お知らせ・トピック

冬の植物園ウォッチング・ツアー(小学生向け公開講座)を開講します

2023年2月1日

植物園では、3月4日(土)と5日(日)に小学生向け公開講座を開講します。詳しくは下記の植物園ホームページまたは募集要項をご覧ください。

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北大短角牛がテレビに取り上げられます

2022年12月2日

北海道放送(HBC)では、12月3日土曜日15:30から放送の「石ちゃんのビーフ天国」で、静内研究牧場で生産される北大短角牛について取り上げられました。是非ご覧ください。
 https://www.hbc.co.jp/tv/beef/

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生物生産研究農場の食材がホテルの朝食で提供されます

12月1日から京王プレリアホテル札幌では、生物生産研究農場が生産する「北大食材」を組み合わせたメニュー3品を日替わりで提供することになりました。

これは北大牛乳、北大短角牛に続く第3弾の試みで、このような活動を通じて、教育研究の現場にフィードバック出来るものがあれば、社会との有機的な繋がりが出来ると考えています。

プレスリリース

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森林圏ステーション北管理部でサイエンスカフェがおこなわれます

2022年11月4日

森林圏ステーション北管理部では、高校生〜ー般社会人向けイベント「北の森林(もり)サイエンスカフェ」をおこないます。

宮地 鎮雄さん
「中川町産オニグルミ材の家具作り
丸太で全量買い取りを始めて変わったこと」
(工房宮地 代表)

小林 真 さん
「土によって変わる木材の色」
(北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 准教授)

2022.11.24 (THU.) 18:00-19:00(CAFE OPEN 17:30)
会場 : 北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター
北管理部 (名寄市徳田250)
入場無料
定員30名 (11.17までに参加申し込み必要)

https://boreal-forests-science-cafe.weebly.com/

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静内研究牧場の北大短角牛がBS-TBSで紹介されます

2022年11月3日

11月4日(金)20:50~20:54 に、BS-TBSの番組「Future Earth ~未来のために~」で、#5これぞサスティナブル!絶品・北大短角牛として静内研究牧場の北大短角牛が紹介されます。


 https://bs.tbs.co.jp/news/futureearth/

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宮下センター長のインタビュー記事が日経電子版に掲載されました

2022年10月21日

10月21日付けの日本経済新聞電子版に、センター長の宮下和士センター長のインタビューが掲載されました。

記事全文は有料会員のみになります。

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りんご販売会のお知らせ

2022年10月19日

北海道大学・北方生物圏フィールド科学センター・生物生産研究農場・余市果樹園では、実習教育や研究のため、20品種以上のリンゴを栽培しています。
一昨年、昨年と大好評の販売会を、今年も北大マルシェで実施します!
この機会にぜひ、お買い求めください!

【日時】2022年11月5日(土)・6日(日)
    いずれも10時~13時

【場所】北大マルシェCafé&Labo
    札幌市北区北9条西5丁目
    北海道大学百年記念会館
【入場】無料 (レジ袋は有料です)

【HP】https://www.marche-cafelabo.com/

※駐車場なし・マスク着用にご協力ください

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公開プログラム「北の大地でSDGsを考える」参加者募集中

2022年8月30日

生物生産研究農場では、全国大学の学部生・大学院修士生を対象に、耕地圏ステーション公開プログラム「自然に挑む北海道農業」を行います。大都市札幌の都会のビル群を背景にした農場で、農業と自然の調和を考えてはみませんか。

プログラム詳細 https://agroecosystem.wixsite.com/website/2022プログラム詳細part2

申込先 https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSd1RDT_YO9L1tSaxRDvXP5pQUV98rvE84UJWVScxUB-czhRaA/viewform

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NHK札幌放送局「北海道道」に静内研究牧場の河合正人准教授が出演します(8月26日)

2022年8月23日

8月2日(火)、静内研究牧場で NHK「北海道道」(毎週金曜日、午後7時30分放送)の撮影がありました。放牧を中心にできるだけ自然に近い形で育てる「北大短角牛」や在来馬「道産子」の研究を行っている河合正人准教授が出演予定です。下記日程で放送が予定されてい ますので、是非ご覧ください。

【放送日時】
◆NHK総合テレビ 2022年8月26日(金)午後7時30分

【番組公式サイト】
https://www.nhk.or.jp/hokkaido/program/1902/

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公開教育プログラム「北大の牧場・植物園でSDGsを考える」参加者募集中

2022年8月18日

静内研究牧場と植物園では、全国大学の学部生,大学院修士生を対象に、耕地圏ステーション公開教育プログラム「北海道日高地方の馬生産と絶滅危惧植物の保全」を行います。深まりゆく秋の北海道で場産地日高の牧場と、都会のオアシス札幌の植物園でSDGsを考えてはみませんか。

プログラム詳細 https://agroecosystem.wixsite.com/website/2022プログラム詳細

申し込み先   https://forms.gle/ZVYzRYvtMrixj41t9

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北海道大学スマート農業教育拠点では現役農業者向け研修をおこなっています

2022年8月4日

生物生産研究農場では、農林水産省の令和 4 年度スマート農業教育推進委託事業に本学の申請提案が採択され国内初のスマート農業教育拠点校に選出されました。
スマート農業教育プロジェクトの第1弾は現役農業者向け研修「水田編」です。初回の研修は、7月28日(木)「ドローンの利活用と水管理システム」について岩見沢市新産業支援センターで実施されました。2回目は8月3日(水)「自動操舵システムとロボットトラクタ」について当センター生物生産研究農場で行われました。今後のプログラムは下記の通りです。

現役農業者向け研修[水田編]

3.営農支援システム

​開催日 9月1日​

会場 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター

​定員 10名プログラム詳細

4. 生育センサーを用いた可変施肥

​開催日 10月5日​

会場 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター

​定員 10名​プログラム詳細

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2022年度10月期 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター研究生募集要項

2022年7月4日

2022年度10月期入学の研究生の入学願書、研究継続願書の受け付けについて募集要項を掲載いたします。


出願期間 2022年9月1日(木)~2022年9月9日(金)※郵送の場合も必着
お問い合せ 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター学術協力担当
      〒060-0811  札幌市北区北11条西10丁目
      E-mail:kyoryoku@fsc.hokudai.ac.jp
       電話:011(706)2572

02.研究生出願要領・2022.10月期.pdf 

02 研究生許可願(所定の様式1).docx

03 研究生履歴書(所定の様式2).docx

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札幌の木、北海道の椅子展開催中です

2022年6月10日

札幌研究林では、跨道橋撤去のために伐採された木を材料に、12組の家具作家による椅子の製作がおこなわれました。この展示は「アノオンシツ」のプロジェクトの一環で、単に椅子を作ってもらうだけでなく、作家と12人の研究者のトークを通じて、椅子を起点に森や木にとどまらず多彩な視点でのトークが行われました。

椅子はギャラリー創で展示されていて、札幌研究林のアノオンシツではトークについての展示と、写真家柿本拓也さん撮影のディスクの写真が展示されており、また戸外では今回使われたイチョウとアカナラの生えていた場所にそれぞれのディスクを展示しています。

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北管理部でサイエンスカフェを行います!

