴを栽培しています。

実った果実は、これまでは大学内の教職員に販売していましたが、今年は例年より多くの収穫することができたため、北大マルシェにて店頭販売を実施することになりました。

この機会にぜひ、お買い求めください!

日時 2020年11月7日(土)・8日(日)10時〜15時

場所 北大マルシェ Café&Labo 札幌市北区北9条西5丁目

販売予定品種

・ニュージョナゴールド

・陽光

・静香

・王林

・やたか

販売予定価格

 正品・1玉100円

 外品・1玉80円

注意事項

 駐車場はございません。公共の交通機関等をご利用ください。

 コロナ感染症対策の為、マスク着用にご協力ください。

 密を避けて距離を保つために、整列等にご協力いただく場合がございますので予めご了承ください。

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札幌研究林においてアート作品の展示をおこなっています

2020年9月29日

 札幌研究林では、科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)の朴 炫貞特任助教によるアート作品の展示をおこなっています。
これは札幌研究林の温室を使った展示プロジェクト「アノオンシツ」の一環として計画されたものです。今回ご紹介する「きいろい線とピンクの点」は、石山通開通に伴い分断された札幌研究林とキャンパスを結ぶ跨道橋が撤去されることとなり、その代替として新たに研究林内に作業道を通すため伐採される木々を使った作品です。
 また今回伐採される木は、本学農学部森林科学科の佐々木 貴信教授、玉井 裕教授、澤田 圭講師および施設部施設企画課の協力もと、可能な限り木材として活用し新たな命を吹き込む計画です。


展示は10月4日まで開催しますが、工事や研究林の作業などにより展示状況が変わる可能性もありますので、詳細はアオノオンシツのFacebookをご覧ください。

展示場所では、樹間を結ぶピンクのナイロン紐と、足下に充分ご注意ください。

アノオンシツ Facebook
       Instagram

アオノオンシツのオープン時間(温室の公開時間であり、「きいろい線とピンクの点」はいつでもご覧頂けます)

9/25(金) 12:00-15:00
9/26(土) 10:00-16:00
9/27(日) 10:00-16:00
9/28(月) 12:00-15:00
9/29(火) 12:00-15:00
9/30(水) 12:00-15:00
10/1(木) 12:00-15:00
10/2(金) 12:00-15:00
10/3(土) 10:00-16:00
10/4(日) 10:00-16:00

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  • 企画調整室

本センター森林圏ステーションの教員公募(教員1名、准教授または助教2名)を開始しました

2020年5月22日

生物群集生態領域 教員(教授)の公募について

共生生態系保全領域 教員(准教授または助教)の公募について

生物群集生態領域 教員(准教授または助教)の公募について

2020年6月30日必着

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ニュースレター23号が完成しました。是非ご覧下さい。

2020年5月1日

研究エッセイ「北海道の新しい林業にむけて」

森林圏ステーション 北管理部 吉田 俊也

動植物エッセイ「博物館の標本は”生物”か?」

耕地圏ステーション 植物園 加藤 克

フィールドエッセイ「雨龍研究林でのドローンを使った林冠構造の研究」

  森林圏ステーション 南管理部 柴田 英昭

編集後記

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ニュースレター22号が完成しました。是非ご覧下さい。

2019年12月27日

研究エッセイ「シカの大地・北海道」

森林圏ステーション 苫小牧研究林 揚妻 直樹

動植物エッセイ「コンペイトウ」

水圏ステーション 臼尻水産実験所 宗原 弘幸

Photo Gallery

フィールドエッセイ「北大農場におけるカバークロップの研究」

  耕地圏ステーション 生物生産研究農場 平田 聡之

新任教員紹介

  水圏ステーション 厚岸臨海実験所 鈴木 一平

北方生物圏フィールド科学センターへの要望

  大学院農学研究院 上田 宏一郎(センター外運営委員)

編集後記

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ニュースレター21号が完成しました。是非ご覧下さい。

2019年6月28日

研究エッセイ「湿地の保護・保全に欠かせない基盤情報「湿地目録」を作成する」

耕地圏ステーション 植物園 冨士田 裕子

フィールドエッセイ「雪の表情」

森林圏ステーション 中川研究林 野村 睦

動植物エッセイ

  水圏ステーション 室蘭臨海実験所 本村 泰三

新任教員紹介

  水圏ステーション 七飯淡水実験所 山崎 彩

Photo Gallery

今後開催するイベントなどのお知らせ

編集後記

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ニュースレター20号が完成しました。是非ご覧下さい。

2019年3月11日

巻頭言

センター長 佐藤 冬樹

FSCトピック「甚大な台風被害を受けた和歌山研究林」

研究エッセイ「長寿の秘訣 ~地球上の最長寿生物「ナラタケ菌類」の三つの秘密~!」

森林圏ステーション 南管理部 車 柱榮

フィールドエッセイ「ジャイアントミスカンサスの道内への普及を目指して」

耕地圏ステーション 生物生産研究農場 山田 敏彦

北方生物圏フィールド科学センターへの要望

北海道大学病院 松野 吉宏(センター外運営委員)

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編集後記

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国立生態院(大韓民国)と 交流協定を締結

2018年11月9日

11月6日(火)に,本センターと国立生態院(大韓民国)は,両者の研究上の協力と学術交流の促進を図るため,交流協定を締結しました。
国立生態院は,世界的な生態学研究を基に自然環境の保全と生態文化の拡大を図り,持続可能な未来の構築に寄与するための機関として,忠清南道に2013年開院され,生態研究,生態系に及ぶ危機管理・研究,生態教育,生態展示,研究協力,地域協力の6つの柱により活動を行っています。研究員は現在約100名。世界5大気候帯の展示館があるエコリウムは多数の来場者がある観光スポットにもなっています。また,これまでに3か所の長期生態学研究サイトを設定し,今後さらに3か所が設定される予定です。
両者においては,今後,研究者交流の推進,共同プロジェクト研究の実施のほか,合同学術交流シンポジウムの相互開催の計画が予定されており,森林や環境保全研究に関する学術交流の促進,東アジアを中心とした野外研究や共同プロジェクト研究等の円滑な推進を図ることが期待されています。

また,韓国のメディアにも紹介されました。
エコメディア
イーデイリー
太田日報

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耕地圏ステーション生物生産研究農場荒木肇先生が「ひらめき☆ときめきサイエンス推進賞」を受賞

2018年8月21日

本センター耕地圏ステーション生物生産研究農場 荒木肇先生におかれましては,このたび,独立行政法人日本学術振興会から「平成30年度ひらめき☆ときめきサイエンス推進賞」を授与されました。
この賞は,科学研究費助成事業(科研費)による研究成果を,小・中学生や高校生に体験・実験・講演を通じて分かりやすく紹介する日本学術振興会の事業である 「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHI~」 において,継続的にプログラムを実施している研究者に授与されるもので,本学からは,荒木教授が受賞しました。

 

 

 


 

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ニュースレター19号が完成しました。是非ご覧下さい。

2018年6月29日

動植物エッセイ 「ミズナラもふるさとがやっぱりあずましい」

森林圏ステーション 南管理部 門松 昌彦

研究エッセイ「親とは違う種類の子供を産む魚」

水圏ステーション 七飯淡水実験所 山羽 悦郎

フィールドエッセイ「自然エネルギー研究からの学び」

耕地圏ステーション 生物生産研究農場 荒木 肇

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北方生物圏フィールド科学センターへの要望

大学院農学研究院 研究院長 横田 篤(センター外運営委員)

今後開催するイベントなどのお知らせ

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【小学5・6年生、中学生、高校生対象】ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHI(研究成果の社会還元・普及事業)開催のお知らせ【主催:北方生物圏フィールド科学センター】

2018年6月1日

「科研費」(KAKENHI)により行われている最先端の研究成果に、小学5・6年生、中学生、高校生の皆さんが、直に見る、聞く、触れることで、科学のおもしろさを感じてもらうプログラムです。
参加する皆さんが将来に向けて、科学的好奇心を刺激してひらめき、ときめく心の豊かさと知的創造性を育む内容となっています。生物・農学・自然分野のいろいろなプログラムを用意しています。
興味と関心のある小学5・6年生、中学生、高校生のご参加をお待ちしています。


プログラムへの申し込みはこちらから

http://www.jsps.go.jp/hirameki/index.html

日本学術振興会ホームページ「ひらめきときめきサイエンス」で検索


ご不明な点は、下記までお問い合わせください。
北海道大学北方生物圏フィールド科学センター 学術協力担当
電話:011-706-2572  FAX:011-706-4930
メール:kyoryoku□fsc.hokudai.ac.jp(□をアットマークに置き換えて送信してください)








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ニュースレター18号が完成しました。是非ご覧下さい。

2018年1月24日

動植物エッセイ 「エンビセンノウ-”湿原の花火”を消さないために」

耕地圏ステーション 植物園 中村 剛

研究エッセイ「海のしきさい」

水圏ステーション 厚岸臨海実験所 伊佐田 智規

フィールドエッセイ「ドングリを拾い続けてわかる長期観測の重要性」

森林圏ステーション 北管理部 植村 滋

北方生物圏フィールド科学センターへの要望

大学院 情報科学研究科 研究科長 宮永 喜一(センター外運営委員)

新任教員紹介

水圏ステーション 室蘭臨海実験所 市原 健介

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今後開催するイベントなどのお知らせ

編集後記

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様似プロジェクト(通称)報告書「アポイの森と海とのつながり」

2017年6月8日

文部科学省科学研究費助成事業(2012年度~2015年度、通称:様似プロジェ クト)による「カンラン岩流域と森林形態が物質フローおよび陸域・ 沿岸域生物資源に与える影響」の報告書、「アポイの森と海とのつながり」が出来ましたので公開いたします。

画像をクリック

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ニュースレター17号が完成しました。是非ご覧下さい。

2017年5月30日

研究エッセイ 「桃栗三年柿八年、森林動態四十年」

森林圏ステーション 苫小牧研究林 日浦 勉

動植物エッセイ「北海道和種馬とミヤコザサ」

耕地圏ステーション 静内研究牧場 河合 正人

フィールドエッセイ「小手先のフィールド実験からの脱却」

森林圏ステーション 苫小牧研究林 岸田 治

北方生物圏フィールド科学センターへの要望

大学院薬学研究院  創薬科学研究教育センター・薬草園  乙黒聡子、 前仲勝実(センター外運営委員)

