苫小牧研究林 森林圏ステーション

苫小牧研究林は、1904 年(明治37)、内務省から胆振国勇払郡苫小牧村所在国有林が札幌農学校に所管換を受け、苫小牧演習林として発足した。現在の面積は約2,700ha である。当地は北海道中南部太平洋側の工業都市苫小牧市の市街地に隣接し、札幌から約60km で、研究林の中では大学キャンパスから最も近い位置にある。森林の約25%が人工林で、その他は広葉樹二次林と天然林で占められている。落葉広葉樹が優占する天然林もその多くが風害跡などに成立した林で、ほぼ全域が火山灰性土壌で覆われ、冬期は積雪が少なく土壌は深く凍結する。複数の湧水河川が流れ、大規模な湿原にも隣接している。現在は、生物群集の維持メカニズムの解明、森林と河川の相互作用、生物遺伝子資源の保全手法の開発、森林の多目的利用と共生系のモデル作りなどを課題とした研究を行っている。本林は都市部に隣接しているため、地域住民や観光客の休養緑地としても親しまれている。

苫小牧研究林
住所
〒053-0035 北海道苫小牧市字高丘
TEL
0144-33-2171
FAX
0144-33-2173
代表メールアドレス
tomak [アットマーク] fsc.hokudai.ac.jp
施設サイト
http://www.hokudaiforest.jp/about-us/苫小牧研究林/

施設の特徴

市街地に隣接する平地林であることから、研究・施業上の利便に恵まれており、開設当初から学生実習が行われています。
また、住民の休養地としても多くの人々に親しまれてきました。現在は、試験研究や学生実習、職員研修などだけでなく、
学部を超えて広い分野で利用されています。

利用できる付帯施設

宿泊施設(定員=38名)・自炊棟(定員=8名)森林資料館、 森林記念館(国登録有形文化財)

利用に際して提供できる道具・機器類

屋外設備:林冠観測用ゴンドラ、フラックスタワー、シカ柵、林冠アクセスタワー、ジャングルジム他 屋内設備:CNアナライザ、ガスクロマトグラフィー、分光光度計、フーリエ変換分光計、クリーンベンチ、オートクレーブ、マッフル炉、メディカルフリーザー他

利用に際して提供できる人的サポート

技術スタッフが教育・調査に協力します(事前に申請して下さい)。

施設を利用した主な教育・研究

研究:

調査研究への支援体制も整備されつつあり、北大だけでなく国内外の研究者がこの研究林を利用しています。

苫小牧研究林のクラウドファンディングに心強い応援団が!

2023年3月17日

苫小牧研究林で始まったクラウドファンディングに、ゴールデンカムイ作者の野田サトルさんが応援イラストを描いてくださいました。

クラウドファンディングの目的は、貴重かつ豊富な資料を誇る森林資料館と森林記念館を、毎月最終金曜日にしか公開出来ないものを土日公開するためのものです。

目標額150万円で
森林資料館と森林記念館の休日開館(4-10月)
森林資料館の展示の改良
樹木園の案内板のデザインと再設置

210万円で
森林資料館と森林記念館の休日開館(11-3月も開館し通年開館へ)

300万円で
森林資料館の展示物の燻蒸作業

実は資料館にとってこの燻蒸作業はとても重要で、資料を虫食いやカビから守る大切な作業です。人の出入りが多くなるほどこれらのリスクが増えるのも事実なのです。

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苫小牧研究林でクラウドファンディングを始めました

2023年3月1日

苫小牧研究林では3月1日から31日まで、クラウドファンディングを実施することになりました。目標金額は150万円となっております。いただきました寄付は、敷地内にある博物館(森林資料館と森林記念館)の週末開館(これまで月に1回平日のみ開館)、さらには樹木園エリアの整備費用に充てさせていただく予定です。

是非ともこの機会に苫小牧研究林の魅力を理解していただき、みなさまの温かいサポートをお願いいたします。

苫小牧研究林の魅力を伝えたい!〜資料館の休日開放と散策路の整備〜

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プレスリリース 本州から来たヒキガエルが北海道の両生類を殺す

2018年11月6日

苫小牧研究林の岸田治准教授らの研究が本学のプレスリリースで発表されました。

https://www.hokudai.ac.jp/news/181106_pr.pdf

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プレスリリース 身の周りの「コケ」を利用して都市の大気環境を診断

2017年10月27日

森林圏苫小牧研究林林長の日浦勉教授らの研究が本学のプレスリリースで発表されました。
https://www.hokudai.ac.jp/news/170809pr.pdf

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プレスリリース SNS に投稿された写真から北海道の景観の価値を評価 ~需要と潜在的価値の空間分布~

2017年5月16日

森林圏苫小牧研究林林長の日浦勉教授らの研究が本学のプレスリリースで発表されました。

http://www.hokudai.ac.jp/news/170403_pr.pdf

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プレスリリース 木登りカタツムリはなぜ木に登る?~樹上生活性が進化した適応的意義~