森林圏ステーション北管理部(名寄)では、北の森林サイエンスCAFEをおこないます。

  • 2022.7.1(金) 14:00-15:30(13:30会場)
  • 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター北管理部(名寄市徳田250)
  • 入場無料
  • 定員30名(6月24日までに参加申込み必要)

お申し込みはこちら

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植物園の夏期開園が始まりました

2022年5月10日

今年も植物園の夏期開園が始まりました。コロナ対策として、一部ご覧いただけないエリアもあります。
植物園のホームページをご確認の上、ご来園願います。

チングルマ(高山植物園にて)

植物園ホームページはこちら
https://www.hokudai.ac.jp/fsc/bg/index.html

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和歌山県農林大学校 と 森林圏ステーション和歌山研究林 が包括連携協定を結びました

2022年5月9日

2022年5月6日(金)、和歌山県農林大学校と和歌山研究林との間で、森林資源の利用を通じた教育・文化及び地域の発展に関する協力関係をより深めるための包括連携協定を結びました。

協定書を手にする 中村誠宏 和歌山研究林長

本協定の締結により、 和歌山県農林大学校 林業研修部 と和歌山研究林との間で、専門技術を持った講師の派遣やフィールド提供といった教育サービスの相互提供が、従来よりも活発に展開されることが期待されます。

今後計画される広範囲にわたる連携事業を通じ、森林管理技術に関わる人材育成や森林資源の活用などを加速させ、ひいては地域活性化につなげていくことができれば、と考えております。

(森林圏ステーション 和歌山研究林)

参考情報:

わかやま県政ニュース – 「北海道大学和歌山研究林」と「和歌山県農林大学校」が連携協定を締結~林業を担う人材育成をはじめとする教育活動の充実を推進~

林業の人材育成で協定 北大研究林と和歌山県農林大学校

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「きたキッチン オーロラタウン店」で北海道大学フェア開催

2022年4月2日

札幌大通公園地下街オーロラタウンの「きたキッチン」にて北海道大学フェアが行われ、北海道大学ブランド認定商品が期間限定で販売される事になりました。

当センターからは、
静内研究牧場の北大短角牛。
生物生産研究農場の牛乳を使ったチーズやクッキー、バームクーヘン。
余市果樹園のリンゴを使ったシードルやアップルパイ、リンゴシフォン。
札幌研究林の伐採木を使った燻製コーヒーなどが予定されています。

 

お近くにいらっしゃいましたら是非お立ち寄りください。

  

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年報(2018年度~2020年度)を公開しました。

2022年3月31日

北方生物圏フィールド科学センター年報(2018年度~2020年度)を公開しました。ダウンロードはこちらから。

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都市は地球規模で植物の進化を促す

2022年3月23日

森林圏ステーション南管理部の内海介准教授、安東義乃学術研究員が参画する国際共同研究チームGLUE(Global Urban Evolution Project)は、都市化が地球規模で生物進化に影響を与えていることを明らかにしました。

本研究成果は,2022年3月18日(木)公開のSCIENCE誌にオンライン掲載されました。

論文名:Global urban environmental change drives adaptation in white clover(都市化は地球規模でシロツメクサの適応進化を促進する)
URL:https://www.science.org/doi/10.1126/science.abk0989

詳細は本学プレスリリースでご覧ください

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アノオンシツ 展示「山々と」

2022年3月18日

アノオンシツは北方生物圏フィ-ルド科学センタ-と本学 CoSTEP とのあいだで、札幌研究林 苗畑に1973年に建てられた温室をフィールドにして進めているアートプロジェクトで、2020年9月から活動を始めています。

展示「山々と」は、札幌研究林とキャンパスをつなぐ跨道橋が、2021 年に老朽化で撤去されたときに工事のため伐採された木の中から、イチョウ、アカナラ、ハルニレ、イタヤカエデを木彫家の高野夕輝さんの手によって北海道の山をイメージした作品と、プロジェクトチーム代表 のCoSTEP 朴炫貞特任講師の天塩研究林や苫小牧研究林で集めた映像と一緒に体験する場です。

[日時] 2022年3月18(金)、19(土)、20(日)、21(月/祝) 。4日間共に13:00-19:00
[場所] アノオンシツ (地図はこちら

*作品の販売は行いません。インスタレーションのみです。

アノオンシツ

朴炫貞

CoSTEP

高野夕輝さんのweb | instagram

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魚類は餌生物を通じてマイクロプラスチックを大量に取り込む

2021年1月29日

厚岸臨海実験所の仲岡雅裕教授が、本学大学院環境科学院修士課程の長谷川貴章氏と、マイクロプラスチック汚染の食物連鎖を通じた波及効果を解明しました。

詳細は本学プレスリリースでご覧ください。

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Newsletter #24-5 北方生物圏フィールド科学センターへの要望

2020年12月25日

大学院理学研究院 小亀 一弘(センター外運営委員)

 私は、海藻類の分類学的研究をしており、生態観察・材料採集で、臨海実験所には学生の頃から大変お世話になっています。北海道では、忍路、室蘭、厚岸の臨海実験所を主に利用させていただいてきています。実験所を拠点に、採集、サンプル処理、宿泊ができることは、研究を行う中で大変重要なことです。北海道大学には、臼尻にも水産実験所があり、北海道の各地に臨海実験所があることは、私の研究では大変恵まれた環境にあると感じています。忍路では、船外機付きのボートで観察場所の磯までよく送っていただいていました。冬の太平洋岸での磯採集では、夜に潮が引いているときに採集を行いますが、臨海実験所が無ければ、それはなかなか難しいことです。学生の時に室蘭で行った冬の夜の磯採集では、臨海実験所の先生に付き添っていただいたり、私が実験所に宿泊するときに宿直をしていただいたりして、大変お世話になりました。厚岸臨海実験所では、実習船を利用させていただき、大黒島での採集を行ったり、ドレッジによる採集をさせていただいていますが、このようなことも実験所がなければなかなかできません。私の研究、そして私の学生の研究も、採集品がなければ始まらないので、臨海実験所のサポートがあってこその部分があります。

 私が所属する理学部生物科学科(生物学専修分野)でも、センターの施設を利用させていただいています。室蘭と厚岸での臨海実習をはじめ、動物系統分類学実習と植物系統分類学実習では忍路臨海実験所を利用しています。研究林実習では苫小牧研究林を、基礎生物学実習、植物系統分類学実習、生態学実習では、植物園を利用しています。これだけ多くセンター施設を利用させていただいている学科は他に無いかもしれません。

室蘭での臨海実習風景(蓬莱門岩前、2019年5月20日)

 フィールド施設を維持していくこと自体が難しくなっている状況で、研究だけでなく、内外の学生への教育に積極的に取り組み、また、施設の利用者へのサポートもされているスタッフの方々には、全く頭が下がる思いです。フィールドでの教育・研究は北海道大学の特色とも言えると思っていますが、生物分野においては、それはセンタースタッフの努力によるところが大きいことは間違ありません。今後もセンターが発展することをもちろん望みますが、そのために是非北海道大学全体でさらにバックアップしていただきたいものです。

厚岸臨海実験所からドレッジ採集へ向かう(2019年7月2日)

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Newsletter #24-4 新任教員紹介

2020年12月24日

水圏ステーション 七飯淡水実験所・特任助教 黒田 実加

経歴: 北海道大学 大学院水産科学院(生物資源科学専攻)修了。博士(水産科学)。専門はハクジラ類の鳴音生成機構に関する機能形態学的研究。日本学術振興会特別研究員(DC2・PD)、北方生物圏フィールド科学センター学術研究員を経て、令和2年7月より現職。