今後開催するイベントなどのお知らせ

編集後記

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母子里と出会う旅 2017冬 4月23日(日)

2017年4月12日

雪の中にある春を見つけにいこう

 

日時:2017423日 10時~17

集合場所:幌加内町母子里コミュニティセンター

定員:25名 

参加費:こども500円・おとな1000

申し込み締め切り:420日 (要事前申し込み)

詳しくは下記ファイルをダウンロードしてください。

 

2017冬母子里と出会う旅02

 

 

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平成27年度の年報が発刊しました

2017年2月7日

北方生物圏フィールド科学センター 年報 平成27年度(April 2015~March 2016)

目 次
北方生物圏フィールド科学センターの教育研究動向
各施設の教育研究動向
研究業績一覧
施設等の利用状況
教育利用
刊行物
受賞の記録
公開講座・講演会
講演活動
諸会議開催状況
歳入と歳出の概要
職員名簿
機構図

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ニュースレター16号が完成しました。是非ご覧下さい。

2017年1月18日

研究エッセイ 「ハンノキとフランキアをめぐる旅」

森林圏ステーション 雨龍研究林 内海 俊介

動植物エッセイ「オットセイ?アザラシ?」

水圏ステーション 生態系変動解析分野 三谷 曜子

今後開催するイベントなどのお知らせ

フィールドエッセイ「世界一の放牧地から」

耕地圏ステーション 生物生産研究農場 三谷 朋弘

新任教員紹介

頼末 武史(よりすえ たけふみ):水圏ステーション 厚岸臨海実験所・特任助教

北方生物圏フィールド科学センターへの要望

大学院歯学研究科 八若 保孝(センター外運営委員)

新任教員紹介

南 憲吏(みなみ けんじ):水圏 臼尻水産実験所・特任助教

編集後記

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Newsletter #25-6 天塩研究林を訪ねて 

2021年7月14日

大学院農学研究院 西邑 隆徳(センター外運営委員)

 観測タワーのトップまで登ってきた.目の前で風速計のカップが勢いよく回っている.雪に被われた丘にブラシを逆さに刺したような樹々が眼下に見える.数百メートル先の丘はグラデーションとなって雪空に溶け込んでいる.

 北海道大学の広大で多様な研究林に関心を持たれている竹中工務店の皆さんを天塩研究林に案内するというので,佐藤センター長にお願いして私も一緒に連れて行ってもらった.学生の時に訪ねて以来,40年ぶりである.
 3月末,少し春らしくなってきた札幌を後に,特急宗谷で名寄を目指した.旭川を過ぎると,まだ冬と言わんばかりに雪が降ってきた.名寄駅に着くと,研究林の方々が迎えに来てくださっていた.マイクロバスに乗車し,佐藤先生から研究林の説明を聞きながら,天塩研究林に向かった.途中,昼食に立ち寄った天塩川温泉保養センターで食べた真っ黒な音威子府蕎麦はたいそう美味かった.
 天塩研究林に到着すると直ぐに合羽を着込み,バスで人工林伐採現場に移動.最近導入されたという高性能林業機械による伐採作業を見せていただいた(写真1).フェラーバンチャでの立木伐採,プロセッサによる枝払い・即尺・玉切り,フォワーダでの集材.お見事.想像以上の迫力,スピードに驚いた.チェーンソーでの作業とは比べものにならない.森林の香りが,湿った雪の中を漂って来る.やはり現場は好きだ.

写真1;高性能林業機械の説明を受ける訪問者(竹中工務店の皆さん他)

 私の専門は畜産で,FSCの農場や牧場を教育研究で利用させていただいている.30年ほど前に,前職(道立畜産試験場)から大学に助手として戻って来たところ,食肉製品の製造実習を受け持つことになった.当時,肉製品・乳製品の実習施設は,北18条の獣医学部の北側にあり,技術職員が4名いた.学生の頃からお世話になっていた年長の技術職員にとっては,新米助手の私はヒヨッコ同然.それまで実習を担当されていた森田潤一郎先生からは,「これからはお前がやれ」と一言.学生時代に受講した肉製品製造実習ではハムやソーセージを試食することだけが楽しみで,ハム作りの工程など全く頭に入っていない私にとっては,初年度の実習は冷や汗だらけだった.技術職員のご協力のおかげで,そんな私でもなんとか,その後10年間,後輩教員にバトンタッチするまで,実習を続けてこられた.学生たちは,親豚の分娩に立ち会い,生まれてきた子豚を哺育・育成し,農場の畑で採取したトウモロコシ等を用いて調製した配合飼料を給与して肥育し,その豚をと畜・解体して肉や内臓,皮,血液等を材料に食肉製品を製造する.動物生体内での筋形成・肥大機構および筋タンパク質の性質を利用した食肉加工原理を講義で学びながら,座学と並行して行う実習では豚の成長および豚肉の加工技術を五感で体得する.日本国内では北大でしかできない食肉製品製造実習に誇りを持って,技術職員とともに関わることができた日々は,私の大学教育経験の中で最も貴重なものの一つとなっている.

 伐採現場を後に,森林の炭素吸収量を長期測定している観測タワーを見に行った.バスで林道入口まで移動し,そこからは雪上車とスノーモービルに分乗して現地に向かった.私は,高木先生の運転するスノーモービルの後ろに乗って出発.私が運転したくてムズムズしているのを見越してか,高木先生は途中で運転を交代してくださった.40年近く前になるが,宗谷丘陵で肉牛生産事業を開始するため,そのパイロット牧場(現在は宗谷岬牧場)によく調査にでかけた.宗谷岬の郵便局辺りから丘陵上の牧場に上がるのだが,厳冬期は雪で路が閉ざされており,スノーモービルで牛舎詰所まで荷物を運んだ.牛の行動調査の際にもスノーモービルをよく使っていたので,たいへん懐かしかった.
 観測タワーに着いて見上げると,高い.「誰か登ってみませんか」に直ぐに手を上げた.フルハーネス安全帯を付けてもらい,鉄塔の狭い階段を慎重に登り,なんとかテッペンに到達した.ナントカと煙は・・・のナントカである(写真2).樹々を上から見下ろすアングルは面白い.この観測タワーでは,植林カラマツの生長に伴う森林炭素吸収量の変化を長期モニタリングするのだという.数秒ごとに測定されるデータが数十年間に渡って蓄積され解析されて,未来の人たちが生きる地球を救う.地道で壮大な研究である.

写真2;観測タワー頂上にて.左から阿部URAセンター長,筆者(西邑),竹中工務店の中嶋さん.

 「比類なき大学」と寳金総長は言う.
 「比類なき大学」は何において比類ないのか.「何において」が重要である.北海道大学が有する研究林,研究牧場,研究農場,植物園,臨海実験所等は広大で多様性に富み,世界的にも比類なき教育研究フィールドであろう.このフィールドを活用した実学教育や異分野融合先端研究の「光」は「北」から「世界」へ,その輝きを放っている.しかし,この「比類なきフィールド」に一度も足を踏み入れることなく北大を卒業・修了していく学生は多くいる.4,500人に及ぶ教職員のうちフィールドを訪れたことがある者は何人いるだろうか.農学研究院の教員ですらFSCフィールドに行ったことのない者は少なくない.北大のフィールドの「光」は,「世界」に届くと同時に,「地域」をどのように照らしているだろうか.札幌農学校開校当時のフィールドイズムは,SDGsが叫ばれている現在の北海道大学で,どのように持続的発展を遂げるのであろうか.40年ぶりに訪れた天塩研究林を後に,帰札する汽車の中で,そんなことを考えていた.

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Newsletter #25-5 新任教員紹介

2021年7月6日

森林圏ステーション 苫小牧研究林・准教授 植竹 淳

経歴: 群馬県出身。東洋大学生命科学部卒、東京工業大学生命理工学研究科修了。博士 理学。国立極地研究所研究員、コロラド州立大学研究員を経て、令和3年2月より現職。 

 苫小牧研究林に2月から准教授として勤務しております植竹淳です。私は、これまでに微生物に着目した研究、とくに『環境変動と氷河微生物』、生態系や気象に影響を与える『大気中を浮遊する微生物』に関する研究を行ってきました。

 氷河の上で増殖する微生物群は、互いに集合し、土壌のように黒っぽい腐食物質を形成することで真っ白な氷の表面を黒く変化させてしまいます。そして黒くなった氷河は、太陽の光を効率よく吸収し、氷河が融けるのを劇的に加速させてしまいます。そうすると融解した大量の淡水が海に注がれるので、海水面の上昇や海洋の循環などにも影響を与えるのではと懸念されています。それなので、この中にはどのような微生物が生息しているのか、またどんな環境で大増殖を引き起こすのかをテーマとして、様々な生物を顕微鏡から次世代シーケンサーまで様々な方法を使って研究してきました。グリーンランドでは、特定の遺伝子型のシアノバクテリアが非常に多く生育していること、人間活動で排出された窒素や、氷河周辺の鉱物から供給されるリンなどが増殖をコントロールしていることがわかってきました。

微生物で黒く汚れたグリーンランドの氷河

 地理的に全くかけ離れている氷河で微生物の遺伝子解析をしていると、両者に共通した(特定の短い)遺伝子が全く同じ微生物が見つかってきます。これが北極とアフリカの高山で共通してしまうので、大気を漂ってきたのではないかと思うようになり、大気中を漂う生物(バイオエアロゾル)の研究も行ってきました。バイオエアロゾルは健康、生態、気象に大きな影響を与えるにもかかわらず、実はその実態はほとんど明らかにされてきませんでした。そのため人々に大きな影響を与えうる東京上空、逆に世界中でも汚染が最も少ない地域であるオーストラリア大陸から南極大陸に至る海域(南大洋)で研究を行ってきました。その結果、多くのバイオエアロゾルは比較的近距離から飛来していること、また陸では湿度と風速といった気象要因がバイオエアロゾルをコントロールする要因となっていることがわかってきました。

