和歌山研究林は、1925 年(大正14)に暖帯林の研究と教育を目的として設置された。現在の面積は約450ha である。年平均気温は15.2℃(最高37.8℃、最低-9.5℃)、年間降水量は、しばしば4,000mm を超え、非常に多い。標高は260~840mで、30度以上の急傾斜地がほとんどである。森林の7割はスギ・ヒノキ人工林が占める。そのほかは常緑のブナ科やクスノキ科、ヒメシャラなど襲速紀(そはやき)要素の植物種で構成される照葉樹林となっている。標高の高い場所では針広混交林や天然性ヒノキ林・スギ林・コウヤマキ林が見られる。当研究林では、照葉樹林生態系の動態把握のために、植生や動物のモニタリングを続けてきた。また、人工林が生物群集に与える研究を行ってきた。近年は森林内の情報通信、地域社会や文化に関する研究も実施している。小学生から大学院生、そして小中高教員や一般市民まで多様な団体に利用されており、それぞれにあわせた体験プログラム(林業・木工・製炭・自然観察・フィールドゲームなど)を提供している。
和歌山研究林 森林圏ステーション
- 住所
- 〒649-4563 和歌山県東牟婁郡 古座川町平井559
- TEL
- 0735-77-0321
- FAX
- 0735-77-0301
- 代表メールアドレス
- wakayama [アットマーク] fsc.hokudai.ac.jp
- 施設サイト
- http://www.hokudaiforest.jp/about-us/和歌山研究林/
施設の特徴
現在の面積は約450ha です。年平均気温は15.2℃(最高37.8℃、最低-9.5℃)、年間降水量はしばしば4,000mmを超えます。
利用できる付帯施設
短期宿舎(定員=24名)・長期宿舎(定員=12名)・標本室・温室・木工所・炭焼 釜・大型水槽・苗畑
利用に際して提供できる道具・機器類
屋外設備:乗用モノレール・炭窯・ジャングルジム・架線集材・シカ柵 屋内設備:冷凍庫・乾燥機・測量機器・樹木計測機器・木工機器 ・シャーマントラップ・発電機・林業道具全般
利用に際して提供できる人的サポート
技術職員・林業技 能補佐員が教育・調査に協力します。
施設を利用した主な教育・研究
教育:
小学生から大学院生、そして小中高教員や一般市民まで多様な団体に利用されており、それぞれにあわせた体験プログラム(林業・木工・製炭・自然観察・フィールドゲームなど)を提供しています。
研究:
照葉樹林生態系の動態把握のために、植生や動物のモニタリングを続けています。また、人工林が生物群集に与える研究も行ってきました。近年は森林内の情報通信や、地域社会や文化に関する研究を実施しています。
施設からのメッセージ
和歌山研究林ではこの地域で非常に少なくなった照葉樹天然林、スギ天然林を保存しています。そのため和歌山県立自然公園の特別保護地域に指定されています。教育・研究関係者の方々の利用に対しては要望があれば最寄JR駅までの送迎を検討します。また、古座川流域(源流から河口)の見学にも対応します。一般の方向けには一般公開日を設けています。研究林本館は国の登録有形文化財です。
和歌山研究林独自サイトもご覧ください
全国の大学生 参加者募集 体験実習「南紀熊野の自然と人々のくらし」
2017年11月16日
南紀熊野の清流・古座川、その最奥部に落ち武者が開いた小さな集落があります。北海道大学・和歌山研究林はその地に90年以上前に開設されました。この実習では研究林に滞在しながら、熊野の自然、そして過去から現在の暮らしや文化を体感します。
本実習は北大の教養科目(全学部対象)ですが、他大学生の受講を受け付けています。参加を希望される方は下記までメールにてお申し込み下さい。
詳細は画像をクリック
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一般公開「和歌山研究林の歴史的建造物と照葉樹天然林」を開催します(2017年10月20日)
2017年10月6日
北海道大学和歌山研究林の本館は、2013年3月29日に国の登録有形文化財に指定され、また森林は県立公園の特別保護地域に指定されました。
これらの歴史的建造物、そして貴重な森林環境の見学ツアーをします。
日時:2017年10月20日(金)午前10時30分~午後4時30分
場所:北海道大学和歌山研究林 古座川町平井559番地
定員:20名(先着順)
参加費:無料
お問い合わせ:北海道大学和歌山研究林 電話:0735-77-0321
詳細については、和歌山研究林ホームページをご覧下さい。
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一般公開「和歌山研究林の歴史的建造物と照葉樹天然林」を開催します。
2016年9月9日
募集定員となりましたので申込受付は終了しました
北海道大学和歌山研究林の本館は、2013年3月29日に国の登録有形文化財に指定され、また森林は県立公園の特別保護地域に指定されました。
これらの歴史的建造物、そして貴重な森林環境の見学ツアーをします。
日時:2016年10月21日(金)午前10時30分~午後4時30分
場所:北海道大学和歌山研究林 古座川町平井559番地
定員:20名(先着順)
参加費:無料
お問い合わせ:北海道大学和歌山研究林 電話:0735-77-0321
詳細については、和歌山研究林ホームページをご覧下さい。
ポスター:20161021-ippankoukai.pdf