物性測定に用いるハナゴンドウの頭部の横断標本をつくる筆者。色々調べて、家畜解体用電動鋸が最適であるということに気づいた。

 はじめまして。文部科学省教育関係共同教育利用拠点の特任助教として七飯淡水実験所に着任いたしました、黒田実加と申します。

 学部4年次より一貫して、小型ハクジラ類(イルカ)が環境認知のために出す超音波をつくるメカニズムについて研究してきました。イルカは頭部にある発音器官で100kHz以上にもなる超音波(クリックス)をつくり、反響定位による摂餌や環境認知を行っています。クリックスの周波数特性にはいくつかのタイプがあることが知られていますが、発音器官のどの部分で、どのようなメカニズムで周波数のタイプが決まるのかは未だ明らかにされていません。私は、発音器官を構成する軟組織の密度や音速を測ったり、通常オーディオ機器の性能評価に用いられる周波数応答測定をイルカの頭を丸ごと使って行ったりすることで、発音器官を構成する組織を音の媒質としてとらえ、周波数の特性を変化させるメカニズムを明らかにしようと試みてきました。

 私が現在在籍している七飯淡水実験所は、緑に囲まれた自然豊かな施設です。カエルの声、ツツジの花、虫の声、紅葉など、季節の移ろいを感じ取ることができる環境にあふれています。これまで調査といえば漂着鯨類の解剖調査がほとんどで、海岸にしか行ったことがなかった私にとっては、実験所の環境の何もかもが新鮮です。ここでは応用発生工学実習(公開水産科学実習)をはじめとする様々な実習が展開されており、魚類発生工学の基礎から応用までを、実際に手を動かしながら学ぶことができます。9月には、学部3年生向けの増養殖実習のお手伝いをしました。私は海洋生物科学科卒なので、増殖系の実習は初めてでしたが、学生たちに交じってTAや先生の説明を横目で見つつ、マイクロピペットを握って精子凍結に挑戦してみました。学部時代に実習に参加した時のすごい!面白い!と思う気持ちが蘇ると同時に、この気持ちを、一人でも多くの学生が安心して味わえるようにしていきたいと思いました。

 新型コロナウイルスの深刻な影響により、昨春・今夏の公開水産科学実習は中止を余儀なくされました。北海道は依然として予断を許さない状況であり、今後の実習についても慎重に検討していく必要があります。大学教育の現場におけるオンライン講義のノウハウそのものはこの1年でかなり蓄積されてきており、全国の研究者から貴重な講義がいつでも受けられるという魅力的な面も増えてきました。しかし、触感、におい、味、温度など、リモート講義ではどうしても得られない驚きがフィールド実習にはあります。特に公開水産科学実習は、水圏生物とそれらを取り巻く環境を五感で味わえるよう、拠点の先生方が趣向を凝らされてきたものであり、対面で受講してこその魅力が詰まっていると思います。少しでも早く、安心して実習ができる環境が戻ることを祈っています。

 これからも、実習を安全に継続していくノウハウの開拓と蓄積を目指して努力していきたいと思います。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

令和元年度にスタッフとして参加したバイオロギング実習での1コマ。魚にロガーを付け、大水槽に放流する直前の様子。

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Newsletter #24-3 森林伐採に伴い放出されたCO2を回収するために必要な時間

2020年12月22日

森林圏ステーション 天塩研究林 高木 健太郎

 森林圏ステーション天塩研究林では、国立環境研究所地球環境研究センターと北海道電力株式会社総合研究所との三者共同研究として、森林のCO2吸収量の観測を2001年に開始しました。この共同研究では、伐採や植林等の活動が森林のCO2吸収量に与える影響を長期的に定量観測することを主な目的としています。森林伐採前より観測を開始して(写真1)、その後、周囲約14 haの森林を2003年に伐採し(写真2)、同年に2年生のカラマツ(グイマツ雑種F1)を植林しました(写真3、4)。高さ30mの観測タワーをサイトの中心に建設して最上部に様々な観測機器を設置し、森林と上空大気との間でやり取りされるCO2量を継続観測しています(写真5)。今年この長期モニタリングのメモリアルな節目を迎えました。

 伐採前の森林は、光合成量と呼吸量の年積算値がほぼ拮抗していたものの若干光合成量の方が多く、CO2の弱い吸収源でしたが、伐採した年には、伐採前の吸収量の13年分を1年で放出するほど大きなCO2の放出源となりました。伐採によって生産された木材は丸太として生態系の外に運ばれましたが、切り株や枝葉等はその場に残されていたため、これら伐採残滓や土壌炭素の分解、植物の呼吸によるCO2の放出量が、林床植物や植栽木、天然更新した樹木の光合成量を大幅に上回ったためです。CO2の放出量が吸収量を上回る年は7年間続きましたが、伐採後8年目(2010年)にして、ようやく樹木や林床植物の光合成量が放出量を上回るようになりました。伐採後7年間の林床植物(ササ)の炭素の蓄積量は植栽木のそれの15倍以上にも及びました。ササの繁茂は植栽木の成長に対して弊害にはなるものの、この間のCO2吸収には大きな貢献をしていました。

 年単位では吸収源となった植林地ですが、伐採後18年目の今年(2020年)にようやく伐採直後7年間に放出したCO2を全て回収することができました(写真6)。樹木の現存量は伐採前の1割程度にまでしか回復していませんが、年間のCO2吸収量は4~7倍になっています。これまでの観測により、人間の活動は森林生態系の炭素循環にとても大きな、かつ長期に渡る影響を与えていることが定量的に明らかにされました。丸太として生態系外に搬出された炭素も植林地のCO2吸収により回収するとなるとさらに10年程の期間を必要とするでしょう。2015年より国立環境研究所との二者の共同研究となりましたが、今後も引き続き多くの研究者に参画していただいて、炭素に加えて様々な物質の循環特性と森林管理に対する応答を明らかにしていきたいと思っています。

写真6. 最近の植林地-紅葉したカラマツ (2017年10月)

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Newsletter #24-2 草でウシを飼う

耕地圏ステーション 静内研究牧場 河合 正人

 2021年、来年は丑年です。

 当センターでは2種類のウシが飼われていること、皆さんはご存じでしょうか。ひとつは札幌キャンパス内、生物生産研究農場で飼われているホルスタイン種です。酪農王国・北海道ではもっともたくさん飼われている、牛乳や乳製品の広告やコマーシャルでもよく目にする、白黒のあのウシです。もうひとつは静内研究牧場で飼われている肉用牛、日本短角種という品種のウシです。

写真1. 繁殖パドック:3月から5月にかけて毎年40頭前後の子牛が生まれてくる。

 日本短角種は和牛のひとつです。和牛といえば黒毛和種、と思われる方が多いでしょう。黒毛和種が和牛であって、他に和牛なんているの?という方もいるかもしれません。和牛とは、黒毛和種、褐毛和種、無角和種、日本短角種の4品種と、それらの交雑種のことを指します。現在、国内で肥育されている和牛の90%以上が黒毛和種ですから、和牛イコール黒毛、と思われても仕方ないかもしれません。が、このエッセイを読んでいただいた方には、是非、和牛には4つの品種があること、黒毛だけが和牛じゃない、ということを覚えていただければと思います。

 さて、日本短角種ですが、明治のはじめアメリカから輸入されて現在の岩手県に貸付されたショートホーンという肉用種を、旧南部藩の在来種南部牛に交雑したものが基になっています。現在は7,700頭余りが岩手県、秋田県、青森県、北海道を中心に飼養されており、そのうち1/4ほどの約1,900頭が北海道で飼われています。日本短角種の最大の特徴は粗飼料の利用性に富むことで、また放牧適正も高く、粗放な放牧でも野草を採食する能力が優れているとされています。粗飼料とは畜産用語で、草類、青刈り飼料作物、わら類などを指し、そこから調製した乾草やサイレージ(発酵飼料)など貯蔵飼料も含む、繊維成分が多い飼料のことです。対語として、繊維が少なくでんぷんやタンパク質など栄養濃度の高い飼料を濃厚飼料と呼び、穀実類、油粕類、ぬか類などがあります。つまり、日本短角種は、給与するエサを穀物に頼らなくても、草で飼うことができる品種なのです。