森林圏苫小牧研究林林長の日浦勉教授らの研究が本学のプレスリリースで発表されました。

http://www.hokudai.ac.jp/news/170331_pr.pdf

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苫小牧研究林がJR北海道の車内紙で紹介されました

2023年10月27日

JR北海道の車内紙「The JR Hokkaido」10月号の特集「北の森を究める」に紹介されました。

記事はウェブサイトでご覧になれます。

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Newsletter #26-1 研究エッセイ

2021年12月20日

苫小牧研究林 岸田 治

 自分たちのフィールドでしかできないようなことをしたい。フィールド施設に所属する人なら誰しもが考えることであろう。現在、苫小牧研究林で私が行っている河川性サケ科魚類の個体追跡モニタリングは、まさにこの思いを現実にしたプロジェクトである。このプロジェクトは、サケ科魚類の生態研究で顕著な業績をあげてきた森田健太郎さん、コロラド州立大学の菅野陽一郎さん、私が指導する大学院生の二村凌さん、そして苫小牧研究林の技術職員・森林技能職員(以降、技術スタッフ)の皆さんとともに立ち上げた。研究林内を流れる幌内川の約5kmの流程で、数千尾のサケ科魚類を個体識別し、生活史と行動を徹底的に調べるという大胆な試みである。

 魚の個体識別は、PITタグ(passive integrated transponder tag)とよばれるICチップを体内に埋め込むことで行う。PITタグは優れもので、専用のアンテナがあれば30cmほど離れたところから感知できる。アンテナのタイプは複数あり、目的に応じて使い分ける。例えば、魚がどこにいるかを調べる際には、持ち運び型のアンテナを使う。爆弾探知機のごとくアンテナを振りながら川を歩きまわると、PITタグの持ち主のいる場所を特定できる(写真1)。魚の移動を調べるには、河川を横断するように設置した固定式のアンテナで使う(写真2)。このアンテナは、JRや地下鉄の改札機が乗客のICカードを探知するのと同じ仕組みで働く。PITタグを装着した魚個体がアンテナを通過するとIDと時間が端末に記録されるため、魚の移動を年中昼夜を問わず調べられる。

写真1 持ち運び式のPITタグアンテナを用いた魚類の居場所調査
写真 2 固定式のPITタグアンテナを設置している様子


 このプロジェクトは、仮説や予測がないなかでスタートした。どんな成果が得られるのか明確な見通しがないにもかかわらず、開始する決断に至ったのは、苫小牧研究林の技術スタッフがいたからだった。探索研究の成功の鍵は努力量にある。たくさんの魚を丁寧に調べ、質の高いデータを大量に得ることができたら、必ずや発見があるだろう。北大研究林の技術スタッフは、馬力があり、作業が丁寧なのだ。作業効率を上げるための工夫も忘れない。彼らがサポートを約束してくれたからこそスタートできた。

 毎年、春と秋には5,320mの調査流程全体での採捕調査を行う。この大規模な採捕調査は「魚祭」と呼ばれ、苫小牧研究林の目玉イベントとなっている。まず、10mごとに区分けされた流程で、採捕者が電気ショッカーを使って魚を捕獲する。捕獲した魚はバケツに入れ、近くの林道に停めてあるトラックの荷台まで運ぶ。トラックの荷台には、常時6~7名の作業者が待ち構え、魚の麻酔、PITタグの確認や装着、体長・体重測定、写真撮影、遺伝サンプルの採取などの作業を分担する(写真3)。一連の作業が終わると、魚を麻酔から覚醒させ、もといた場所に放流する。採捕調査は始業時刻と同時にはじめ、終業時刻ぎりぎりまで行う。それでも1日で0.8~1.2kmの区間の調査が限界なため、5kmを超える全区間の調査を終えるには、5日以上かかる。作業がスムーズに進むように、人員配置から小道具まで細部に渡り工夫が施されている。洗練された調査体制と使いやすい道具類のおかげでミスはめったに起こらないし、起こったとしてもすぐに発見できるため、痛手にはならない。決して楽な調査ではないが、和気あいあいと作業ができるうえ、大量のデータを取っているという実感もあり、充実している。魚祭は一連の作業が体系化されていることから、生物調査法を学ぶ良い機会にもなる。今年度からは、魚祭を対象とした教育プログラムを開催し(教育拠点事業フィールドトレーニング「大規模魚類調査」)、学内外の大学生・大学院生を受け入れ、生物調査の基本と創意工夫を学んでもらっている。魚祭の他に、毎月一回、持ち運び式のアンテナで魚の居場所を特定する調査も行っている。大学院生と技術スタッフが2日かけて全区間を歩き調査する。魚の移動をモニタリングするための固定式アンテナは上流から下流にかけて計6箇所設置してある。下流のアンテナでは、川と海を行き来する個体を調べることができる。例えば、一部の個体が海に降るサクラマスでは、どの個体がいつ海に向かったのか、そして、1年後どの個体が海から無事帰ることができたのかも調べられる。固定式アンテナは、年中、昼夜を問わず稼働するが電力供給のためのバッテリーの交換作業とアンテナのメンテナンスが欠かせない。これも技術スタッフが毎週行ってくれる。以上、苫小牧研究林で私が実施している一大プロジェクトを紹介させてもらった。プロジェクト開始から3年、いよいよ皆の努力が実り、成果があがりはじめている。ここでは解説する余裕はないが、論文やプレスリリースを通して発信するので、今後にご期待いただきたい。