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公開講座開催のお知らせ
2016年6月30日
申込受付は終了いたしました
2016年度 北海道大学・公開講座のお知らせ
和歌山研究林では、小学校4年生~6年生を対象に、下記の日程で公開講座を開催致します。
何れも申込期間は、7月1日~8月1日ですが、先着順となっておりますので早めにお申し込み下さい。
1.親子木工教室 8月7日(日) 10時~12時(最大17時まで) 10組
2.世界に一冊だけの「オリジナル樹木図鑑」を作ろう! 8月20日(土) 9時~15時 20名
3.森のたんけん隊-古座川編- 8月23日(火) 9時~15時30分 20名
4.森のたんけん隊-古座川編- 8月24日(水) 9時~15時30分 20名
申込方法などは、7月1日(金)に和歌山研究林ホームページにてご案内致します。
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採用情報 技術職員(林業技能補佐員) 森林圏ステーション 和歌山研究林
2015年8月25日
森林圏ステーション和歌山研究林では林業技能補佐員を募集いたします採用情報
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Newsletter #25-2 森の樹冠における植物と昆虫の相互作用
2021年5月28日
森林圏ステーション 和歌山研究林 中村 誠宏
植食性昆虫は様々な方法で葉を利用しています。葉に潜る潜葉性(せんようせい)、葉をかじる咀嚼性(そしゃくせい)、葉をガン化させて瘤を作るゴール性などがいます。このように、共通の資源を同じような方法で利用する生物グループのことを「ギルド」と呼びます。しかし、こんなに昆虫が繁栄しているのに、「世界は緑のままで、植物はあり余っているのは、なぜなのでしょうか?」
「昆虫にとって陸域の植物は理想的な餌なのでしょうか?」実は、植物は「まずい」物質を体内にため込む化学的防御を行っています。化学的防御には毒性の強いアルカロイドやテルペノイドを使う質的防御と消化阻害を起こさせるタンニンやフェノールを使う量的防御があります。このどちらも二次代謝物質です。この二次代謝物質とは成長や繁殖には直接的には関与しない植物が生産する有機化合物のことをさします。さらに、植物は物理的防御も行っており、これは摂食を妨げるトリコームやトゲ、そして食われにくくする葉の硬さなどをさします。野外調査では葉の硬さの指標としてLMAがよく使われます(LMAとは単位面積あたりの葉の重量)。つまり、「なぜ陸域の植物はあまり食べられないのか?」の答えは、昆虫の被食から葉を守るために植物は多様な防御システムを持っているからなのです。
植物は遺伝的に同じでも環境変化によりその形態的・生理的形質が容易に変化します。この変化させる能力のことを「表現型可塑性」と言います。表現型可塑性は移動できる動物よりも移動できない植物においてより重要だと言われています。また、環境変化はこの植物形質の可塑的変化を介して植食性昆虫に影響を与えることも分かってきました。
北海道の森林を垂直方向に見ると、葉群は複雑な階層構造をしています。高木、亜高木、低木があり、また樹木個体内も樹冠上層から下層まで幅広く葉が分布しています。この複雑な階層構造が樹冠内の複雑な光環境を作り出します。つまり、上層にある葉が光の侵入を遮断してその直下の葉の光環境を改変するように下層に行くほどに光強度が弱くなっていきます。この光環境の異質性に合わせて葉形質や昆虫の被食も変化すると予測されます。
そこで、光環境の異質性が樹冠内の葉形質と昆虫被食に与える影響を見た研究をここで紹介したいと思います。北海道南部の黒松内ではブナ成木の樹冠を直接観察するために巨大なジャングルジムが建設されています。空間的変異を見るために樹冠の上部と下部で、また時間的変異を見るために6月と8月に葉形質と被食の調査を行いました。
葉形質の時間的変異(季節変動)について説明します。LMA、窒素、C/N比を葉形質として測定しました。C/N比は炭素ベース防御物質の総量の指標です。LMAとC/N比は6月から8月にかけて増加しましたが、窒素濃度には季節変動は見られませんでした。次に、葉形質の空間的変異(樹冠の上部と下部の違い)について説明します。6月において樹冠の下部に比べて上部でLMA、窒素濃度、C/N比が高くなっていました。一方、8月においては窒素濃度とC/N比の空間的変異(上部と下部の違い)は6月と同程度であったのに対して、LMAはその変異がさらに大きくなっていました。
咀嚼性による被食、潜葉性とゴール性の昆虫密度を昆虫被食として測定しました。6月に咀嚼性、潜葉性、ゴール性の空間的変異は見られませんでしたが、8月に樹冠の下部に比べて上部で咀嚼性被食とゴール性密度が低下しました。この結果は、季節(時間)とともに被食の空間的変異が顕著化する(広がる)ことを意味しています。8月にLMAの空間的変異がより大きくなったことが原因だと考えられます。このように、樹冠では葉形質と被食に時間的・空間的変異があることが分かってきました。光の当たり具合で植物の「まずさ」は変わり、その違いを昆虫は賢く嗅ぎ分けて食べているのです。
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