写真2. 親子放牧:5月から10月まで牧草放牧地に親子で終日放牧。 そのうち6~8月は種雄牛1頭を群れに入れて 自然繁殖させる。

 草でウシを飼う、当たり前じゃないか! と思っていませんか? ウシは、ウマやヒツジ、ヤギなどと同じ草食動物です。草を食べる動物なんだから草で飼う、というのは、実は今の日本では当たり前ではないんです。

 たとえば黒毛和種、生まれてから28カ月程度で体重700~750kgまで育ててお肉にするのに、一般的には濃厚飼料を4~6t与えます。ホルスタインの雄は、当然牛乳を出しませんから(去勢して)お肉にするのですが、もともと黒毛より体格が大きく、成長も早いので21カ月齢で750~800kgを目標に肥育し、この時やはり1頭あたり5~6tの濃厚飼料を与えます。ここに書いた重さはウシの体重であって、お肉の量ではありません。体重が750kgのウシからとれる精肉の量は200kgからせいぜい250kgほど。つまり、250kgの牛肉を生産するのに、その20倍、5tもの濃厚飼料を使っていることになります。しかもこの濃厚飼料、ほとんどが海外から輸入された穀物ですから、日本の食料自給率が低い原因として、輸入穀物に頼っている畜産の分野が最も悪者扱いされることも、ある程度は納得せざるを得ないでしょう。

 だからこそ、草で飼える家畜を草で飼う、という、ウシを家畜として飼う最大のメリットを、あらためて考えたいと思っています。ヒトが利用できない草を、ヒトが利用できる肉や乳に変えてくれる、という、ウシが持つすばらしい能力を最大限に発揮させること、静内研究牧場、そして生物生産研究農場も同じですが、我々が行なっている教育研究の原点はここにあります。

写真3. 子牛パドック:10月末日に離乳した子牛は翌春まで屋外パドックで粗飼料主体で飼う。

 黒毛和種に濃厚飼料を多給する飼養方式を、否定するわけではまったくありません。穀物飼料を多く与える黒毛和種の肥育方法は、日本人が編み出した、日本人の嗜好によく合う高級霜降り牛肉を生産するための、非常にすばらしい飼養技術です。一方で、穀物由来の飼料を極力与えないで、ウシが利用できる草を主体として生産した牛肉があってもいいのではないか、という提示です。草でウシを飼えば、穀物で飼う場合に比べて成長させるのに時間がかかります。生の牧草を食べると脂肪の色が黄色くなり、日本の規格では格付けが下がります。放牧地で運動すると肉は硬くなりますし、こうした飼い方ではもちろん霜降りなどほとんど入りません。しかし、高級な霜降り黒毛和牛とは対極にある牛肉として、静内研究牧場の日本短角種は春から秋までは放牧のみ、放牧に出せない冬の間も、場内で収穫した牧乾草と飼料用トウモロコシのサイレージを中心に与え、冬季および肥育時に給与する濃厚飼料の量も、我が国で肉用牛に与えられている一般的な量の1/4~1/5程度にまで減らしています。

写真4. 育成群:翌5月から10月までは再び牧草放牧地で終日放牧。
写真5. 肥育パドック:2夏目の放牧を終えた後、30カ月齢750kgを目標にして、穀物由来飼料は極力減らして肥育する。

 こうした特色ある飼い方で生産した静内研究牧場の日本短角種が、牛肉本来の旨味を味わうことのできるジューシーでヘルシーな牛肉として市民権を得られるよう、また日頃皆様の食卓に並んでいる畜産食品にも目を向けていただき、少しでも食について考えるきっかけとなってくれるよう、今後も教育研究に加え、普及にも力を入れていきたいと思っています。

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Newsletter #24-1 マイクロプラスチックが海洋生物に与える影響の研究

アマモ場に生息するアミ(Neomysis sp.)

2020年12月21日

水圏ステーション 厚岸臨海実験所 仲岡 雅裕

 プラスチックごみによる海洋汚染は世界中で進んでおり、2050年には世界の海のプラスチックごみの量は魚よりも多くなるとも予想されています。プラスチックごみが海洋生物に与える影響については、打ち上げられた海洋哺乳類や海鳥の胃から大量のプラスチックが見つかったり、ウミガメがプラスチックごみを誤飲して苦しんでいる映像などにより、その深刻性が広く認識されるようになってきましたが、それだけにはとどまりません。海に漂うプラスチックごみは紫外線や波、生物などによって細分化され、粒径が5 mm 以下のサイズになったものは「マイクロプラスチック」と呼ばれます。マイクロプラスチックはさまざまな小型の海洋動物に負の影響を与えることが明らかになりつつあります。

アマモ場に浮かぶプラスチックごみ(レジ袋)。長谷川貴章氏撮影。
写真1. アマモ場に浮かぶプラスチックごみ(レジ袋)。長谷川貴章氏撮影。

 厚岸臨海実験所では、マイクロプラスチックが海洋ベントス(底生動物)に与える影響に関する研究を2014年より続けています。これまで、イソタマシキゴカイ、キタノムラサキイガイ、キタイワフジツボなどさまざまな海洋ベントスを対象に、飼育水槽実験によりマイクロプラスチックの影響を評価する実験を行ってきました。その結果、マイクロプラスチックがベントスの摂食率や成長率、生存率に与える影響は、対象生物や季節により大きく変異することがわかってきました。その影響は、特に水温や海洋の懸濁物量などの条件に左右されることから、今後、水温上昇や富栄養化などの他の環境ストレスの変化と相互作用して、より深刻化する可能性も考えられます。

 石油製品であるプラスチックは化学的親和性からPCBやPAHに代表されるPOPs(残留性有機汚染物質)を吸着するとともに、臭素系難燃剤や紫外線吸収剤などの添加剤と呼ばれる多様な化学物質を含んでいます。これより、海洋ベントスはマイクロプラスチック自身が及ぼす物理的な影響だけでなく、化学物質にさらされる影響も同時に受けていることが指摘されています。さらに、二枚貝類や小型甲殻類などの無脊椎動物はより大型の海洋動物の餌となっており、食物連鎖を通じてマイクロプラスチックや化学物質が魚類や海鳥類などの高次消費者に移行し影響を与える可能性があります。この問題を明らかにするため、私たちは厚岸のアマモ場に生息するアミという小型甲殻類とシモフリカジカという底生魚類を用いた飼育実験に取り組んでいます。ここまでの結果では、シモフリカジカは水中から直接摂取するよりはるかに多くのマイクロプラスチックを餌であるアミを通じて取り込むこと、さらにアミが消化管内でマイクロプラスチックを破砕することにより、より小型になったマイクロプラスチックがシモフリカジカに取り込まれることがわかりました。現在は、添加剤を含むマイクロプラスチックを取り込んだアミをシモフリカジカに摂食させることにより、シモフリカジカ体内の化学物質各種の蓄積状況を調べる実験を実施中で、これにより食物連鎖を通じたマイクロプラスチックの海洋生物群集への影響を明らかにしていきたいと考えています。

写真2. アマモ場に生息するアミ(Neomysis sp.)。体長は1 cm程度。長谷川貴章氏撮影。
写真3. マイクロプラスチック(蛍光ビーズ)を取り込んだアミ。蛍光ビーズが取り込まれた胃の部分を白丸で示す。長谷川貴章氏撮影。

