お知らせ・トピック トピック

三谷曜子准教授がクラウドファンディングに挑戦しています!

2019年6月18日

生態系変動解析分野の三谷曜子准教授が、シャチの生態調査のためのクラウドファンディングを募集しました。

https://readyfor.jp/projects/hokudai-shiretoko-orca

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Newsletter #21-4 

2019年6月5日

水圏ステーション 室蘭臨海実験所 本村 泰三

 今年も暖かい春になり、室蘭の海も例年通り沢山の色とりどりの海藻が目に付くようになった。まだ若く小さなコンブやホンダワラも順調に生育している。海藻研究の醍醐味の一つは、生活環制御であると思ってきた。例えば、褐藻コンブ類は巨視的な胞子体と微視的な雌雄配偶体の世代が交代する。我々が親しんでいるコンブは胞子体で、北海道室蘭では9月から12月にかけて成熟し、減数分裂を経た後に、長さ10ミクロンにも満たない遊走子が放出される。遊走子は鉄を含まない人工合成培地中でわずか数mmの小さな糸状の雌雄配偶体に発生し、直径約20ミクロン程度の卵と5ミクロン程度の精子による有性生殖は行われる。この受精卵が1年も経たないうちに長さ数メートルの胞子体に成長する。このサイクルのどこかが断線すると所謂コンブは生まれない。

 陸上と異なり、海中では可視光の中で短波長の青色光が深所まで到達できる。そのため、海中はブルーワールドとなる。褐藻や珪藻が属するストラメノパイル系統群(遊泳細胞が長短2本の鞭毛を有し、長い前鞭毛に細かい毛を有する真核細胞の一つのグループ)では、一連の形態形成において青色光はキーとなる。例えば、上述したコンブの雌雄配偶体が成熟するには、鉄とともに青色光が必須となる。数年前に、この青色光受容体タンパク質としてオーレオクロームが発見された。また、多くの褐藻の遊走子や配偶子は青色光に対して正または負の走光性を示すが、この場合の受容体タンパク質として鞭毛に存在するヘルムクロームが発見されている。青色光刺激に対する海藻のレスポンスは、生命が海洋において誕生し様々な生物に変化したことを考えると理解できる。このような刺激反応の分子メカニズムは、結局は陸上生物に受け継がれていくことになる。

 また、波あたりの強い沿岸域を生活の場としている海藻は、それに適応した細胞壁多糖を有している。硬いセルロース繊維含量は少なく、紅藻では寒天やカラゲナン、褐藻ではアルギン酸とフカン、緑藻でも硫酸化された独特な多糖類を有している。これにより、海の中で波にまかせたしなやかな動きを生み出している。近年のゲノム情報解読から、褐藻のアルギン酸合成経路は緑膿菌などからの遺伝子水平伝搬であろうと推定されている。

 2010年、2015年に褐藻シオミドロとマコンブの全ゲノム情報が明らかになった。現在では、フランス・ロスコフ臨海実験所のメンバーを中心に50種類を超える褐藻のゲノムを明らかにする国際的プロジェクトが進行しており、数年のうちに発表されるはずである。海藻が持つユニークな性質や環境適応能力に関して分子レベルで解明できる時代がそう遠くない未来に訪れる。

写真は、モニタリング1000でお世話になっている瀬戸内海区水産研究所の島袋寛盛博士に提供して頂いた。

写真1. 太陽からの光を受けるマコンブ。海はブルーワールド。
写真2. 陸上の森のように、海中も陽の当たらない場所はかなり暗い。

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Newsletter #21-3 雪の表情

2019年5月27日

森林圏ステーション 中川研究林 野村 睦

写真1. 積雪の成層状態。断面にインクを散布し鮮明にしています。(雨龍研究林 積雪深は約2m)

 北海道北部は、最大積雪深が2メートルを超える豪雪地帯で根雪期間も半年に及び、積雪が森林や水循環などに大きな影響を与えています。このため、雨龍研究林で冬季に行なわれている農学部森林科学科の実習では、森林の調査のほかに積雪の観測が組み込まれています。積雪調査は、まずは穴を掘り断面を作ることが始めです。そうすることで、地層を観察するように積雪の堆積状況を知ることができます(写真1)。