生物の種類に特有の遺伝子領域のデータを生態学に利用をするアプローチを環境DNA研究と呼びます。微生物と環境変動について調べたかった私は全く意識していなかったのですが、私がやっている研究(特にバイオエアロゾル)はまさに環境DNA研究であることに気がつき、今後の研究ではあえてそこを意識しながら進めていこうかと思っています。例えば森林内では、空気のみならず、土、川、池、動物、植物に由来する微生物の遺伝子を同時に集めてくることで、森林内部で空気を介してどのように微生物が拡散しているのかをみて取れるのではないかと期待しています。バイオエアロゾルは様々な環境で影響を与えているので森林圏のみならず水圏、耕地圏のみなさんとも一緒に研究できるのではないかと考えております。これからよろしくお願い致します。

海洋でのエアロゾルサンプリング

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Newsletter #25-4 知床菫

耕地圏ステーション 植物園 東 隆行

 

 ニュースレター11号のエッセイではヤナギの1種、ケショウヤナギを紹介しました。実は、研究を進めていくとヤナギとスミレは親戚のような関係であることがわかってきましたが、それはまたの機会にお話しすることにして、今回はスミレの話をします。

 皆さんはシレトコスミレというスミレをご存知でしょうか? すみれ色といえば紫色を想像するように、スミレの仲間の多くは紫色の花、白色の場合でも花弁の一部は紫色をしていますが、日本の多雪地帯には花弁が黄色のスミレが生育しています。中でもシレトコスミレは花弁が白色で中心部が黄色の変わった取り合わせをしています。このスミレ、その名の通り北海道の知床山系と、択捉島の西単冠山にだけ生育が確認され、滅多にお目にかかれません。しかも残念なことに、心無い人の踏みつけや園芸目的の盗掘、さらにはエゾシカによる食害によって個体数が減少していて、北海道の希少種に指定されています。

 このスミレ、当初はタチツボスミレの仲間の新種として記載されましたが、のちに外見が似ているタカネスミレの変種として扱われました。一方で、このスミレの花柱(雌しべの先の伸びた部分)が棒状をしていることから、オセアニアに産するツタスミレの仲間とする説も出されました。さらには、スミレ属の中ではどの仲間とも離れている独立した分類群として扱う説も出ています。このように、このスミレがどのスミレに近縁なのかについては、意見が分かれていてはっきりわかっていませんでした。

 このように、形態形質から考えられた分類に異論がある場合には、分子系統解析が威力を発揮します。そこで、よく調べられている葉緑体上の遺伝子領域を用いて、シレトコスミレに近縁と考えられた分類群を網羅して系統解析を行ったところ、シレトコスミレは近縁と考えられた全ての分類群を含む単系統群の姉妹群になりました。つまり、上記の諸説に関しては最も後者の説が支持されたことになります。シレトコスミレは、花の色も、分布の上からも、分類学上でも珍しいスミレと言えそうです。

 シレトコスミレは、例年7月上旬に知床山系の硫黄山でその可憐な花を見ることができます。登山道は長く岩場も多いので、登るのは結構きついですが、その花を見ればそれまでの苦労も吹き飛んでしますように思うのは、私だけでしょうか? 今はコロナ禍で出かけるのも気が引けますが、この騒ぎが収まったら、この珍しいスミレに会いに硫黄山に登ってみてはいかがでしょうか。

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Newsletter #25-3 研究エッセイ

水圏ステーション 忍路臨海実験所 四ツ倉 典滋

 北海道の各地沿岸域には豊かなコンブの群落が広がっています。これらコンブは地域の海洋生態系や環境を支えるとともに、食材として長年にわたって私たち日本人の食卓も支えてきました。しかし、近年深刻化する気候変動による環境変化はコンブの生育に影響を与え、将来の分布域が変化することが考えられます。厚岸臨海実験所との共同研究によって、IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)が気候の予測や影響評価を行う際に用いるRCPシナリオ(代表濃度経路シナリオ)に基づいて解析すると、天然コンブの分布域は時の経過とともに北上し、温暖化が緩やかに進むシナリオにおいてさえも今世紀末には道内現存種の少なからずについて、その生育適地が北海道から外れる可能性があることが示されました。実際、数年前に我が国のコンブ分布の南限とみなされ、私がよく訪れていた東北地方のある地域のコンブ群落が今日までに姿を消したと伝えられるなど事態は切実です。

知床羅臼の”コンブの森”

 北海道ではコンブ漁獲量のおよそ3分の2が天然採取です。近年の天然漁獲量の減少を受けて、各地で藻場と呼ばれる“コンブの森”を造成するための取り組みが行われています。一方で、総漁獲量の安定を保つために養殖による増産が図られています。しかし、現状の藻場造成はコンブの着生場所作りに重点が置かれており、そこに生えるコンブは自然任せであることが多く、また、養殖においても種苗は天然採取された母藻に依存しているのが実情です。この先もこれまでのように天然コンブを利用できるかどうかわからないことから、天然個体に頼ることなく藻場造成や養殖ができる体制を整えることが求められます。

 そこで、忍路臨海実験所では現存コンブ資源の培養保存に努めており、それら保存株を藻場造成や養殖、育種に活用していくことを目指して研究を進めています。現在のところ道内外から集めた100産地を超える株を無菌状態で保存しています。コンブは、私たちが磯で目にする葉状体(胞子体世代)の状態で維持管理することは難しいのですが、糸状体(配偶体世代)として長期にわたって保管することが可能です。試験管のなかでマリモのような姿をした保存配偶体は、プランクトン孵化水槽を用いた多段培養で高い増殖率を示し、藻場造成や養殖の現場スケールで利用可能であることが分かりました。成熟抑制条件のもとで保管されている雌雄配偶体は、成熟誘導-培養液組成や光条件の変更-を施すことによってそれぞれ卵と精子を形成し、やがて胞子体を作ります。配偶体や胞子体はそれ自体付着能力に乏しく、海底面に置いてやってもすぐに流失してしまいます。そこで、私たちは高分子ゲルやポリマーを媒体としてそれらを海中の着生基質や養殖種苗糸に接着させることを試みています。ゲルのなかにコンブの生長促進物質や、食植動物の摂餌阻害物質を含めることができればより用途は広がり・・・、夢は大きく膨らみます。効率的な成果が得られることはもちろん、如何に安価で取り扱いがし易く、環境への負荷が少ない技術を開発できるのか、挑戦はまだまだ続きます。

コンブ配偶体のカルチャーコレクション

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Newsletter #25-2 森の樹冠における植物と昆虫の相互作用

2021年5月28日

森林圏ステーション 和歌山研究林 中村 誠宏

 植食性昆虫は様々な方法で葉を利用しています。葉に潜る潜葉性(せんようせい)、葉をかじる咀嚼性(そしゃくせい)、葉をガン化させて瘤を作るゴール性などがいます。このように、共通の資源を同じような方法で利用する生物グループのことを「ギルド」と呼びます。しかし、こんなに昆虫が繁栄しているのに、「世界は緑のままで、植物はあり余っているのは、なぜなのでしょうか?」

 「昆虫にとって陸域の植物は理想的な餌なのでしょうか?」実は、植物は「まずい」物質を体内にため込む化学的防御を行っています。化学的防御には毒性の強いアルカロイドやテルペノイドを使う質的防御と消化阻害を起こさせるタンニンやフェノールを使う量的防御があります。このどちらも二次代謝物質です。この二次代謝物質とは成長や繁殖には直接的には関与しない植物が生産する有機化合物のことをさします。さらに、植物は物理的防御も行っており、これは摂食を妨げるトリコームやトゲ、そして食われにくくする葉の硬さなどをさします。野外調査では葉の硬さの指標としてLMAがよく使われます(LMAとは単位面積あたりの葉の重量)。つまり、「なぜ陸域の植物はあまり食べられないのか?」の答えは、昆虫の被食から葉を守るために植物は多様な防御システムを持っているからなのです。

植物は遺伝的に同じでも環境変化によりその形態的・生理的形質が容易に変化します。この変化させる能力のことを「表現型可塑性」と言います。表現型可塑性は移動できる動物よりも移動できない植物においてより重要だと言われています。また、環境変化はこの植物形質の可塑的変化を介して植食性昆虫に影響を与えることも分かってきました。

 北海道の森林を垂直方向に見ると、葉群は複雑な階層構造をしています。高木、亜高木、低木があり、また樹木個体内も樹冠上層から下層まで幅広く葉が分布しています。この複雑な階層構造が樹冠内の複雑な光環境を作り出します。つまり、上層にある葉が光の侵入を遮断してその直下の葉の光環境を改変するように下層に行くほどに光強度が弱くなっていきます。この光環境の異質性に合わせて葉形質や昆虫の被食も変化すると予測されます。

そこで、光環境の異質性が樹冠内の葉形質と昆虫被食に与える影響を見た研究をここで紹介したいと思います。北海道南部の黒松内ではブナ成木の樹冠を直接観察するために巨大なジャングルジムが建設されています。空間的変異を見るために樹冠の上部と下部で、また時間的変異を見るために6月と8月に葉形質と被食の調査を行いました。

 葉形質の時間的変異(季節変動)について説明します。LMA、窒素、C/N比を葉形質として測定しました。C/N比は炭素ベース防御物質の総量の指標です。LMAとC/N比は6月から8月にかけて増加しましたが、窒素濃度には季節変動は見られませんでした。次に、葉形質の空間的変異(樹冠の上部と下部の違い)について説明します。6月において樹冠の下部に比べて上部でLMA、窒素濃度、C/N比が高くなっていました。一方、8月においては窒素濃度とC/N比の空間的変異(上部と下部の違い)は6月と同程度であったのに対して、LMAはその変異がさらに大きくなっていました。

 咀嚼性による被食、潜葉性とゴール性の昆虫密度を昆虫被食として測定しました。6月に咀嚼性、潜葉性、ゴール性の空間的変異は見られませんでしたが、8月に樹冠の下部に比べて上部で咀嚼性被食とゴール性密度が低下しました。この結果は、季節(時間)とともに被食の空間的変異が顕著化する(広がる)ことを意味しています。8月にLMAの空間的変異がより大きくなったことが原因だと考えられます。このように、樹冠では葉形質と被食に時間的・空間的変異があることが分かってきました。光の当たり具合で植物の「まずさ」は変わり、その違いを昆虫は賢く嗅ぎ分けて食べているのです。