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雨龍研究林での研究が朝日新聞に紹介されました

2020年12月14日

12月12日付けの朝日新聞の北海道版に、「かき起こし」作業による、「カンバ林」への再生研究についての記事が掲載されました。

記事はウェブ版にもなっていますのでご覧ください。

https://www.asahi.com/articles/ASNDC76P4ND3IIPE008.html

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柴咲コウさんが雨龍研究林に来ました

2020年9月7日

女優の柴咲コウさんの公式YouTubeチャンネルで雨龍研究林が紹介されました。

柴咲コウと北海道を巡る旅 #3【潜入編】として、国産の木材を使った家づくりで、木材の原料となる樹木がどのように育てられ、どのように伐採されているかなど、雨龍研究林での事例を柴咲さんの目線でレポートされています。

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植物園の温室が開館しました

2020年7月14日

新型コロナウィルス感染症の拡大防止のため、6/16より屋外エリアに限って開園しておりましたが、 7/14(火)より温室が開館しました。なお、このほかの屋内施設(宮部金吾記念館、博物館、北方民族資料室)は閉鎖中です。入園料は、平常時と変更ありません。何卒ご了解のうえ、ご入園くださいますようお願い申し上げます。

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Newsletter #23-3 雨龍研究林でのドローンを使った林冠構造の研究 

2020年5月6日

森林圏ステーション 南管理部 柴田 英昭

 北海道を代表する天然林の特徴のひとつには常緑針葉樹と落葉広葉樹林が混在している針広混交林が挙げられます。また、それらの樹木と並んで下層植生としてササが生育しているのが一般的です。多くの針広混交林では樹木の分布はかなり不均一であり、それが北海道らしい天然林の独特の景観を形成しています。

 森林生態系には光合成による有機物生産と炭素固定、生態系の養分循環と水質形成など多様な生態系機能が備わっています。それらの機能を森林全体として理解するためには、森林の多様な空間構造を考慮に入れる必要があります。樹木の種類や配置、葉の分布や養分濃度などは対象とする森林ごとに異なっており、その形成要因も様々です。

写真1. 森林上空からドローンで撮影した林冠のようす

 当センター森林圏ステーションの雨龍研究林が位置する北海道北部には、トドマツやアカエゾマツなどの常緑針葉樹林に、ミズナラ、シラカンバ、イタヤカエデ他の落葉広葉樹林が針広混交林を形成しています。下層植生にはクマイザサやチシマザサが生育しています。この研究では、針広混交林の林冠(葉や枝が生い茂っている部分)の空間構造と、林冠葉に含まれる窒素濃度の空間分布を明らかにすることを目的として、環境科学院生物圏科学専攻の修士論文研究として実施されました(井上華央ら(2019)森林立地 61:1–13)。林冠の葉に含まれる窒素濃度は、樹木の光合成速度や生態系内での窒素循環の流れを理解する上で重要な指標であり、森林内の樹種構成やその空間分布によって、葉の窒素の分布も大きく変動することが知られています。しかしながら、森林内での地上観測を中心とした研究ではデータが得られる範囲が限られていて、広いスケールでの解析は容易ではありません。

写真2. ドローンからの写真と毎木調査データの重ね合わせ

 そこで本研究ではドローン(無人航空機;UAVとも呼ぶ)を使って森林上空から写真を撮影し(写真1)、その画像を三次元化することで林冠構造を定量化することを試みました。森林内には樹木の密度が低く、ササが密生しているエリアも存在していることから、三次元化した林冠高データを用いて、樹木とササの生育エリアを区分しました。また、常緑樹と落葉樹については着葉期と落葉期のデータを比較することで区分しています。さらに、ドローンで撮影した写真の色情報(赤・青・緑の構成)を用いて、葉に含まれる窒素濃度の違いを推定しました。その際には地上で直接採取・分析した葉の窒素濃度と写真の色情報との関係を別途解析し、その情報とドローンによる色データを組み合わせて推定しています。

 林冠構造の推定値の精度を検証するためには、雨龍研究林がこれまで精密に測定してきた流域全体の樹木に関する調査データ(毎木調査:樹木位置、樹種、枝張り、樹高など)が威力を発揮しました(写真2)。また、雨龍研究林の技術職員によるドローン操作やデータ解析に関する懇切なサポートも研究が円滑に進むための大切な要素でした。当センターの研究林フィールド、調査データ、技術スタッフの強みを生かした研究であり、今後も多様な空間構造をもつ森林生態系の物質循環分布、その機能評価に向けてさらなる発展を進めていきたいと考えています。

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Newsletter #23-2 博物館の標本は“生物”か? 

2020年5月4日

耕地圏ステーション 植物園 加藤 克

 北方生物圏フィールド科学センターの教員の中で、おそらく私だけが“生物”を研究対象としていないので、“動植物”エッセイの担当が回ってくるとは思ってもみませんでしたが、できる限り生物に近寄らせる形で私の研究対象を紹介したいと思います。

 私の研究材対象は、博物館に所蔵されている標本・資料の“情報”です。センターの博物館(写真1)は、1877(明治10)年に設立され、1884年に札幌農学校の博物館になってから130年以上の間大学博物館として活動してきました。大学博物館の所蔵標本は展示物としてみて学ぶためのものではなく、大学の研究活動の証拠として保存するとともに、新しい研究に利活用できるように管理されています(写真2)(写真3)。標本は生きてはいませんが、長期間保存・管理されることで過去の分布や遺伝情報、形態の変化を把握し、現在の生物をより深く理解するための材料になり得ます。

 例えば、博物館に所蔵されているシマフクロウ(HUNHM48054)(写真4)はおそらく北大キャンパス内で捕獲された現存する唯一の標本です。この標本が存在することで、過去に札幌の中心部にシマフクロウが生息していたことが確認されるだけでなく、最新の研究に利用されることで、現在の個体群との遺伝的な違いも見いだせることでしょう。過去にさかのぼって動物を捕獲することはできませんで、このような利用は博物館で保管され続けてきたからこそ可能になるものです。それゆえ、22世紀の研究者が21世紀初頭の生物の情報を利用できるように、研究林の現在の業務の一環で捕獲されたネズミを博物館で標本(写真5)にして、いつかは古くなる標本として利用できる準備を継続しているのです。

写真4. 北大キャンパス内で捕獲されたシマフクロウ
写真5. 収集・製作し続けている動物標本(研究林で捕獲されたもの)

 ただし、標本が研究材料として生き続けるためには条件があります。上述したシマフクロウは北大キャンパス内で捕獲されたことは確実ですが、残念ながら詳しい採集年次の情報が博物館の標本になるまでに欠落し、1940年代の採集としかわからなくなっています。こうなると、個体として死ぬだけでなく、研究資源としても価値が低下し、死蔵されることになってしまいます。“情報”こそが死んだ動物を100年、200年と生かし続けるうえで重要なものなのです。

 しかし、博物館の長い歴史の中で、管理者不在や情報の引継ぎの混乱のため、シマフクロウ標本と同様に採集情報が欠落したり、誤って記録されているものが多数確認されていて、標本を生かし続けるのに必要な“情報の欠落”が課題になっています。この課題に対して、私は過去の標本台帳(写真6)や研究者のフィールドノートをアーカイブとして管理して、それらを活用しながら欠落したり誤って記録された採集情報を信頼できる形で復元し、生物学研究に貢献する動物標本として恒久的に生かし続ける(動く物とする)ことを研究テーマにしています。