写真3 年二回の採捕調査。川で魚を捕獲した後(写真左側)、トラックの荷台へと運びPITタグIDの確認、測定、撮影や遺伝サンプルの採取を行う。

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Newsletter #25-5 新任教員紹介

2021年7月6日

森林圏ステーション 苫小牧研究林・准教授 植竹 淳

経歴: 群馬県出身。東洋大学生命科学部卒、東京工業大学生命理工学研究科修了。博士 理学。国立極地研究所研究員、コロラド州立大学研究員を経て、令和3年2月より現職。 

 苫小牧研究林に2月から准教授として勤務しております植竹淳です。私は、これまでに微生物に着目した研究、とくに『環境変動と氷河微生物』、生態系や気象に影響を与える『大気中を浮遊する微生物』に関する研究を行ってきました。

 氷河の上で増殖する微生物群は、互いに集合し、土壌のように黒っぽい腐食物質を形成することで真っ白な氷の表面を黒く変化させてしまいます。そして黒くなった氷河は、太陽の光を効率よく吸収し、氷河が融けるのを劇的に加速させてしまいます。そうすると融解した大量の淡水が海に注がれるので、海水面の上昇や海洋の循環などにも影響を与えるのではと懸念されています。それなので、この中にはどのような微生物が生息しているのか、またどんな環境で大増殖を引き起こすのかをテーマとして、様々な生物を顕微鏡から次世代シーケンサーまで様々な方法を使って研究してきました。グリーンランドでは、特定の遺伝子型のシアノバクテリアが非常に多く生育していること、人間活動で排出された窒素や、氷河周辺の鉱物から供給されるリンなどが増殖をコントロールしていることがわかってきました。

微生物で黒く汚れたグリーンランドの氷河

 地理的に全くかけ離れている氷河で微生物の遺伝子解析をしていると、両者に共通した(特定の短い)遺伝子が全く同じ微生物が見つかってきます。これが北極とアフリカの高山で共通してしまうので、大気を漂ってきたのではないかと思うようになり、大気中を漂う生物(バイオエアロゾル)の研究も行ってきました。バイオエアロゾルは健康、生態、気象に大きな影響を与えるにもかかわらず、実はその実態はほとんど明らかにされてきませんでした。そのため人々に大きな影響を与えうる東京上空、逆に世界中でも汚染が最も少ない地域であるオーストラリア大陸から南極大陸に至る海域(南大洋)で研究を行ってきました。その結果、多くのバイオエアロゾルは比較的近距離から飛来していること、また陸では湿度と風速といった気象要因がバイオエアロゾルをコントロールする要因となっていることがわかってきました。

生物の種類に特有の遺伝子領域のデータを生態学に利用をするアプローチを環境DNA研究と呼びます。微生物と環境変動について調べたかった私は全く意識していなかったのですが、私がやっている研究(特にバイオエアロゾル)はまさに環境DNA研究であることに気がつき、今後の研究ではあえてそこを意識しながら進めていこうかと思っています。例えば森林内では、空気のみならず、土、川、池、動物、植物に由来する微生物の遺伝子を同時に集めてくることで、森林内部で空気を介してどのように微生物が拡散しているのかをみて取れるのではないかと期待しています。バイオエアロゾルは様々な環境で影響を与えているので森林圏のみならず水圏、耕地圏のみなさんとも一緒に研究できるのではないかと考えております。これからよろしくお願い致します。

海洋でのエアロゾルサンプリング

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岸田准教授の研究成果が北海道文化放送で紹介されました

2019年1月15日

苫小牧研究林の岸田治准教授の研究成果が北海道文化放送(uhb)の番組「みんなのテレビ」で紹介されました。uhbでは以前より国内外来種としてのアズマヒキガエルについての放送をしていましたが、今回の岸田准教授の研究成果から北海道におけるアズマヒキガエルの与える影響の大きさに懸念を示す内容となっています。

https://uhb.jp/news/6943/

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苫小牧研究林の岸田治准教授らの研究が紹介されました

2018年11月9日

苫小牧研究林の岸田治准教授らの、本州のヒキガエルが北海道の在来両生類を中毒死させる研究が全国紙2紙に紹介されました。

yahooニュースでは毎日新聞版の全文がお読み頂けます。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181106-00000000-mai-life

公益財団法人 森林文化協会では朝日新聞版の全文がお読み頂けます。
https://www.shinrinbunka.com/news/pickup/17313.html

毎日新聞(有料記事)
https://mainichi.jp/articles/20181106/ddm/012/040/038000c

朝日新聞(有料記事)
https://www.asahi.com/articles/CMTW1811070100005.html

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