 豪雪地帯は北海道北部に限りません。本州では北陸以北の日本海側は積雪量で言えば北海道を超える多雪域です。山形大学の上名川演習林もそのような場所にあり、そこでは同大農学部が積雪を調べる実習を行なっています。筆者は、ここ数年、その実習に参加し調査に協力してきました。やることは同じ、とにかく学生にはがんばって穴を掘ってもらうことです(写真2)。

写真2. 積雪の観察の様子。3メートルを超える深さのために、はしごを使っています。(山形大学上名川演習林)

 穴を掘ってみると、北海道と山形では雪粒子の形(雪質)が大きく異なり断面の様相がだいぶ違うことがわかります。山形の積雪は、北海道北部では融雪後期に見られるような粒の大きな「ざらめ雪」が大半を占めています。厳冬期に気温がほとんどプラスにならない寒冷地の積雪は、「新雪」の状態から、粒子が丸く圧縮された「しまり雪」を経て、春になり水を含んで肥大化した「ざらめ雪」へと雪質が変わっていきます。ところが、冬であってもプラスの気温や雨が珍しくない地域では、一気に「ざらめ雪」になるようです。積もりながら解けるとも言えるかもしれません。1月の日最高気温の平均をみると、雨龍研究林は-5℃、上名川は+1℃程度です。

 もちろん、初めて山形大の実習に参加する前から、「ざらめ雪」が多いであろうことは、気象データからも十分に予測していました。が、予測を超える「ざらめ雪」状態でした。真冬の雪解けや降雨の予測、あるいはそれに由来する水による積雪への影響は扱いが難しい問題です。その水が土壌面まで水が到達すれば、洪水や地すべりにも関わり、温暖地の積雪域では注目されている現象です。北海道北部の場合、真冬であれば積雪が寒冷なため多少の水であれば積雪内ですぐに再凍結してしまい、今のところあまり問題にはなっていません。

 ここまで、北海道北部と山形の積雪について、穴を掘って調べてみたその内面をお話しましたが、穴を掘るまでもない外面の違いもあります。雪のない地域から山形を訪れた人ならば雪面の白さを強く感じるでしょう。しかし、北海道の人はそうではないかもしれません。後者には一理あります。雪は水を含むと日射の反射率が大きく下がるからです。まぶしさに欠けるといった感じでしょうか。冬季の気候が温暖化に向かえば、外面であれ内面であれ北海道の雪の表情が変わるかもしれません。

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Newsletter #21-2 湿地の保護・保全に欠かせない基盤情報「湿地目録」を作成する

2019年5月20日

耕地圏ステーション 植物園 冨士田 裕子

 近年、人間活動による湿地の消失や劣化、生態系の攪乱などが急速に進行し、湿地は世界中で危機的な状況におかれている。地球上の湿地の64%から71%は20世紀に失われたと推定され(Davidson 2014)、今なお世界各地で消失と劣化が続いている。日本も同様で、本州以南の沖積平野や盆地に存在した湿地の多くが、古くから水田や宅地へと転換され消失してきた。現存湿地面積の9割近くが集中する北海道においてさえ、元の面積の約7割が明治時代に始まった開拓や大規模農地開発などで消失している(図1)。

図1 北海道の湿地面積の変化

 湿地は生物多様性のホットスポットの一つで、水質改善、洪水等における緩衝作用、炭素の貯蔵、地域特有の景観を形成するなど、多くの利点や機能を持つ重要な生態系である。世界的にも湿原の保護と保全、再生は、人類共通の喫緊課題となっている。ところが、湿地の保護・保全に欠かせない基盤情報である、「どこに、どんなタイプの湿地が、どれだけの面積存在するのか」を明示する湿地目録(wetland inventory)が作成され、さらに生息する生物の情報、水文や土壌、水質などの物理化学的な環境要素情報、保全のための法的規制等の指定状況といった様々な情報を整備したデータベースが構築されている国は多くない。日本にも実は、信頼できるレベルの目録は存在していない。 