写真6. 1900年ごろに作成された標本管理簿

 最後に、標本を生かし続けるためにはもう一つ条件があります。それは、“標本を必要とする人”の存在です。利用されなければ、保管している意味が失われ、放棄されることになってしまいます。博物館には哺乳類、鳥類などの動物学標本だけでなく、考古学資料や民族学資料など多岐にわたる分野の資料が7万点近く保管されています。これらを1人で活用することなど不可能なので、標本や資料とその情報をマネジメントする業務を優先して、できる限り多くの研究者が利用しやすいようにしています。標本を積極的に利用していただき、生かし続けることに協力していただきたいと願っています。

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Newsletter #23-1 北海道の新しい林業にむけて 

2020年5月2日

森林圏ステーション 北管理部  吉田 俊也

 木材の利用には市場の「流行」があり、私が専門とする造林・育林の分野の研究はそれを後追いするのが常なのですが、樹木が育つ長期間のうちに、需要がまったく変化してしまうこともまた常であり、林業研究の宿命ともいえます。

 北海道の森林は林床にササ類が多く、伐採後の樹木の再生が大きな課題です。その対応策のひとつとして、重機を用いてササを根系ごと剥ぎ取る「掻き起こし」と呼ばれる作業があります。掻き起こしを行うと、多くの場合、周囲から散布された種子によってシラカンバまたはダケカンバが優占する二次林が成立することは広く知られていました(写真1)。しかし、シラカンバやダケカンバの材はパルプやチップなどの低質用途が中心で、それらを積極的に育成することはほとんどありませんでした。

写真1. 掻き起こし後に成立したシラカンバ二次林

 ところが、この数年、シラカンバやダケカンバが、急に脚光を浴びています。これまで欠点とされた強度の低さは使い方次第で克服できること、家具や床材として明るい材が好まれ、また誰もが知る「高原の木」としてイメージに優れること(写真2)、一方で、小径材でも利用できる技術(単板積層材)の開発も後押しになりました。ダケカンバを野球のバットに供するプロジェクトも始まり、研究林から試験用材を提供したところ(写真3)、約2年で、プロ野球の公式戦で使用されるまでに発展しました。ギターなど、楽器材としての利用も広がっています。

写真2. シラカンバのスツール:樹皮を使ったデザインが目を引きます
写真3. バット用に伐採したダケカンバ:プロ野球日本ハムの公式戦で使用されました

 タイミングがよかった、と思うのは、私たち研究林で、掻き起こしによるカンバ類の育成の画期となる技術開発が、ちょうど実を結んでいたことです。これは、約20年前、技術職員の発案で、掻き起こした表層土壌を、一定期間の後、施工地に敷き戻すという試みでした。「表土戻し」と私たちが呼ぶこの作業の効果は明らかで、通常の掻き起こしとの比較(20年生時)で、森林の蓄積は3-4倍に達していました(写真4)。この成長速度と、再生コストの低さは、一定の需要があることを前提とするならば、林業の主力である針葉樹人工林と比べて遜色のない森林経営が可能になることを意味します。そこで、私たちは、過去数十年にわたる実践の経験や調査地の存在と、技術スタッフが直営で木を伐採し丸太にする作業を行っていることを生かして、造林・育林のさらなる技術開発や作業の効率化、材質に関する研究を進めています(写真5)。

写真4. 通常の施工地(右)と表土戻し(左): 7年生の様子
写真5. 表土戻し: さまざまな条件で追試を重ねています

  最初に書いたように、カンバ類の利用は「流行」としてやってきました。現在の大きな課題は、この流れに乗りながら、取り組みを一過性にとどめないことです。シラカンバ、ダケカンバを主役とした森林管理は、成長の速さや再生の容易さ、コストの低さの面から、北海道林業の大きな柱のひとつになりえます。研究林では、現在、旭川周辺の家具工房や建築、デザイナー、自伐林家、研究者が構成する「白樺プロジェクト」と連携をはじめました。プロジェクトのキーワードは「持続可能性」と「恵みの多様さ」。前者は、上述した、シラカンバの特性・育成技術と関係します。一方、後者は、樹皮、樹液、葉、根など「一本丸ごと利用可能」であることを指しています(写真6)。これからも、研究林のフィールドと技術、そして研究を基礎に、森林と生活を結ぶ新しい産業・文化を育てたいと考えています。

写真6. シラカンバの樹皮:採取効率なども研究テーマにしています

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夏季開園変更・みどりの日無料開園中止のお知らせ

2020年4月23日

【夏季開園 変更】

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、夏季開園を下記のとおり変更いたします。
令和2年4月29日から5月8日までは臨時閉園。
令和2年5月9日(土)から庭園のみ開園。
宮部金吾記念館、博物館、北方民族資料室、温室は閉館いたします。
入園料は、平常時と変更ありません。

何卒ご了解の上、ご入園下さいますようお願い申し上げます。


【みどりの日無料開園 中止】

本年のみどりの日無料開園(5月4日)は中止いたします。

詳しくはこちらをご覧ください

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Newsletter #22-5 北方生物圏フィールド科学センターへの要望

2019年12月26日

大学院農学研究院 上田 宏一郎(センター外運営委員)

 私は、農学部および農学院において家畜飼養に関わる教育研究を担当しているため、当センターの耕地圏生物生産研究農場および静内研究牧場には年中お世話になっております。学生の実習や論文研究に恵まれた環境をご提供いただいていること、関連の教員と技術職員の皆様には平素から多大なるご支援を頂いていることに心より感謝申し上げます。

 私の担当している農学部畜産科学科の学生には、2年次に家畜生産実習を生物生産農場において通年で実施していただき、さらに学部3年次の夏季休業中には静内研究牧場において12日間の牧場実習を行っていただいています。それらは、様々な家畜(鶏、豚、乳牛、肉牛、馬)の家畜飼養に関わる理論と技術を、学生に実体験として理解させることのできる教育機関としては他大学に類を見ないものです。このような実習は、ただ単に飼育技術の経験だけでなく、現場での問題発見能力と解決能力の基本を習得させるために極めて重要な意味があります。さらに、学問や研究分野が細分化するなかでこそ、出発点がここにあることを学生に体得させ、北海道大学の卒業生だからこそのスキルを身につけた人材育成ができればと思っています。

 私は、主に乳牛の放牧飼養に関係する研究を、当農場の広い牧草地でさせていただいてます。5月から10月まで毎日放牧し、草の生産から乳の生産に至る過程を効率化するため、栄養、管理、行動、生態といった様々な観点から学生とともに研究しています。札幌市のど真ん中にもかかわらず、このような研究ができることは奇跡としか言いようがありません。写真のような乳牛が放牧される風景をこんな場所で見られることに驚く学外だけでなく学内の方も多いと思います。北海道においてさえ乳牛のほとんどは高泌乳を追求するため畜舎の中で穀類を多給して飼育されています。乳牛の放牧飼養はマイナーで理想といってもよいかもしれません。私としては、北海道大学のキャンパスの中で放牧飼養という酪農の理想像を追求する研究を行っていることに自負を感じつつ、それが北海道大学の歴史に裏打ちされた看板であり続けと確信しています。この放牧風景がここにあることが、目先の成果に翻弄されず理想追求の姿勢を学生に教育することにつながるとともに、北海道大学の重要な存立意義の一つであるはずです。

 このような恵まれた環境を維持するためには、農場の利用者の一人としてこのフィールドを用いた教育と研究において最大限の成果をあげることが責務であると考えており、そのために努力していきたいと思っています。当センター農場の運営状況は様々な面で厳しい状況にあることは承知しておりますが、上記のようなすばらしい意味を持つ実習環境と研究フィールドを今後とも維持していただきたくお願いいたします。