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Newsletter #25-1 新任教員紹介

2021年4月14日

森林圏ステーション 雨龍研究林・准教授 森田 健太郎

経歴: 奈良県出身。北海道大学水産学部卒、同大学院水産学研究科修了。博士(水産科学)。日本学術振興会特別研究員DC2・PD、国立研究開発法人水産研究・教育機構水産資源研究所(旧北海道区水産研究所)主任研究員を経て、令和2年11月より現職。

 11月より雨龍研究林に着任した森田健太郎と申します。これまで私は、おもにサケ科魚類を対象として、寒冷な地域に生息するものほど体サイズが大きいという温度―サイズ則などを含む動物の生活史形質の変異や個体数変動が生じるメカニズム等に関する動物生態学、並びにダムや外来生物種などの影響に関わる保全生態学を専門として研究してきました。代表的な研究としては、山地渓流に設置された砂防ダムが在来種イワナに及ぼす生態リスクに関する研究が挙げられます。ダム上流域に隔離された局所個体群では実際に絶滅が進行していること及び遺伝的多様性が低下していることを野外データで示すとともに、個体群動態の数値シミュレーションによってダム建設の数十年後から絶滅リスクが増大することを明らかにしました。この他、水産資源の変動要因と生物多様性に配慮した資源管理に関する応用的研究についても取り組んできました。将来のサケマス類の増養殖技術の高度化に関して、人工ふ化放流に加えて自然再生産もバランス良く併用することで、天然魚から遺伝的に変質するという“家魚化”の懸念を払拭し、持続可能な漁業に取り組むことを提唱してきました。

 今後も、フィールドワークを基盤とした生態学研究の発展に寄与したいと考えています。特に、野生動物の生活史と個体群過程に関する基礎生態学と保全生態学に力を入れて取り組みたいです。これまで私が研究対象としてきた冷水性のサケ科魚類は、地球温暖化の影響を受けやすいことが想定され、また、彼らが暮らす河川の渓流域は、単一種の人工林や砂防工事などによる人為的な攪乱に晒されており、基礎生態学のみならず、保全生態学の題材として適しています。また、森林圏ステーションの豊かな自然環境を生かした体験重視のフィールド実習を企画していきたいと考えています。そして、研究することの楽しさを気づけるような環境づくりに力を入れたいと思います。大学時代には、研究活動を通じて「感動」してもらいたい、という思いがあります。それは、自然は理解するだけではなく、感じるものだ、という思いがあるからです。実際に現場に行って体験すると、理解を超越した生命現象を「感じる」ことができ、その感覚は、自らの力で研究の方向性を見出すうえで、かけがえのないものになると思うからです。森林生態系と水圏生態系は連動しており、幾許かの人間活動の影響を受けつつ、そこに野生動植物が暮らしています。こうした繋がりと実態をフィールド実習・演習を通して体感することで伝えていきたいと考えています。地域貢献と未来の研究者のために尽力したいと思いますので、これからどうぞよろしくお願いいたします。

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Newsletter #24-5 北方生物圏フィールド科学センターへの要望

2020年12月25日

大学院理学研究院 小亀 一弘(センター外運営委員)

 私は、海藻類の分類学的研究をしており、生態観察・材料採集で、臨海実験所には学生の頃から大変お世話になっています。北海道では、忍路、室蘭、厚岸の臨海実験所を主に利用させていただいてきています。実験所を拠点に、採集、サンプル処理、宿泊ができることは、研究を行う中で大変重要なことです。北海道大学には、臼尻にも水産実験所があり、北海道の各地に臨海実験所があることは、私の研究では大変恵まれた環境にあると感じています。忍路では、船外機付きのボートで観察場所の磯までよく送っていただいていました。冬の太平洋岸での磯採集では、夜に潮が引いているときに採集を行いますが、臨海実験所が無ければ、それはなかなか難しいことです。学生の時に室蘭で行った冬の夜の磯採集では、臨海実験所の先生に付き添っていただいたり、私が実験所に宿泊するときに宿直をしていただいたりして、大変お世話になりました。厚岸臨海実験所では、実習船を利用させていただき、大黒島での採集を行ったり、ドレッジによる採集をさせていただいていますが、このようなことも実験所がなければなかなかできません。私の研究、そして私の学生の研究も、採集品がなければ始まらないので、臨海実験所のサポートがあってこその部分があります。

 私が所属する理学部生物科学科(生物学専修分野)でも、センターの施設を利用させていただいています。室蘭と厚岸での臨海実習をはじめ、動物系統分類学実習と植物系統分類学実習では忍路臨海実験所を利用しています。研究林実習では苫小牧研究林を、基礎生物学実習、植物系統分類学実習、生態学実習では、植物園を利用しています。これだけ多くセンター施設を利用させていただいている学科は他に無いかもしれません。

室蘭での臨海実習風景(蓬莱門岩前、2019年5月20日)

 フィールド施設を維持していくこと自体が難しくなっている状況で、研究だけでなく、内外の学生への教育に積極的に取り組み、また、施設の利用者へのサポートもされているスタッフの方々には、全く頭が下がる思いです。フィールドでの教育・研究は北海道大学の特色とも言えると思っていますが、生物分野においては、それはセンタースタッフの努力によるところが大きいことは間違ありません。今後もセンターが発展することをもちろん望みますが、そのために是非北海道大学全体でさらにバックアップしていただきたいものです。

厚岸臨海実験所からドレッジ採集へ向かう(2019年7月2日)

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Newsletter #24-4 新任教員紹介

2020年12月24日

水圏ステーション 七飯淡水実験所・特任助教 黒田 実加

経歴: 北海道大学 大学院水産科学院(生物資源科学専攻)修了。博士(水産科学)。専門はハクジラ類の鳴音生成機構に関する機能形態学的研究。日本学術振興会特別研究員(DC2・PD)、北方生物圏フィールド科学センター学術研究員を経て、令和2年7月より現職。

物性測定に用いるハナゴンドウの頭部の横断標本をつくる筆者。色々調べて、家畜解体用電動鋸が最適であるということに気づいた。

 はじめまして。文部科学省教育関係共同教育利用拠点の特任助教として七飯淡水実験所に着任いたしました、黒田実加と申します。

 学部4年次より一貫して、小型ハクジラ類(イルカ)が環境認知のために出す超音波をつくるメカニズムについて研究してきました。イルカは頭部にある発音器官で100kHz以上にもなる超音波(クリックス)をつくり、反響定位による摂餌や環境認知を行っています。クリックスの周波数特性にはいくつかのタイプがあることが知られていますが、発音器官のどの部分で、どのようなメカニズムで周波数のタイプが決まるのかは未だ明らかにされていません。私は、発音器官を構成する軟組織の密度や音速を測ったり、通常オーディオ機器の性能評価に用いられる周波数応答測定をイルカの頭を丸ごと使って行ったりすることで、発音器官を構成する組織を音の媒質としてとらえ、周波数の特性を変化させるメカニズムを明らかにしようと試みてきました。

 私が現在在籍している七飯淡水実験所は、緑に囲まれた自然豊かな施設です。カエルの声、ツツジの花、虫の声、紅葉など、季節の移ろいを感じ取ることができる環境にあふれています。これまで調査といえば漂着鯨類の解剖調査がほとんどで、海岸にしか行ったことがなかった私にとっては、実験所の環境の何もかもが新鮮です。ここでは応用発生工学実習(公開水産科学実習)をはじめとする様々な実習が展開されており、魚類発生工学の基礎から応用までを、実際に手を動かしながら学ぶことができます。9月には、学部3年生向けの増養殖実習のお手伝いをしました。私は海洋生物科学科卒なので、増殖系の実習は初めてでしたが、学生たちに交じってTAや先生の説明を横目で見つつ、マイクロピペットを握って精子凍結に挑戦してみました。学部時代に実習に参加した時のすごい!面白い!と思う気持ちが蘇ると同時に、この気持ちを、一人でも多くの学生が安心して味わえるようにしていきたいと思いました。

 新型コロナウイルスの深刻な影響により、昨春・今夏の公開水産科学実習は中止を余儀なくされました。北海道は依然として予断を許さない状況であり、今後の実習についても慎重に検討していく必要があります。大学教育の現場におけるオンライン講義のノウハウそのものはこの1年でかなり蓄積されてきており、全国の研究者から貴重な講義がいつでも受けられるという魅力的な面も増えてきました。しかし、触感、におい、味、温度など、リモート講義ではどうしても得られない驚きがフィールド実習にはあります。特に公開水産科学実習は、水圏生物とそれらを取り巻く環境を五感で味わえるよう、拠点の先生方が趣向を凝らされてきたものであり、対面で受講してこその魅力が詰まっていると思います。少しでも早く、安心して実習ができる環境が戻ることを祈っています。

 これからも、実習を安全に継続していくノウハウの開拓と蓄積を目指して努力していきたいと思います。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

令和元年度にスタッフとして参加したバイオロギング実習での1コマ。魚にロガーを付け、大水槽に放流する直前の様子。

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Newsletter #24-3 森林伐採に伴い放出されたCO2を回収するために必要な時間

2020年12月22日

森林圏ステーション 天塩研究林 高木 健太郎

 森林圏ステーション天塩研究林では、国立環境研究所地球環境研究センターと北海道電力株式会社総合研究所との三者共同研究として、森林のCO2吸収量の観測を2001年に開始しました。この共同研究では、伐採や植林等の活動が森林のCO2吸収量に与える影響を長期的に定量観測することを主な目的としています。森林伐採前より観測を開始して(写真1)、その後、周囲約14 haの森林を2003年に伐採し(写真2)、同年に2年生のカラマツ(グイマツ雑種F1)を植林しました(写真3、4)。高さ30mの観測タワーをサイトの中心に建設して最上部に様々な観測機器を設置し、森林と上空大気との間でやり取りされるCO2量を継続観測しています(写真5)。今年この長期モニタリングのメモリアルな節目を迎えました。