 そこで1997年に湿地研究者が主体となって北海道湿地目録を作成した(冨士田ほか 1997)。既存の資料、文献、報告書、聞き取り調査などから北海道内の面積1ha以上の湿地をリストアップし、面積、標高、湿地タイプといった基礎情報に加え、湿地の保護状況などの情報を含む目録である。しかし、北海道湿地リスト1997も湿地の範囲については不正確で、実際は土地開発により面積が減少していたり、乾燥化によってもはや湿地ではない場所も含まれているなど、現実に即した確認作業が必要とされてきた。湿地範囲が不正確だったのは、撮影年が古いモノクロ写真を多数使用したこと、判読経験値の異なる複数の人間が湿地範囲を判定したことが原因と考えられた。一方、2005年以降、解像度の高い無償の空中写真の公開、国土地理院地図の公開、有償のカラー空中写真の充実などにより、これらをGIS上で組み合わせることで、湿地の判読精度は以前とは比較にならないほど向上した。

 そして、試行錯誤しながら数年かけて新しい「北海道湿地目録2016」を作成した。新しい目録では、1997版で150箇所だった湿地は、180箇所に増えた。これは、山岳地域の人の目に触れない湿地などを、空中写真で確認・抽出することができたからである。また、データベースを活用して保全状況や健全性を評価したり、他のGISデータとの組み合わせで湿地とその周辺地域の土地利用上のリスクを評価するなど、様々なことが出来るようになった。

 湿地目録の作成は、地味で根気のいる作業だが、研究成果としてはなかなか評価されない。しかし誰にでも作成できるものではなく、湿地を知る研究者主体でないと作れない。湿地の保全や施策立案に大いに寄与する目録が完成して、湿地研究者としては胸をなでおろしている。

写真1 大雪山沼ノ平湿原の四ノ沼の様子(ドローンにより撮影)
写真2 大雪山平ケ岳南方湿原のケルミ-シュレンケ複合体.ケルミ(凸部)とシュレンケ(水のたまった凹部)が縞状に並ぶ.

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Newsletter #21-1 新任教員紹介

2019年4月26日

水圏ステーション 七飯淡水実験所 山崎 彩

経歴:北海道大学大学院環境科学院生物圏科学専攻博士後期課程修了。博士(環境科学)。専門は魚類の分子系統、進化学。日本学術振興会特別研究員、東北大学博士研究員、北海道大学学術研究員を経て平成30年7月より現職 。

ベロ(カジカの一種)とヤドカリ@臼尻
ベロ(カジカの一種)とヤドカリ@臼尻

 初めまして。平成30年7月に文部科学省教育関係共同利用拠点の特任助教として七飯淡水実験所に着任しました山崎彩と申します。私はこれまで、北の海に生息するカジカ類の分子分類や寒冷地適応の研究を行ってきました。また、国内河川に生息するニホンウナギの保全に関する研究も行っています。

 学生時代には臼尻水産実験所で6年もの歳月を過ごし、季節を問わず研究のために北の海に潜ってはカジカ採集に明け暮れました。海氷や流氷に覆われる海域では、不凍対策をもたない種に環境中の氷核が作用すると、体細胞中の水分が凍結し、死んでしまいます。しかし、寒帯〜亜寒帯に生息する種は、不凍タンパク質の発現により体細胞内にできた氷核の成長を抑制するため、氷が存在する海域でも生存できるのです。学位取得時には、世界各地で冬季に採集したカジカ類の筋肉中に含まれる不凍タンパク質の活性測定に加え、各種が発現させている不凍タンパク質の遺伝子配列を決定することで、カジカ科魚類の寒冷適応を明らかにしました。また、ダイビングで撮りためた水中写真を使って生き物図鑑を作成したり、イカの着ぐるみを作って子供たちへの科学教育に使用したりと、アウトリーチ活動にも力を入れました。他にも、人工イクラ作りや煮干しの解剖、クジラの食性等の出前授業も行いました。これらの活動は、子供たちに科学に対して興味を持ってもらいたいとの思いから自主的に取り組んできました。