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Newsletter #22-4 新任教員紹介

2019年12月25日

水圏ステーション 厚岸臨海実験所 鈴木 一平

経歴:東京大学大学院(新領域創成科学研究科・自然環境学専攻)博士後期課程修了。博士(環境学)。専門は海棲哺乳類の行動生態学、潜水生理学。東京大学(大気海洋研究所・特任研究員)、北海道大学(北方生物圏フィールド科学センター・博士研究員)等を経て、平成30年11月より現職。

 はじめまして、2018年11月に文部科学省教育関係共同利用拠点の特任助教として厚岸臨海実験所に着任しました鈴木一平と申します。海洋生態系における高次捕食者のエネルギーバランスに興味を持ち、これまでは主に鰭脚類(アザラシ科やアシカ科)を対象とした行動生態学の研究を行ってきました。

 大学院時代は、小型記録計を動物に搭載するバイオロギング手法を用いることで水中での摂餌行動量や潜水によるエネルギー消費量を定量化するための手法開発に取組みました。水中での彼らの行動を直接観察することは困難ですが、バイオロギング手法により加速度や速度といった行動に由来するパラメーターとして数値化されたデータを取得できます。動物の下顎に取付けた加速度の記録計からは、餌生物を捕食する際の顎の上下運動が記録されます。また、背中に取付けた記録計の速度データと動物の形態情報から、任意の速度で泳ぐために必要なエネルギー消費量を算出できるという理論がありました。国内外で飼育されている鰭脚類を用いてそれら手法の検証実験を行い、野生個体の行動データからエネルギーの獲得量と消費量を定量化する手法を確立させました。学位取得後は、水中採血が可能な機器を用いて潜水時の代謝機構に関する内分泌学的な研究や、鰭脚類だけでなく鯨類も対象とした呼気計測による潜水生理学に関する研究を進めています。

 厚岸臨海実験所では夏季を主なシーズンとして、国内外の学部生や大学院生を対象とした約10件の実習が開催されています。実習の規模は数名から20名を超える場合もあり様々で、アマモ場や沿岸域での生物採集、演習船での海洋物理環境の測定を通して、海洋生態系の基盤となる初期生産量の測定法や植物プランクトンから小型魚類までの捕食-被捕食の食物網を実体験によって学べる内容となっています。また、他学部や他大学との共同実習では、海藻類の多様性解析や森と河川と海の関連性解析など、湿原河川から汽水域、海洋まで多様な水域生態系に囲まれた環境で、それぞれの違いと同時に繋がりに関する理解も深められます。体験できる分野が多岐にわたり、私自身も書物でしか見たことがなかったり、全く知らなかった手法を一緒に学ばせていただいています。

 陸域からの養分が豊富に流れ込む道東の沿岸域には、定住性の海棲哺乳類も存在します。今年度からは、大黒島や霧多布岬に生息するゼニガタアザラシやラッコを対象とした行動観察を一部の実習のプログラムに組込ませていただきました。高次捕食者による生態系に対するトップダウン効果に関する講義に加えて、「ある生命現象が見られるのはなぜか?」という行動生態学の基礎であるティンバーゲンの4つの問いから、各グループで課題を見つけ、複数ある目視観察の手法からどれを組み合わせることで、自分たちの問いに答えるためのデータを取得できるのかを体験してもらっています。臨海実験所で開催する実習や地元市民を対象としたアウトリーチ活動を通して、高次捕食者の役割や重要性と共に、多様な水域生態系が持つ魅力を一人でも多くの方に伝えられるよう努力していきたいと思います。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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Newsletter #22-3 北大農場におけるカバークロップの研究 

耕地圏ステーション 生物生産研究農場 平田 聡之

 作物栽培の研究は、収穫物の増収や品質向上を最終目的としていますが、近年では環境に配慮した安定した作物生産への社会的要求が高まってきました。現代では、収量を低下させずに、化学合成物に頼らない、エネルギーや労力をかけない持続型作物生産が望まれています。その中で、圃場の耕うんを最小限にする不耕起栽培や圃場の生物環境や養分サイクルを改善するカバークロップの利用について研究が進められてきました。カバークロップは一般的にはその肥料効果に着目され、狭義の意味で「緑肥作物」として認識されていますが、収穫することを目的としない圃場環境を改善するために植えられる作物の総称を指しています。カバークロップには、土壌有機物の付加による土壌への物理的、化学的、生物的効果に加えて、過剰塩類の吸収による土壌悪化の防止や栄養塩の流亡の防止、特定の病原菌や雑草の抑制、景観向上などの効果があることが知られています。

 生物生産研究農場では、これまでトマトのハウス・露地栽培やコムギ栽培体系において、カバークロップの導入効果について調査してきました。北海道の作物栽培体系へカバークロップを導入する場合、大きな問題となるのは栽培可能期間が短いことです。北海道では、一年の1/3が積雪で覆われることから、野外での作物の栽培可能期間が限られています。カバークロップを導入した栽培体系の多くは、主作物の収穫後から次作物の播種までの間の期間にカバークロップを栽培する手法をとりますが、北海道ではそのような期間は2~3ヶ月に限られます。そのため北海道では、間期のカバークロップ(農学用語では後作緑肥といいます)としては初期生育が旺盛なイネ科やアブラナ科の利用が中心であり、窒素固定による土壌への窒素供給やリン吸収を促進する菌根菌の増殖など優れた効果を持つマメ科カバークロップを導入する場合は、主作物との輪作が主流でした。そこで私たちは、冷涼な環境下でも初期生育が早く、窒素固定能力が高いヘアリーベッチ(写真1)に着目し、後作緑肥としての効果を検証しました。また、ヘアリーベッチは大きく二つの生態型に分けられ、初期生育が早いが越冬能力の劣るスムースベッチ型と初期生育が劣るが越冬能力の高いヘアリーベッチ型があることが知られています。主作物収穫後の9月にヘアリーベッチを播種する場合、スムースベッチ型は4月に播種する作物(春小麦など)に、ヘアリーベッチ型は5月下旬以降に播種する作物(多くの畑作物種)にカバークロップとして有効であることがわかりました。

写真1.ヘアリーベッチ

 現在は、カバークロップ生育後の積雪下の効果に着目しています(写真2)。スムースベッチ型のヘアリーベッチは積雪下で死亡しますが、これまでの研究から低バイオマスにも関わらず、春先に高い窒素能力と雑草抑制効果があることを認めています。ヘアリーベッチは雑草抑制の効果が高い化学物質であるシアナミドを豊富に含んでいます。また、シアナミドの一部は土壌内で重合し、硝化作用阻害物質であるジシアンジアミドに変化する性質を持っています。これらの物質が積雪下で土壌環境にどのように影響するのか研究を進めています。

写真2.圃場試験の準備状況

オレンジシートは除雪区です。土壌凍結を促がすため降雪後にシート上を除雪します。

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Newsletter #22-2 コンペイトウ 

2019年12月24日

水圏ステーション 臼尻水産実験所 宗原 弘幸

写真1. ヤリカジの卵塊

 “金平糖”。令和天皇即位の儀式で招待客への引き出物に入っていたという、あのイボイボの砂糖菓子のことです。特異な形状から生き物を表す場面でよく使われています。たとえばヤリガジの卵。写真を用意しましたが、金平糖のような形状と記すだけで、イメージしてもらえるでしょう(写真1)。この形状は、卵と卵の間を広げて、胚への酸素供給効率を高くするのに役立ちます。尖ったイボでは、産卵までは間違いなく邪魔です。一般的な魚類同様に、卵巣のなかでは卵は球形で、イボができるのは産卵のあとからです。イボができる仕組みは、高張の海水に触れることと関係していますが、その先は調べていません。それがわかって何の役に立つの?そんな突っ込みを嫌ったわけではなく、2011年にロシアの標本に基づき新種記載され、その翌年に臼尻で見つかった希少種なので、見つけてもそっとしておきたいからです。