 伐採前の森林は、光合成量と呼吸量の年積算値がほぼ拮抗していたものの若干光合成量の方が多く、CO2の弱い吸収源でしたが、伐採した年には、伐採前の吸収量の13年分を1年で放出するほど大きなCO2の放出源となりました。伐採によって生産された木材は丸太として生態系の外に運ばれましたが、切り株や枝葉等はその場に残されていたため、これら伐採残滓や土壌炭素の分解、植物の呼吸によるCO2の放出量が、林床植物や植栽木、天然更新した樹木の光合成量を大幅に上回ったためです。CO2の放出量が吸収量を上回る年は7年間続きましたが、伐採後8年目(2010年)にして、ようやく樹木や林床植物の光合成量が放出量を上回るようになりました。伐採後7年間の林床植物(ササ)の炭素の蓄積量は植栽木のそれの15倍以上にも及びました。ササの繁茂は植栽木の成長に対して弊害にはなるものの、この間のCO2吸収には大きな貢献をしていました。

 年単位では吸収源となった植林地ですが、伐採後18年目の今年(2020年)にようやく伐採直後7年間に放出したCO2を全て回収することができました(写真6)。樹木の現存量は伐採前の1割程度にまでしか回復していませんが、年間のCO2吸収量は4~7倍になっています。これまでの観測により、人間の活動は森林生態系の炭素循環にとても大きな、かつ長期に渡る影響を与えていることが定量的に明らかにされました。丸太として生態系外に搬出された炭素も植林地のCO2吸収により回収するとなるとさらに10年程の期間を必要とするでしょう。2015年より国立環境研究所との二者の共同研究となりましたが、今後も引き続き多くの研究者に参画していただいて、炭素に加えて様々な物質の循環特性と森林管理に対する応答を明らかにしていきたいと思っています。

写真6. 最近の植林地-紅葉したカラマツ (2017年10月)

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Newsletter #24-2 草でウシを飼う

耕地圏ステーション 静内研究牧場 河合 正人

 2021年、来年は丑年です。

 当センターでは2種類のウシが飼われていること、皆さんはご存じでしょうか。ひとつは札幌キャンパス内、生物生産研究農場で飼われているホルスタイン種です。酪農王国・北海道ではもっともたくさん飼われている、牛乳や乳製品の広告やコマーシャルでもよく目にする、白黒のあのウシです。もうひとつは静内研究牧場で飼われている肉用牛、日本短角種という品種のウシです。

写真1. 繁殖パドック:3月から5月にかけて毎年40頭前後の子牛が生まれてくる。

 日本短角種は和牛のひとつです。和牛といえば黒毛和種、と思われる方が多いでしょう。黒毛和種が和牛であって、他に和牛なんているの?という方もいるかもしれません。和牛とは、黒毛和種、褐毛和種、無角和種、日本短角種の4品種と、それらの交雑種のことを指します。現在、国内で肥育されている和牛の90%以上が黒毛和種ですから、和牛イコール黒毛、と思われても仕方ないかもしれません。が、このエッセイを読んでいただいた方には、是非、和牛には4つの品種があること、黒毛だけが和牛じゃない、ということを覚えていただければと思います。

 さて、日本短角種ですが、明治のはじめアメリカから輸入されて現在の岩手県に貸付されたショートホーンという肉用種を、旧南部藩の在来種南部牛に交雑したものが基になっています。現在は7,700頭余りが岩手県、秋田県、青森県、北海道を中心に飼養されており、そのうち1/4ほどの約1,900頭が北海道で飼われています。日本短角種の最大の特徴は粗飼料の利用性に富むことで、また放牧適正も高く、粗放な放牧でも野草を採食する能力が優れているとされています。粗飼料とは畜産用語で、草類、青刈り飼料作物、わら類などを指し、そこから調製した乾草やサイレージ(発酵飼料)など貯蔵飼料も含む、繊維成分が多い飼料のことです。対語として、繊維が少なくでんぷんやタンパク質など栄養濃度の高い飼料を濃厚飼料と呼び、穀実類、油粕類、ぬか類などがあります。つまり、日本短角種は、給与するエサを穀物に頼らなくても、草で飼うことができる品種なのです。

写真2. 親子放牧:5月から10月まで牧草放牧地に親子で終日放牧。 そのうち6~8月は種雄牛1頭を群れに入れて 自然繁殖させる。

 草でウシを飼う、当たり前じゃないか! と思っていませんか? ウシは、ウマやヒツジ、ヤギなどと同じ草食動物です。草を食べる動物なんだから草で飼う、というのは、実は今の日本では当たり前ではないんです。

 たとえば黒毛和種、生まれてから28カ月程度で体重700~750kgまで育ててお肉にするのに、一般的には濃厚飼料を4~6t与えます。ホルスタインの雄は、当然牛乳を出しませんから(去勢して)お肉にするのですが、もともと黒毛より体格が大きく、成長も早いので21カ月齢で750~800kgを目標に肥育し、この時やはり1頭あたり5~6tの濃厚飼料を与えます。ここに書いた重さはウシの体重であって、お肉の量ではありません。体重が750kgのウシからとれる精肉の量は200kgからせいぜい250kgほど。つまり、250kgの牛肉を生産するのに、その20倍、5tもの濃厚飼料を使っていることになります。しかもこの濃厚飼料、ほとんどが海外から輸入された穀物ですから、日本の食料自給率が低い原因として、輸入穀物に頼っている畜産の分野が最も悪者扱いされることも、ある程度は納得せざるを得ないでしょう。

 だからこそ、草で飼える家畜を草で飼う、という、ウシを家畜として飼う最大のメリットを、あらためて考えたいと思っています。ヒトが利用できない草を、ヒトが利用できる肉や乳に変えてくれる、という、ウシが持つすばらしい能力を最大限に発揮させること、静内研究牧場、そして生物生産研究農場も同じですが、我々が行なっている教育研究の原点はここにあります。

写真3. 子牛パドック:10月末日に離乳した子牛は翌春まで屋外パドックで粗飼料主体で飼う。

 黒毛和種に濃厚飼料を多給する飼養方式を、否定するわけではまったくありません。穀物飼料を多く与える黒毛和種の肥育方法は、日本人が編み出した、日本人の嗜好によく合う高級霜降り牛肉を生産するための、非常にすばらしい飼養技術です。一方で、穀物由来の飼料を極力与えないで、ウシが利用できる草を主体として生産した牛肉があってもいいのではないか、という提示です。草でウシを飼えば、穀物で飼う場合に比べて成長させるのに時間がかかります。生の牧草を食べると脂肪の色が黄色くなり、日本の規格では格付けが下がります。放牧地で運動すると肉は硬くなりますし、こうした飼い方ではもちろん霜降りなどほとんど入りません。しかし、高級な霜降り黒毛和牛とは対極にある牛肉として、静内研究牧場の日本短角種は春から秋までは放牧のみ、放牧に出せない冬の間も、場内で収穫した牧乾草と飼料用トウモロコシのサイレージを中心に与え、冬季および肥育時に給与する濃厚飼料の量も、我が国で肉用牛に与えられている一般的な量の1/4~1/5程度にまで減らしています。

写真4. 育成群:翌5月から10月までは再び牧草放牧地で終日放牧。
写真5. 肥育パドック:2夏目の放牧を終えた後、30カ月齢750kgを目標にして、穀物由来飼料は極力減らして肥育する。

 こうした特色ある飼い方で生産した静内研究牧場の日本短角種が、牛肉本来の旨味を味わうことのできるジューシーでヘルシーな牛肉として市民権を得られるよう、また日頃皆様の食卓に並んでいる畜産食品にも目を向けていただき、少しでも食について考えるきっかけとなってくれるよう、今後も教育研究に加え、普及にも力を入れていきたいと思っています。

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Newsletter #24-1 マイクロプラスチックが海洋生物に与える影響の研究

アマモ場に生息するアミ(Neomysis sp.)

2020年12月21日

水圏ステーション 厚岸臨海実験所 仲岡 雅裕

 プラスチックごみによる海洋汚染は世界中で進んでおり、2050年には世界の海のプラスチックごみの量は魚よりも多くなるとも予想されています。プラスチックごみが海洋生物に与える影響については、打ち上げられた海洋哺乳類や海鳥の胃から大量のプラスチックが見つかったり、ウミガメがプラスチックごみを誤飲して苦しんでいる映像などにより、その深刻性が広く認識されるようになってきましたが、それだけにはとどまりません。海に漂うプラスチックごみは紫外線や波、生物などによって細分化され、粒径が5 mm 以下のサイズになったものは「マイクロプラスチック」と呼ばれます。マイクロプラスチックはさまざまな小型の海洋動物に負の影響を与えることが明らかになりつつあります。

アマモ場に浮かぶプラスチックごみ(レジ袋)。長谷川貴章氏撮影。
写真1. アマモ場に浮かぶプラスチックごみ(レジ袋)。長谷川貴章氏撮影。

 厚岸臨海実験所では、マイクロプラスチックが海洋ベントス(底生動物)に与える影響に関する研究を2014年より続けています。これまで、イソタマシキゴカイ、キタノムラサキイガイ、キタイワフジツボなどさまざまな海洋ベントスを対象に、飼育水槽実験によりマイクロプラスチックの影響を評価する実験を行ってきました。その結果、マイクロプラスチックがベントスの摂食率や成長率、生存率に与える影響は、対象生物や季節により大きく変異することがわかってきました。その影響は、特に水温や海洋の懸濁物量などの条件に左右されることから、今後、水温上昇や富栄養化などの他の環境ストレスの変化と相互作用して、より深刻化する可能性も考えられます。

 石油製品であるプラスチックは化学的親和性からPCBやPAHに代表されるPOPs(残留性有機汚染物質)を吸着するとともに、臭素系難燃剤や紫外線吸収剤などの添加剤と呼ばれる多様な化学物質を含んでいます。これより、海洋ベントスはマイクロプラスチック自身が及ぼす物理的な影響だけでなく、化学物質にさらされる影響も同時に受けていることが指摘されています。さらに、二枚貝類や小型甲殻類などの無脊椎動物はより大型の海洋動物の餌となっており、食物連鎖を通じてマイクロプラスチックや化学物質が魚類や海鳥類などの高次消費者に移行し影響を与える可能性があります。この問題を明らかにするため、私たちは厚岸のアマモ場に生息するアミという小型甲殻類とシモフリカジカという底生魚類を用いた飼育実験に取り組んでいます。ここまでの結果では、シモフリカジカは水中から直接摂取するよりはるかに多くのマイクロプラスチックを餌であるアミを通じて取り込むこと、さらにアミが消化管内でマイクロプラスチックを破砕することにより、より小型になったマイクロプラスチックがシモフリカジカに取り込まれることがわかりました。現在は、添加剤を含むマイクロプラスチックを取り込んだアミをシモフリカジカに摂食させることにより、シモフリカジカ体内の化学物質各種の蓄積状況を調べる実験を実施中で、これにより食物連鎖を通じたマイクロプラスチックの海洋生物群集への影響を明らかにしていきたいと考えています。