 最近は、環境DNA手法を用いて国内河川におけるニホンウナギの分布域を特定する調査・研究に携わっています。近年マリアナ海溝での産卵場が特定されたばかりの本種ですが、実は国内河川での分布域すら明らかにされていません。環境DNAによる生物の分布調査は近年急速に発展した研究手法です。環境中に存在する微量のDNAやその断片を検出するため、例えば水を汲むだけで、その周辺に生息する種を特定できます。この技術は生物を直接捕獲する必要がないため、絶滅危惧種や捕獲が困難な種の分布調査、あるいは生物相調査に利用されています。生物の採集には多大な労力と種判別の専門知識を要しますが、環境DNAはより簡便に行うことができます。今後はこの手法を本拠点の実習に取り入れ、実習生らに最先端の研究を体験してもらいたいと考えています。

 七飯淡水実験所・臼尻水産実験所・忍路臨海実験所で行われる実習は発生工学からバイオロギングまで取り扱う分野が幅広く、私自身未知な分野もあるため、実習を通して一緒に学ばせていただいています。本拠点を利用する学生らが将来の日本の水産科学を担う人材になりたいと希望してくれることを願いつつ、一人でも多くの学生に水圏生物の魅力を伝えられるよう本拠点の業務に邁進していきたいと思います。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

ニホンウナギ調査での採水@福島県
ニホンウナギ調査での採水@福島県

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天塩研究林で利用者セミナーをおこないました

2019年3月19日

天塩研究林では、毎年2月に研究林を利用した研究者や学生が発表をおこなう、「フィールド利用者セミナー」を開催しています。利用者は本学のみならず、他大学や研究機関など幅広く活用されています。今年は2月20日におこなわれ、下記プログラムを「植物の話」「土の話」「熊の話+α」のサブタイトルで三つのパートに分けて発表が進められました。

  • 天塩研究林長 高木 健太郎 准教授
     開会のことば
  • 小樽商科大学 片山 昇 准教授
     ヒトによる「いじめ」から山菜が回復するまでの軌跡
  • 北大環境科学院 河上 智也 博士1年
     トドマツの根っこはライバルにの存在で変体する?
  • 北大農学研究院 北条 愛 博士3年
     二つの衛星で森林生長量の推定はできるのか?
  • 北大工学院 茂木 透 特任教授
     なぜ道北地域で地震がおこるのか
  • 北大環境科学院 小林 高嶺 博士1年
     森林の炭素と鉄の動きは季節と関係してる?
  • 北大環境科学院 植村 茉莉恵 修士2年
     冬の森林の土壌養分(窒素)はどうなるか?
  • 北大ヒグマ研究グループ 伊藤 泰幹(北大文学部3年)
     北大クマ研の2018年調査結果
  • 北大文学部 松本 朋華 学部4年
     今どきのヒグマとヒトのご近所付き合い
  • 北大農学研究院 玉井 裕 准教授
     きのこの山計画進行中 -天塩林を宝の山に
  • 北大CoSTEP 朴 炫貞 特任助教
     森とアート
  • 天塩研究林 芦谷 大太郎 森林保全技術班長
     閉会のことば

このセミナーは普段フィールドを支える技術職員や森林技能職員を対象としているもので、職員が管理しているフィールドでどのようなことがおこなわれているのか?また、職員のサポートがどのように生かされ、役だったかを深く知る機会になっています。こうした機会は日頃縁の下の力持ちとして働く職員にとっては貴重な時間であり、仕事に対する誇りや今後の研究協力に対する大きな原動力にも繋がっていきます。

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Newsletter #20-4 ジャイアントミスカンサスの道内への普及を目指して