写真2. コンペイトウの雄

 ずばり、コンペイトウと名付けられた魚もいます。こちらはやや深みにいるダンゴウオの仲間です。2010年に巻貝の空き殻に産みつけられた卵とその世話をしているコブフウセンウオの雄とともに生きたまま採集されて、臼尻実験所に送られてきました。水産実験所ですので、海産生物の飼育施設があります。そこで卵が孵化した後の稚魚を2年間、育てました。以前から疑わしいことはわかっていました。実際に、一つの卵塊から生まれた稚魚の成長の軌跡を追うと、なんと形態の違いで3つのタイプに分かれました。予想を超えていました。3つのタイプのうちの一つは、典型的なコンペイトウで、体にコブ状の突起が飛び出し背鰭も皮下に埋没しました(写真2)。このような形態の個体はすべて雌でした。雄になった個体は、小さい間は多少のコブがあり、卵の時代に保護してくれた父親そっくりのコブフウセンウオになりました。さらに数か月すると、コブが消えて、ナメフウセンウオと呼ばれている種に変身する個体もあらわれました(写真3)。ダンゴウオの仲間は、皮膚がぶよぶよしている種ばかりで、特徴的なコブが分類の決め手に使われます。しかし、コブが性別や成長段階で変化する場合もあって、同様なケースがこれまでにもありました。この魚は、命名規約の約束事にしたがってEumicrotremus asperrimus が有効名として残り、他の2種につけられていた学名はシノニムとして無効になることを2015年に報告しました。E. asperrimus は、標準和名にコンペイトウと付けられている種です。覚えやすい名称が残るのはよかったのかも知れませんが、イボイボを持たない雄もコンペイトウと呼ばれることになります。御用達の金平糖でも製造過程でバッタもんは出るようですから、まあいいか。

写真3.イボ状突起が消失したコンペイトウの雄

(写真はいずれも阿部拓三博士)

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Newsletter #22-1 シカの大地・北海道 

森林圏ステーション 苫小牧研究林 揚妻 直樹

 蝦夷地が北海道に改名されて150年が経ちました。節目の年にあたり、様々な関連イベントが開催されました。北海道の名付け親とされる松浦武四郎の足跡をたどるドラマや特集番組も放映されています。その武四郎が北海道中を探検していた頃、そこには一体、どんな自然が広がっていたのでしょうか?そして、エゾシカやヒグマなどの野生動物はどんな暮らしをしていたでしょうか?

 私は当時の北海道に、どのくらいシカが棲んでいたか推定してみました。1873年から1882年まで、シカの年間捕獲数の記録が残っていたので、いったい何頭のシカが存在すれば、そんなふうな捕獲数が実現可能かを計算してみたのです。その結果、1873年時点で50~70万頭となりました。ただ、この値には当時、闊歩していたオオカミたちが捕食したシカの数や、温暖化以前の厳しい冬によって今以上に死んでいたシカの数が含まれていません。これらの死亡要因も考慮すると、実際にはこの値よりはるかに多くのシカが棲んでいたのは確実です。100万頭近く居たのかもしれません。一方、近年のエゾシカの生息数は50~60万頭と推定されているようです。つまり、もともとの北海道の自然からすれば、現状のシカの数は決して多くないのです。ところが、現在シカは増え過ぎてしまい、生態系を不自然に改変していると考えられています。現状認識に大きなギャップがあります。

 そんなにシカが多かった150年前の自然はどんな姿をしていたのでしょう?それは北海道本来の生態系や生物多様性の保全を考える基礎となります。北海道では高山や湿地などを除けば森林に覆われると考えがちです。ところが、1858年に武四郎は美瑛から富良野にかけて20×48kmの草原が、十勝には40×60kmのすすき原が広がっていたと記録しています。そんな大草原はどうやって成立したのでしょう?アイヌの人々が意図的に草地を作っていたと考える方もいるかと思います。しかし、農耕や牧畜を大規模に行っていなかった彼らが大草原を作る理由は見あたりません。その時代に大量のシカが生息していたことを考えれば、その高い採食圧によって森林が発達せず広大な草原が維持されていた可能性があります。

 では、森はどうだったでしょうか?シカが多かった頃の影響が残っている1930年の支笏湖御料林の壮齢林の構造が調査されています。その森林では優占種のエゾマツは太さ30~40cmの木が最も多く、それより小さな木が少ない、いわゆるベル型と言われる構造をしていたのです。現在、ベル型構造は更新が阻害された“不健全”な森の特徴とみなされています。しかし、もともとの森林はベル型構造で維持・更新されていた可能性がありそうです。“健全”な森林構造についても見直す必要が出てくるかもしれません。

 この50~60年間、森林動態や生物多様性について多くの知見が集められてきました。実はその期間の大半が日本中でシカがとても少なかった時代にあたります。つまり、研究者は植物にとって捕食者不在の生態系を精力的に調べていたわけです。しかし、かつてのようにシカが多いのが普通の自然だとしたら、既存の知見だけでは本来の自然の姿を理解することはできないでしょう。

 苫小牧研究林では森の中に柵を設置してシカを排除したり、高密度化させる実験を15年間継続してきました。シカ排除実験はシカの生態系機能を解明するのに有効なので、各地で行われてきました。大抵の場合、シカ排除区と比べ、シカ生息区で植物量が減少し、種組成も変ってきます。そこから、シカがいかに生態系に悪影響をもたらすかという議論をしがちです。でも、生態系の構成要素であるシカを全くいなくしたシカ排除区は明らかに不自然な状態です。そこと違うからと言って、悪影響だと判断するのは原理的に不可能です。むしろ、これからはシカが棲んでいる区画において、シカが多かったころの自然の姿をどうやって理解していくかが、生態学としての課題になってくるでしょう。

苫小牧研究林のミズナラ林に設定したシカ排除区(左)、自然密度区(中)、高密度化区(右)の植生

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水産学部生向け実習が行われています。

2019年10月29日

函館市国際水産・海洋総合研究センター タッチプール

 本分野の研究テーマの一つであるバイオロギングについて、分野の実質的拠点である函館市国際水産・海洋総合研究センターへ函館キャンパスから借り上げバスで移動してきた水産学部生に対して実習授業が本日行われています。

 写真は、函館市国際水産・海洋総合研究センター内部より撮影したものですが、センサー(ロガー)を装着した活魚をタッチプール(深さ数メートル)に放流したところを、主に水産学部生が取り囲んで見物しているところです。

 放流した魚はしばらく泳がせた後、回収されます。回収されたロガーのデータは、後日、函館キャンパスにおいて実習授業における解析用データとなります。

 例年、この時期には同様の実習が見られますが、何年もその光景をみていると、イコール「晩秋の風物詩」として感じることもあり、冬支度を始めなければならない季節になったともしみじみ思うところです。

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ワールドクリーンアップデー

2019年9月2日

9月21日に厚岸臨海実験所主催の海岸清掃イベントを開催します。ご興味のある方は、worldcleanupday.akkeshi@gmail.comに代表者氏名と電話番号、参加人数をお知らせください。

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