写真2. アマモ場に生息するアミ(Neomysis sp.)。体長は1 cm程度。長谷川貴章氏撮影。
写真3. マイクロプラスチック(蛍光ビーズ)を取り込んだアミ。蛍光ビーズが取り込まれた胃の部分を白丸で示す。長谷川貴章氏撮影。

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Newsletter #23-3 雨龍研究林でのドローンを使った林冠構造の研究 

2020年5月6日

森林圏ステーション 南管理部 柴田 英昭

 北海道を代表する天然林の特徴のひとつには常緑針葉樹と落葉広葉樹林が混在している針広混交林が挙げられます。また、それらの樹木と並んで下層植生としてササが生育しているのが一般的です。多くの針広混交林では樹木の分布はかなり不均一であり、それが北海道らしい天然林の独特の景観を形成しています。

 森林生態系には光合成による有機物生産と炭素固定、生態系の養分循環と水質形成など多様な生態系機能が備わっています。それらの機能を森林全体として理解するためには、森林の多様な空間構造を考慮に入れる必要があります。樹木の種類や配置、葉の分布や養分濃度などは対象とする森林ごとに異なっており、その形成要因も様々です。

写真1. 森林上空からドローンで撮影した林冠のようす

 当センター森林圏ステーションの雨龍研究林が位置する北海道北部には、トドマツやアカエゾマツなどの常緑針葉樹林に、ミズナラ、シラカンバ、イタヤカエデ他の落葉広葉樹林が針広混交林を形成しています。下層植生にはクマイザサやチシマザサが生育しています。この研究では、針広混交林の林冠(葉や枝が生い茂っている部分)の空間構造と、林冠葉に含まれる窒素濃度の空間分布を明らかにすることを目的として、環境科学院生物圏科学専攻の修士論文研究として実施されました(井上華央ら(2019)森林立地 61:1–13)。林冠の葉に含まれる窒素濃度は、樹木の光合成速度や生態系内での窒素循環の流れを理解する上で重要な指標であり、森林内の樹種構成やその空間分布によって、葉の窒素の分布も大きく変動することが知られています。しかしながら、森林内での地上観測を中心とした研究ではデータが得られる範囲が限られていて、広いスケールでの解析は容易ではありません。

写真2. ドローンからの写真と毎木調査データの重ね合わせ

 そこで本研究ではドローン(無人航空機;UAVとも呼ぶ)を使って森林上空から写真を撮影し(写真1)、その画像を三次元化することで林冠構造を定量化することを試みました。森林内には樹木の密度が低く、ササが密生しているエリアも存在していることから、三次元化した林冠高データを用いて、樹木とササの生育エリアを区分しました。また、常緑樹と落葉樹については着葉期と落葉期のデータを比較することで区分しています。さらに、ドローンで撮影した写真の色情報(赤・青・緑の構成)を用いて、葉に含まれる窒素濃度の違いを推定しました。その際には地上で直接採取・分析した葉の窒素濃度と写真の色情報との関係を別途解析し、その情報とドローンによる色データを組み合わせて推定しています。

 林冠構造の推定値の精度を検証するためには、雨龍研究林がこれまで精密に測定してきた流域全体の樹木に関する調査データ(毎木調査:樹木位置、樹種、枝張り、樹高など)が威力を発揮しました(写真2)。また、雨龍研究林の技術職員によるドローン操作やデータ解析に関する懇切なサポートも研究が円滑に進むための大切な要素でした。当センターの研究林フィールド、調査データ、技術スタッフの強みを生かした研究であり、今後も多様な空間構造をもつ森林生態系の物質循環分布、その機能評価に向けてさらなる発展を進めていきたいと考えています。

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Newsletter #23-2 博物館の標本は“生物”か? 

2020年5月4日

耕地圏ステーション 植物園 加藤 克

 北方生物圏フィールド科学センターの教員の中で、おそらく私だけが“生物”を研究対象としていないので、“動植物”エッセイの担当が回ってくるとは思ってもみませんでしたが、できる限り生物に近寄らせる形で私の研究対象を紹介したいと思います。

 私の研究材対象は、博物館に所蔵されている標本・資料の“情報”です。センターの博物館(写真1)は、1877(明治10)年に設立され、1884年に札幌農学校の博物館になってから130年以上の間大学博物館として活動してきました。大学博物館の所蔵標本は展示物としてみて学ぶためのものではなく、大学の研究活動の証拠として保存するとともに、新しい研究に利活用できるように管理されています(写真2)(写真3)。標本は生きてはいませんが、長期間保存・管理されることで過去の分布や遺伝情報、形態の変化を把握し、現在の生物をより深く理解するための材料になり得ます。

 例えば、博物館に所蔵されているシマフクロウ(HUNHM48054)(写真4)はおそらく北大キャンパス内で捕獲された現存する唯一の標本です。この標本が存在することで、過去に札幌の中心部にシマフクロウが生息していたことが確認されるだけでなく、最新の研究に利用されることで、現在の個体群との遺伝的な違いも見いだせることでしょう。過去にさかのぼって動物を捕獲することはできませんで、このような利用は博物館で保管され続けてきたからこそ可能になるものです。それゆえ、22世紀の研究者が21世紀初頭の生物の情報を利用できるように、研究林の現在の業務の一環で捕獲されたネズミを博物館で標本(写真5)にして、いつかは古くなる標本として利用できる準備を継続しているのです。

写真4. 北大キャンパス内で捕獲されたシマフクロウ
写真5. 収集・製作し続けている動物標本(研究林で捕獲されたもの)

 ただし、標本が研究材料として生き続けるためには条件があります。上述したシマフクロウは北大キャンパス内で捕獲されたことは確実ですが、残念ながら詳しい採集年次の情報が博物館の標本になるまでに欠落し、1940年代の採集としかわからなくなっています。こうなると、個体として死ぬだけでなく、研究資源としても価値が低下し、死蔵されることになってしまいます。“情報”こそが死んだ動物を100年、200年と生かし続けるうえで重要なものなのです。

 しかし、博物館の長い歴史の中で、管理者不在や情報の引継ぎの混乱のため、シマフクロウ標本と同様に採集情報が欠落したり、誤って記録されているものが多数確認されていて、標本を生かし続けるのに必要な“情報の欠落”が課題になっています。この課題に対して、私は過去の標本台帳(写真6)や研究者のフィールドノートをアーカイブとして管理して、それらを活用しながら欠落したり誤って記録された採集情報を信頼できる形で復元し、生物学研究に貢献する動物標本として恒久的に生かし続ける(動く物とする)ことを研究テーマにしています。

写真6. 1900年ごろに作成された標本管理簿

 最後に、標本を生かし続けるためにはもう一つ条件があります。それは、“標本を必要とする人”の存在です。利用されなければ、保管している意味が失われ、放棄されることになってしまいます。博物館には哺乳類、鳥類などの動物学標本だけでなく、考古学資料や民族学資料など多岐にわたる分野の資料が7万点近く保管されています。これらを1人で活用することなど不可能なので、標本や資料とその情報をマネジメントする業務を優先して、できる限り多くの研究者が利用しやすいようにしています。標本を積極的に利用していただき、生かし続けることに協力していただきたいと願っています。

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Newsletter #23-1 北海道の新しい林業にむけて 

2020年5月2日

森林圏ステーション 北管理部  吉田 俊也

 木材の利用には市場の「流行」があり、私が専門とする造林・育林の分野の研究はそれを後追いするのが常なのですが、樹木が育つ長期間のうちに、需要がまったく変化してしまうこともまた常であり、林業研究の宿命ともいえます。

 北海道の森林は林床にササ類が多く、伐採後の樹木の再生が大きな課題です。その対応策のひとつとして、重機を用いてササを根系ごと剥ぎ取る「掻き起こし」と呼ばれる作業があります。掻き起こしを行うと、多くの場合、周囲から散布された種子によってシラカンバまたはダケカンバが優占する二次林が成立することは広く知られていました(写真1)。しかし、シラカンバやダケカンバの材はパルプやチップなどの低質用途が中心で、それらを積極的に育成することはほとんどありませんでした。

写真1. 掻き起こし後に成立したシラカンバ二次林

 ところが、この数年、シラカンバやダケカンバが、急に脚光を浴びています。これまで欠点とされた強度の低さは使い方次第で克服できること、家具や床材として明るい材が好まれ、また誰もが知る「高原の木」としてイメージに優れること(写真2)、一方で、小径材でも利用できる技術(単板積層材)の開発も後押しになりました。ダケカンバを野球のバットに供するプロジェクトも始まり、研究林から試験用材を提供したところ(写真3)、約2年で、プロ野球の公式戦で使用されるまでに発展しました。ギターなど、楽器材としての利用も広がっています。

写真2. シラカンバのスツール:樹皮を使ったデザインが目を引きます
写真3. バット用に伐採したダケカンバ:プロ野球日本ハムの公式戦で使用されました

 タイミングがよかった、と思うのは、私たち研究林で、掻き起こしによるカンバ類の育成の画期となる技術開発が、ちょうど実を結んでいたことです。これは、約20年前、技術職員の発案で、掻き起こした表層土壌を、一定期間の後、施工地に敷き戻すという試みでした。「表土戻し」と私たちが呼ぶこの作業の効果は明らかで、通常の掻き起こしとの比較(20年生時)で、森林の蓄積は3-4倍に達していました(写真4)。この成長速度と、再生コストの低さは、一定の需要があることを前提とするならば、林業の主力である針葉樹人工林と比べて遜色のない森林経営が可能になることを意味します。そこで、私たちは、過去数十年にわたる実践の経験や調査地の存在と、技術スタッフが直営で木を伐採し丸太にする作業を行っていることを生かして、造林・育林のさらなる技術開発や作業の効率化、材質に関する研究を進めています(写真5)。