2019年2月19日

耕地圏ステーション 生物生産研究農場 山田 敏彦

 約10年前にはバイオマスのブームがあり、植物資源からバイオエタノールを製造する動きが北海道にもありましたが、いったんブームは静まりました。しかし、最近、バイオマスが話題に上るようになってきました。人類が直面している温室効果ガス削減の対策には、バイオマスの積極的な利活用がやはり不可欠です。低温条件でも高いバイオマス生産が可能で、肥料がほとんど不要であるなどの利点から、寒冷地のバイオマス資源作物としてススキ属(Miscanthus)が近年、注目され、特に、二倍体のススキ(M. sinensis)(2n=38)と四倍体のオギ(M. sacchariflorus)(2n=76)との自然交雑した三倍体雑種のジャイアントミスカンサス(M. x giganteus)(GM)の栽培面積が欧米では増加してきています。北大農場でもGMを長期間にわたり栽培し、その能力を調査しました。その結果、平均25.6 ±0.2トンha-1-1の高い乾物生産を実証できました(写真1)。また、土壌炭素貯留量は1.96 ± 0.82 トンha-1-1 であり、森林での値より高く、資源作物としてGMを栽培することにより、温室効果ガスを削減できる機能があることを明らかにしました(Nakajima et al. 2019, Carbon Management)。GMは地上部分が十分に枯れる晩秋から早春にかけて収穫を行います。北海道では冬季多雪地帯であるために、雪解け後に刈取らなければなりません。幸い、GMは風雪が強い冬季間でも倒れない特性があることがわかりました(写真2)。現在、北海道各地に資源作物のGMを普及させることを目指して、各地に試験栽培を開始したところであります。バイオ燃料の原料としての利用にはまだ技術的にハードルが高いため、当面はペレットとしての燃焼利用を考えています。地域に賦存する木質や稲わらなどのバイオマスとGMを混合したペレットの試作なども検討しています。燃料原料以外の用途として、家畜敷料としての利用があげられます。木質バイオマス高騰のため、家畜敷料不足が深刻な問題になっています。また、昨今話題のプラスチック削減のための代替素材としても注目されています。一方、農業の生産現場での従事者の高齢化、労働力不足に伴い、農地条件が悪い場所等で耕作放棄地の増加が予想されています。そのため、農地の有効利用の一つとして、栽培が容易で省力的なGMを栽培し、いろいろなバイオマス資材用途に利用されることを期待しているところです。

写真1.北大農場で生育しているジャイアントミスカンサス(11月)

写真2.北大農場で生育しているジャイアントミスカンサス(1月)

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Newsletter #20-3 FSCトピック 甚大な台風被害を受けた和歌山演習林

2019年2月15日

 和歌山県にある北海道大学の和歌山研究林は8月23日の台風20号で大きな被害を受けました。林道が30か所あまり崩落し、実習・調査用の資材や用具600点以上が河川の氾濫で流失するという、研究林設立以来もっとも壊滅的な被害でした。

台風20号の猛烈な雨

 8月23日、 強い台風20号が和歌山県に接近し、危険回避のため研究林スタッフは全員自宅待機となりました。夜には、周辺で1時間に120ミリ以上の猛烈な雨が降ります。その後、研究林庁舎のある平井集落内の道路が、平行して流れる平井川の氾濫のため、同時に2か所が陥没しました。集落外へのアクセス路3本のうち2本が断たれる非常事態となりました。

 雨が収まったのは25日、研究林庁舎と上流部にある研究林を結ぶ国道371号線が崩壊したとの情報がもたらされます。

路肩と護岸が崩壊した林道
(平成30年8月28日撮影)
路肩が崩壊した国道
(平成30年8月28日撮影)

甚大な被害状況

 現在は被害総額を算定中ですが、流失した資材や林道の被害を全て含めると、数千万円単位にのぼる見通しです。

 和歌山研究林がある紀伊半島は毎年頻繁に台風が来ます。そのため、台風が接近する可能性があるときは、大水で流されたり、風で飛ばされたりしないよう用具・資材類は、建物や物置の中など安全な場所に避難させます。今回も同様の対応を行っていましたが、それでも甚大な被害となりまいりました。

土石流で損壊・流出した倉庫
(平成30年8月28日撮影)

土石流に埋まってしまったモノレール
(平成30年8月28日撮影)

現在の復旧状況

 研究林庁舎がある平井集落と下流にある市街地をつなぐ道は、3本のうち2本が陥没により通行不能になりましたが、9月下旬になってようやく陥没していた1本の仮復旧が完了し、平時とそう変わりのない交通事情へと戻ることができました。

 その一方で、上流域にある研究林へのアクセスはいまだ大きく制限されたままです。国道371号線の少なくとも4か所が大きく崩壊しており、自動車で研究林へは近付くことができません。国道の復旧は現在ようやく着工したところで、2019年春頃までには研究林入口まで行われる見通しとなっていますが、研究林内については崩壊の規模が大きく、完全復旧がいつ頃になるのか、未定のままです。

研究林からのメッセージ

 今年は台風に限らず悪天候が続き、研究林へ近付くことすらままならない日々が続きました。このため復旧作業はあまり進展していません。ただ、このような状況でも一部の学生実習や野外調査は、研究林スタッフがしっかりと安全管理を行ったうえで受け入れを続けています。研究林スタッフはポジティブな姿勢を持ち続けて前に進んでいることを広く知っていただけるととても嬉しく思います。

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Newsletter #20-2 北方生物圏フィールド科学センターへの要望

2019年2月7日

北海道大学病院 松野 吉宏(センター外運営委員)

 北方生物圏フィールド科学センターの外部運営委員を拝命してもうすぐ2年が経過します。平素の業務のうえで直接お世話になることもほとんどなく、貴センターについて知るところの乏しかった小生にとっては、新鮮でもあり、しかしどこか懐かしさや親しみも感じられる発見や気づきの2年間でありました。

 貴センターは本学の「本学らしさ」をもっとも色濃く備えている部局のひとつと言えるのではないでしょうか。分野違いから来る無知を恐れず申し上げれば、森林圏、水圏、耕地圏の各ステーションにおいて維持管理されている、北海道なればこその教育・研究環境を生かし、本学らしい魅力ある情報発信や社会への提言、次世代への継承を着実に今後もお進めいただきたいと期待しております。そして国内外の研究者たちにも研究のフィールドとして広く活用されている実情を、学内はもちろん、市民や社会へも上手にアピールしていただきたいと思います。

 貴センターの「本学らしさ」は市民にもわかりやすく、北大植物園をはじめ子供たちや一般市民にとってもっとも身近な「北海道大学」もまた貴センターではないでしょうか(その次は北海道大学病院かもしれません)。その立ち位置を生かし、大学が行う高度な学術研究や教育と、市民生活や次代を担う子供たちの憧れとの間をつなぐ役割を大切にしていただきたいと思います。小生自身、小学生のころ函館の実家近くにあった水産学部の、ある若手(だったのでしょう)研究者のもとに訪問させてもらう機会があり、実験ベンチサイドで「プランクトンのお話」から食物連鎖のいかなるものかを聞かせていただきながら、はじめて大学や研究者というものに触れて子供心に覚えた興奮や感激、そしてその場面は半世紀を経過した今でもフラッシュバックしてまいります。現在、貴センターにおかれてもさまざまなアウトリーチ活動が行われているようですが、これからも市民や子供たちに夢を与える開かれたセンターであっていただきたいと思います。

 そうは申しても、フィールドの強みを生かした諸活動も現実には採算の取れるものばかりではないようですし、教職員の確保や施設の管理などを含め教育研究環境の維持自体にかかるご苦労も並大抵ではないことも知りました。すでに実績のある自治体はもちろんのこと、過去のある時期とは異なって、地域再生や環境保全などには国内外のさまざまな企業などの関心も増しているのではないかと感じます。今後はそうした社会的なうねりを機敏にキャッチして、研究や諸活動を広い枠組みで展開する機会も増やしていけるのかもしれない、と思うこともあります。

 小生も、人並みにストレスフルな日々を過ごしてはときに北大植物園を散策し、深呼吸しながら空を見上げて癒される教職員の一人です。本学の北海道大学らしさが一層輝きを増すように、多少大げさに申せばその象徴と言ってもよいかもしれない貴センターの活動に今後も注目してまいりたいと思います。貴センターの益々のご発展を祈念しております。

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JST news 2019年2月号に「バイオロギング最前線 野生動物の行動に迫る」(監修 宮下和士教授)が掲載されました

2019年2月6日

 国立研究開発法人科学技術振興機構(略称JST)の広報誌であるJST newsの2019年2月号の特集として、生態系変動解析分野の宮下和士教授が監修した「バイオロギング最前線 野生動物の行動に迫る」が掲載されました。

JST news 2019年2月号 表紙
宮下和士教授(右上)