写真4. 通常の施工地(右)と表土戻し(左): 7年生の様子
写真5. 表土戻し: さまざまな条件で追試を重ねています

  最初に書いたように、カンバ類の利用は「流行」としてやってきました。現在の大きな課題は、この流れに乗りながら、取り組みを一過性にとどめないことです。シラカンバ、ダケカンバを主役とした森林管理は、成長の速さや再生の容易さ、コストの低さの面から、北海道林業の大きな柱のひとつになりえます。研究林では、現在、旭川周辺の家具工房や建築、デザイナー、自伐林家、研究者が構成する「白樺プロジェクト」と連携をはじめました。プロジェクトのキーワードは「持続可能性」と「恵みの多様さ」。前者は、上述した、シラカンバの特性・育成技術と関係します。一方、後者は、樹皮、樹液、葉、根など「一本丸ごと利用可能」であることを指しています(写真6)。これからも、研究林のフィールドと技術、そして研究を基礎に、森林と生活を結ぶ新しい産業・文化を育てたいと考えています。

写真6. シラカンバの樹皮:採取効率なども研究テーマにしています

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Newsletter #22-5 北方生物圏フィールド科学センターへの要望

2019年12月26日

大学院農学研究院 上田 宏一郎(センター外運営委員)

 私は、農学部および農学院において家畜飼養に関わる教育研究を担当しているため、当センターの耕地圏生物生産研究農場および静内研究牧場には年中お世話になっております。学生の実習や論文研究に恵まれた環境をご提供いただいていること、関連の教員と技術職員の皆様には平素から多大なるご支援を頂いていることに心より感謝申し上げます。

 私の担当している農学部畜産科学科の学生には、2年次に家畜生産実習を生物生産農場において通年で実施していただき、さらに学部3年次の夏季休業中には静内研究牧場において12日間の牧場実習を行っていただいています。それらは、様々な家畜(鶏、豚、乳牛、肉牛、馬)の家畜飼養に関わる理論と技術を、学生に実体験として理解させることのできる教育機関としては他大学に類を見ないものです。このような実習は、ただ単に飼育技術の経験だけでなく、現場での問題発見能力と解決能力の基本を習得させるために極めて重要な意味があります。さらに、学問や研究分野が細分化するなかでこそ、出発点がここにあることを学生に体得させ、北海道大学の卒業生だからこそのスキルを身につけた人材育成ができればと思っています。

 私は、主に乳牛の放牧飼養に関係する研究を、当農場の広い牧草地でさせていただいてます。5月から10月まで毎日放牧し、草の生産から乳の生産に至る過程を効率化するため、栄養、管理、行動、生態といった様々な観点から学生とともに研究しています。札幌市のど真ん中にもかかわらず、このような研究ができることは奇跡としか言いようがありません。写真のような乳牛が放牧される風景をこんな場所で見られることに驚く学外だけでなく学内の方も多いと思います。北海道においてさえ乳牛のほとんどは高泌乳を追求するため畜舎の中で穀類を多給して飼育されています。乳牛の放牧飼養はマイナーで理想といってもよいかもしれません。私としては、北海道大学のキャンパスの中で放牧飼養という酪農の理想像を追求する研究を行っていることに自負を感じつつ、それが北海道大学の歴史に裏打ちされた看板であり続けと確信しています。この放牧風景がここにあることが、目先の成果に翻弄されず理想追求の姿勢を学生に教育することにつながるとともに、北海道大学の重要な存立意義の一つであるはずです。

 このような恵まれた環境を維持するためには、農場の利用者の一人としてこのフィールドを用いた教育と研究において最大限の成果をあげることが責務であると考えており、そのために努力していきたいと思っています。当センター農場の運営状況は様々な面で厳しい状況にあることは承知しておりますが、上記のようなすばらしい意味を持つ実習環境と研究フィールドを今後とも維持していただきたくお願いいたします。

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Newsletter #22-4 新任教員紹介

2019年12月25日

水圏ステーション 厚岸臨海実験所 鈴木 一平

経歴:東京大学大学院(新領域創成科学研究科・自然環境学専攻)博士後期課程修了。博士(環境学)。専門は海棲哺乳類の行動生態学、潜水生理学。東京大学(大気海洋研究所・特任研究員)、北海道大学(北方生物圏フィールド科学センター・博士研究員)等を経て、平成30年11月より現職。

 はじめまして、2018年11月に文部科学省教育関係共同利用拠点の特任助教として厚岸臨海実験所に着任しました鈴木一平と申します。海洋生態系における高次捕食者のエネルギーバランスに興味を持ち、これまでは主に鰭脚類(アザラシ科やアシカ科)を対象とした行動生態学の研究を行ってきました。

 大学院時代は、小型記録計を動物に搭載するバイオロギング手法を用いることで水中での摂餌行動量や潜水によるエネルギー消費量を定量化するための手法開発に取組みました。水中での彼らの行動を直接観察することは困難ですが、バイオロギング手法により加速度や速度といった行動に由来するパラメーターとして数値化されたデータを取得できます。動物の下顎に取付けた加速度の記録計からは、餌生物を捕食する際の顎の上下運動が記録されます。また、背中に取付けた記録計の速度データと動物の形態情報から、任意の速度で泳ぐために必要なエネルギー消費量を算出できるという理論がありました。国内外で飼育されている鰭脚類を用いてそれら手法の検証実験を行い、野生個体の行動データからエネルギーの獲得量と消費量を定量化する手法を確立させました。学位取得後は、水中採血が可能な機器を用いて潜水時の代謝機構に関する内分泌学的な研究や、鰭脚類だけでなく鯨類も対象とした呼気計測による潜水生理学に関する研究を進めています。

 厚岸臨海実験所では夏季を主なシーズンとして、国内外の学部生や大学院生を対象とした約10件の実習が開催されています。実習の規模は数名から20名を超える場合もあり様々で、アマモ場や沿岸域での生物採集、演習船での海洋物理環境の測定を通して、海洋生態系の基盤となる初期生産量の測定法や植物プランクトンから小型魚類までの捕食-被捕食の食物網を実体験によって学べる内容となっています。また、他学部や他大学との共同実習では、海藻類の多様性解析や森と河川と海の関連性解析など、湿原河川から汽水域、海洋まで多様な水域生態系に囲まれた環境で、それぞれの違いと同時に繋がりに関する理解も深められます。体験できる分野が多岐にわたり、私自身も書物でしか見たことがなかったり、全く知らなかった手法を一緒に学ばせていただいています。

 陸域からの養分が豊富に流れ込む道東の沿岸域には、定住性の海棲哺乳類も存在します。今年度からは、大黒島や霧多布岬に生息するゼニガタアザラシやラッコを対象とした行動観察を一部の実習のプログラムに組込ませていただきました。高次捕食者による生態系に対するトップダウン効果に関する講義に加えて、「ある生命現象が見られるのはなぜか?」という行動生態学の基礎であるティンバーゲンの4つの問いから、各グループで課題を見つけ、複数ある目視観察の手法からどれを組み合わせることで、自分たちの問いに答えるためのデータを取得できるのかを体験してもらっています。臨海実験所で開催する実習や地元市民を対象としたアウトリーチ活動を通して、高次捕食者の役割や重要性と共に、多様な水域生態系が持つ魅力を一人でも多くの方に伝えられるよう努力していきたいと思います。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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Newsletter #22-3 北大農場におけるカバークロップの研究 

耕地圏ステーション 生物生産研究農場 平田 聡之

 作物栽培の研究は、収穫物の増収や品質向上を最終目的としていますが、近年では環境に配慮した安定した作物生産への社会的要求が高まってきました。現代では、収量を低下させずに、化学合成物に頼らない、エネルギーや労力をかけない持続型作物生産が望まれています。その中で、圃場の耕うんを最小限にする不耕起栽培や圃場の生物環境や養分サイクルを改善するカバークロップの利用について研究が進められてきました。カバークロップは一般的にはその肥料効果に着目され、狭義の意味で「緑肥作物」として認識されていますが、収穫することを目的としない圃場環境を改善するために植えられる作物の総称を指しています。カバークロップには、土壌有機物の付加による土壌への物理的、化学的、生物的効果に加えて、過剰塩類の吸収による土壌悪化の防止や栄養塩の流亡の防止、特定の病原菌や雑草の抑制、景観向上などの効果があることが知られています。

 生物生産研究農場では、これまでトマトのハウス・露地栽培やコムギ栽培体系において、カバークロップの導入効果について調査してきました。北海道の作物栽培体系へカバークロップを導入する場合、大きな問題となるのは栽培可能期間が短いことです。北海道では、一年の1/3が積雪で覆われることから、野外での作物の栽培可能期間が限られています。カバークロップを導入した栽培体系の多くは、主作物の収穫後から次作物の播種までの間の期間にカバークロップを栽培する手法をとりますが、北海道ではそのような期間は2~3ヶ月に限られます。そのため北海道では、間期のカバークロップ(農学用語では後作緑肥といいます)としては初期生育が旺盛なイネ科やアブラナ科の利用が中心であり、窒素固定による土壌への窒素供給やリン吸収を促進する菌根菌の増殖など優れた効果を持つマメ科カバークロップを導入する場合は、主作物との輪作が主流でした。そこで私たちは、冷涼な環境下でも初期生育が早く、窒素固定能力が高いヘアリーベッチ(写真1)に着目し、後作緑肥としての効果を検証しました。また、ヘアリーベッチは大きく二つの生態型に分けられ、初期生育が早いが越冬能力の劣るスムースベッチ型と初期生育が劣るが越冬能力の高いヘアリーベッチ型があることが知られています。主作物収穫後の9月にヘアリーベッチを播種する場合、スムースベッチ型は4月に播種する作物(春小麦など)に、ヘアリーベッチ型は5月下旬以降に播種する作物(多くの畑作物種)にカバークロップとして有効であることがわかりました。

写真1.ヘアリーベッチ

 現在は、カバークロップ生育後の積雪下の効果に着目しています(写真2)。スムースベッチ型のヘアリーベッチは積雪下で死亡しますが、これまでの研究から低バイオマスにも関わらず、春先に高い窒素能力と雑草抑制効果があることを認めています。ヘアリーベッチは雑草抑制の効果が高い化学物質であるシアナミドを豊富に含んでいます。また、シアナミドの一部は土壌内で重合し、硝化作用阻害物質であるジシアンジアミドに変化する性質を持っています。これらの物質が積雪下で土壌環境にどのように影響するのか研究を進めています。