 宮下和士教授はJSTの戦略的創造研究推進事業CRESTにおいて次世代型バイオロギング・システムを開発されており、その研究内容についても掲載されております。

 JST news 2019年2月号は以下のリンク先よりご覧いただけます。

http://www.jst.go.jp/pr/jst-news/backnumber1902.html

 宮下和士教授がCRESTで行っている研究概要については、以下のリンク先よりご覧ください。

http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/project/33/33_16.html

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岸田准教授の研究成果が北海道文化放送で紹介されました

2019年1月15日

苫小牧研究林の岸田治准教授の研究成果が北海道文化放送(uhb)の番組「みんなのテレビ」で紹介されました。uhbでは以前より国内外来種としてのアズマヒキガエルについての放送をしていましたが、今回の岸田准教授の研究成果から北海道におけるアズマヒキガエルの与える影響の大きさに懸念を示す内容となっています。

https://uhb.jp/news/6943/

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Weekday Campus Visitで生物生産研究農場に、佼成学園高等学校(東京)の生徒6名が見学に訪れました。

2018年12月12日

12月10・11日の両日おこなわれた、高大連携の取り組みのひとつのWeekday Campus Visit (WCV)は、NPO法人 NEWVERY WEEKDAY CAMPUS VISITのコーディネートにより、CoSTEP(科学技術コミュニケーション教育研究部門)が受け入れたプログラムです。このたびCoSTEPとの連携により当センターでもカリキュラムの一部として協力しました。
生徒たちは酪農生産研究施設の牛舎を訪れ、まず施設の歴史や研究内容を技術職員から受けました。また当施設は農学部以外にも、獣医学部や医学部、工学部などの研究・教育など多方面に利用されていて、当施設の意義についても理解を深めてくれたようでした。
獣医学部の実習や、搾乳作業にも立ち会うことが出来、特に機械化された搾乳作業を見学することで、先の北海道胆振東部地震による停電で起こった酪農業の被害についても知ってもらうことが出来ました。
最後に搾りたての牛乳の試飲をおこない、殺菌方法や飼料の違いによる味や香りの特徴についても体験してもらいました。

技術職員から牛舎の概要を聞く生徒たち

 

後方の獣医学部の実習を見学した後、技術職員から解説を受ける

 

搾乳の準備

 

「君たちも見学に来るかい?」と言いたげなウシ

 

低温殺菌により風味豊かで飼料のトウモロコシの香りすら感じられる牛乳

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HUSTEP(北海道大学短期留学プログラム)が研究棟でおこなわれています

2018年11月22日

11月16日にHUSTEP(北海道大学短期留学プログラム)のプログラムで、当センターと大学院農学研究院でおこなっているEnvironmental Science for Biological Resources(生物資源のための環境科学)の6回目の授業Global warming and forest carbon cycling (地球温暖化と森林炭素循環)がおこなわれました。

 

 

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Newsletter #20-1 長寿の秘訣 ~地球上の最長寿生物「ナラタケ菌類」の三つの秘密~! (森林圏ステーション 南管理部 車 柱榮

2018年11月14日

時代が変わっても健康と長寿は昔から、人類共通の願いである。日本は世界一の長寿国である。その理由について、食べ物と長寿の関係に詳しい日本食肉消費総合センターは、抗生物質の開発や医学の進歩の他に、食生活の質的転換、すなわち穀粒中心から動物性食品を併せて摂る食生活が進んだから、という。しかし、長寿には医薬や栄養源以外の理由はないのだろうか? 実は、私がこれまで研究してきたナラタケ菌類は現在、地球上で一番体が大きく最長寿の生物なのだ。森林において、10トン以上の体で1,500年も生きているナラタケ菌類が私たちに長寿の秘訣を三つ教えてくれた。

秘訣その一は“器用な生き方をすること”:北海道で「ボリボリ」と呼ばれているナラタケ菌類は、私の研究によって2新種と1新亜種を含む6種が生息していることが分かった。世界的には30種以上の多様な種がある。彼らの生活パターンは驚くことに、樹木を含む森林植物に対する病原菌でありながら、自ら倒木、落葉及び落枝などの木質分解能力を持っていることに加えて、他の植物や菌類との共生能力も併せ持つことである。まさに器用な生き方が出来ることなのである。