写真2.圃場試験の準備状況

オレンジシートは除雪区です。土壌凍結を促がすため降雪後にシート上を除雪します。

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Newsletter #22-2 コンペイトウ 

2019年12月24日

水圏ステーション 臼尻水産実験所 宗原 弘幸

写真1. ヤリカジの卵塊

 “金平糖”。令和天皇即位の儀式で招待客への引き出物に入っていたという、あのイボイボの砂糖菓子のことです。特異な形状から生き物を表す場面でよく使われています。たとえばヤリガジの卵。写真を用意しましたが、金平糖のような形状と記すだけで、イメージしてもらえるでしょう(写真1)。この形状は、卵と卵の間を広げて、胚への酸素供給効率を高くするのに役立ちます。尖ったイボでは、産卵までは間違いなく邪魔です。一般的な魚類同様に、卵巣のなかでは卵は球形で、イボができるのは産卵のあとからです。イボができる仕組みは、高張の海水に触れることと関係していますが、その先は調べていません。それがわかって何の役に立つの?そんな突っ込みを嫌ったわけではなく、2011年にロシアの標本に基づき新種記載され、その翌年に臼尻で見つかった希少種なので、見つけてもそっとしておきたいからです。

写真2. コンペイトウの雄

 ずばり、コンペイトウと名付けられた魚もいます。こちらはやや深みにいるダンゴウオの仲間です。2010年に巻貝の空き殻に産みつけられた卵とその世話をしているコブフウセンウオの雄とともに生きたまま採集されて、臼尻実験所に送られてきました。水産実験所ですので、海産生物の飼育施設があります。そこで卵が孵化した後の稚魚を2年間、育てました。以前から疑わしいことはわかっていました。実際に、一つの卵塊から生まれた稚魚の成長の軌跡を追うと、なんと形態の違いで3つのタイプに分かれました。予想を超えていました。3つのタイプのうちの一つは、典型的なコンペイトウで、体にコブ状の突起が飛び出し背鰭も皮下に埋没しました(写真2)。このような形態の個体はすべて雌でした。雄になった個体は、小さい間は多少のコブがあり、卵の時代に保護してくれた父親そっくりのコブフウセンウオになりました。さらに数か月すると、コブが消えて、ナメフウセンウオと呼ばれている種に変身する個体もあらわれました(写真3)。ダンゴウオの仲間は、皮膚がぶよぶよしている種ばかりで、特徴的なコブが分類の決め手に使われます。しかし、コブが性別や成長段階で変化する場合もあって、同様なケースがこれまでにもありました。この魚は、命名規約の約束事にしたがってEumicrotremus asperrimus が有効名として残り、他の2種につけられていた学名はシノニムとして無効になることを2015年に報告しました。E. asperrimus は、標準和名にコンペイトウと付けられている種です。覚えやすい名称が残るのはよかったのかも知れませんが、イボイボを持たない雄もコンペイトウと呼ばれることになります。御用達の金平糖でも製造過程でバッタもんは出るようですから、まあいいか。

写真3.イボ状突起が消失したコンペイトウの雄

(写真はいずれも阿部拓三博士)

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Newsletter #22-1 シカの大地・北海道 

森林圏ステーション 苫小牧研究林 揚妻 直樹

 蝦夷地が北海道に改名されて150年が経ちました。節目の年にあたり、様々な関連イベントが開催されました。北海道の名付け親とされる松浦武四郎の足跡をたどるドラマや特集番組も放映されています。その武四郎が北海道中を探検していた頃、そこには一体、どんな自然が広がっていたのでしょうか?そして、エゾシカやヒグマなどの野生動物はどんな暮らしをしていたでしょうか?

 私は当時の北海道に、どのくらいシカが棲んでいたか推定してみました。1873年から1882年まで、シカの年間捕獲数の記録が残っていたので、いったい何頭のシカが存在すれば、そんなふうな捕獲数が実現可能かを計算してみたのです。その結果、1873年時点で50~70万頭となりました。ただ、この値には当時、闊歩していたオオカミたちが捕食したシカの数や、温暖化以前の厳しい冬によって今以上に死んでいたシカの数が含まれていません。これらの死亡要因も考慮すると、実際にはこの値よりはるかに多くのシカが棲んでいたのは確実です。100万頭近く居たのかもしれません。一方、近年のエゾシカの生息数は50~60万頭と推定されているようです。つまり、もともとの北海道の自然からすれば、現状のシカの数は決して多くないのです。ところが、現在シカは増え過ぎてしまい、生態系を不自然に改変していると考えられています。現状認識に大きなギャップがあります。

 そんなにシカが多かった150年前の自然はどんな姿をしていたのでしょう?それは北海道本来の生態系や生物多様性の保全を考える基礎となります。北海道では高山や湿地などを除けば森林に覆われると考えがちです。ところが、1858年に武四郎は美瑛から富良野にかけて20×48kmの草原が、十勝には40×60kmのすすき原が広がっていたと記録しています。そんな大草原はどうやって成立したのでしょう?アイヌの人々が意図的に草地を作っていたと考える方もいるかと思います。しかし、農耕や牧畜を大規模に行っていなかった彼らが大草原を作る理由は見あたりません。その時代に大量のシカが生息していたことを考えれば、その高い採食圧によって森林が発達せず広大な草原が維持されていた可能性があります。

 では、森はどうだったでしょうか?シカが多かった頃の影響が残っている1930年の支笏湖御料林の壮齢林の構造が調査されています。その森林では優占種のエゾマツは太さ30~40cmの木が最も多く、それより小さな木が少ない、いわゆるベル型と言われる構造をしていたのです。現在、ベル型構造は更新が阻害された“不健全”な森の特徴とみなされています。しかし、もともとの森林はベル型構造で維持・更新されていた可能性がありそうです。“健全”な森林構造についても見直す必要が出てくるかもしれません。

 この50~60年間、森林動態や生物多様性について多くの知見が集められてきました。実はその期間の大半が日本中でシカがとても少なかった時代にあたります。つまり、研究者は植物にとって捕食者不在の生態系を精力的に調べていたわけです。しかし、かつてのようにシカが多いのが普通の自然だとしたら、既存の知見だけでは本来の自然の姿を理解することはできないでしょう。

 苫小牧研究林では森の中に柵を設置してシカを排除したり、高密度化させる実験を15年間継続してきました。シカ排除実験はシカの生態系機能を解明するのに有効なので、各地で行われてきました。大抵の場合、シカ排除区と比べ、シカ生息区で植物量が減少し、種組成も変ってきます。そこから、シカがいかに生態系に悪影響をもたらすかという議論をしがちです。でも、生態系の構成要素であるシカを全くいなくしたシカ排除区は明らかに不自然な状態です。そこと違うからと言って、悪影響だと判断するのは原理的に不可能です。むしろ、これからはシカが棲んでいる区画において、シカが多かったころの自然の姿をどうやって理解していくかが、生態学としての課題になってくるでしょう。

苫小牧研究林のミズナラ林に設定したシカ排除区(左)、自然密度区(中)、高密度化区(右)の植生

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Newsletter #21-4 

2019年6月5日

水圏ステーション 室蘭臨海実験所 本村 泰三

 今年も暖かい春になり、室蘭の海も例年通り沢山の色とりどりの海藻が目に付くようになった。まだ若く小さなコンブやホンダワラも順調に生育している。海藻研究の醍醐味の一つは、生活環制御であると思ってきた。例えば、褐藻コンブ類は巨視的な胞子体と微視的な雌雄配偶体の世代が交代する。我々が親しんでいるコンブは胞子体で、北海道室蘭では9月から12月にかけて成熟し、減数分裂を経た後に、長さ10ミクロンにも満たない遊走子が放出される。遊走子は鉄を含まない人工合成培地中でわずか数mmの小さな糸状の雌雄配偶体に発生し、直径約20ミクロン程度の卵と5ミクロン程度の精子による有性生殖は行われる。この受精卵が1年も経たないうちに長さ数メートルの胞子体に成長する。このサイクルのどこかが断線すると所謂コンブは生まれない。

 陸上と異なり、海中では可視光の中で短波長の青色光が深所まで到達できる。そのため、海中はブルーワールドとなる。褐藻や珪藻が属するストラメノパイル系統群(遊泳細胞が長短2本の鞭毛を有し、長い前鞭毛に細かい毛を有する真核細胞の一つのグループ)では、一連の形態形成において青色光はキーとなる。例えば、上述したコンブの雌雄配偶体が成熟するには、鉄とともに青色光が必須となる。数年前に、この青色光受容体タンパク質としてオーレオクロームが発見された。また、多くの褐藻の遊走子や配偶子は青色光に対して正または負の走光性を示すが、この場合の受容体タンパク質として鞭毛に存在するヘルムクロームが発見されている。青色光刺激に対する海藻のレスポンスは、生命が海洋において誕生し様々な生物に変化したことを考えると理解できる。このような刺激反応の分子メカニズムは、結局は陸上生物に受け継がれていくことになる。

 また、波あたりの強い沿岸域を生活の場としている海藻は、それに適応した細胞壁多糖を有している。硬いセルロース繊維含量は少なく、紅藻では寒天やカラゲナン、褐藻ではアルギン酸とフカン、緑藻でも硫酸化された独特な多糖類を有している。これにより、海の中で波にまかせたしなやかな動きを生み出している。近年のゲノム情報解読から、褐藻のアルギン酸合成経路は緑膿菌などからの遺伝子水平伝搬であろうと推定されている。

 2010年、2015年に褐藻シオミドロとマコンブの全ゲノム情報が明らかになった。現在では、フランス・ロスコフ臨海実験所のメンバーを中心に50種類を超える褐藻のゲノムを明らかにする国際的プロジェクトが進行しており、数年のうちに発表されるはずである。海藻が持つユニークな性質や環境適応能力に関して分子レベルで解明できる時代がそう遠くない未来に訪れる。

写真は、モニタリング1000でお世話になっている瀬戸内海区水産研究所の島袋寛盛博士に提供して頂いた。

写真1. 太陽からの光を受けるマコンブ。海はブルーワールド。
写真2. 陸上の森のように、海中も陽の当たらない場所はかなり暗い。

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