秘訣その二は“繋がりを作ること”:ナラタケ菌類は、緑の葉を持っていないことで独自生存が不可能なラン科植物のオニノヤガラやツチアケビとの共生生活を送っている。森林内では、ナラタケ菌類は寄生者や腐生者として土壌中に特異な兵器とも言える菌糸束を伸ばし、オニノヤガラの根茎やツチアケビの根と繫がるのである。彼らと栄養分や水のやり取りをして共に生きることが出来るのである。
共生するキノコもある。森の中の切り株や枯死木には正常なキノコの傘が出来ず団子状になってしまうタマウラベニタケを見かけることがある。それはナラタケ菌類の技である。タマウラベニタケはナラタケ菌類がいる場所でしか発見できない。ナラタケ菌類がまず木質を分解し、そこで生成された2次代謝物質がタマウラベニダケの生存には欠かせないようだ。タマウラベニタケは栄養分を求めて、ナラタケ菌類に侵害を受けながらも共存するのである。さらに、森林内には大きなウサギ耳状のものを作ることでオオミノミミブサタケと呼ばれるキノコがある。土の中に形成された菌核から生えたものである。菌核を調べてみると菌核内部がナラタケ菌類の菌糸束で侵されている。すなわちオオミノミミブサタケ菌はナラタケ菌類から侵害されることで危機感を感じ、キノコを作り胞子を飛ばすことで子孫を残せるのである。このようにナラタケ菌類の菌糸束は森林土壌中であらゆる生き物と繋がりを作る。ネットワーク作りが上手な生き方が第二の秘訣と言える。

秘訣その三は“ボランティア上手であること”:ナラタケ菌類の菌糸束の外側はエナメル質のような光沢質である。野鳥であるクロツグミやアカハラは森林内で巣を作り、雛を育てている。ナラタケ菌類の菌糸束は、地面の腐った倒木などから容易に、豊富に取れる。菌糸束は、保温性があり、またヒナの排泄物や雨水に対する撥水性が優れているので、雛と接している巣の内部材料として使われる。そこで使われた菌糸束は死ぬことでナラタケ菌類にとっては何のメリットもないように見える。しかしよく考えると、森の中にナラタケ菌類が生息していることで巣のための材料提供が出来、ツグミやアカハラが住みやすい環境になる。そこに棲息するアカハラは植物の果実を餌にすることで樹木の種子散布の働きがある。多様な森林が維持されることはナラタケ菌類の生存や広がりにとっても都合の良い環境になる。このことは「野鳥のためにあることが回りまわって自分のためになる」というボランティア精神あふれる生き方と言えるのではないだろうか?

さて、ナラタケ菌類の長寿の秘訣は私たちの長寿にどのように生かすことができるであろうか?ナラタケ菌類のような完全な“器用さ”は望まなくていいが、新しいことを目指す姿勢を持つこと。また、身の回りのすべてと社会的ネットワークを作り、時間がある限り奉仕の生活を送ることで自分を照らされ、生きる必要性を感じることである。すなわちナラタケ菌類の生き方こそが、身体的(フィジカル的)・メンタル的な長寿のための秘訣ではないだろうか?

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苫小牧研究林の岸田治准教授らの研究が紹介されました

2018年11月9日

苫小牧研究林の岸田治准教授らの、本州のヒキガエルが北海道の在来両生類を中毒死させる研究が全国紙2紙に紹介されました。

yahooニュースでは毎日新聞版の全文がお読み頂けます。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181106-00000000-mai-life

公益財団法人 森林文化協会では朝日新聞版の全文がお読み頂けます。
https://www.shinrinbunka.com/news/pickup/17313.html

毎日新聞(有料記事)
https://mainichi.jp/articles/20181106/ddm/012/040/038000c

朝日新聞(有料記事)
https://www.asahi.com/articles/CMTW1811070100005.html

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雨龍研究林の間伐材で登山道標柱が整備されました

2018年10月18日

雨龍研究林の間伐材により、幌加内町では北海道百名山の「三頭山」と「ピッシリ山」の標柱を設置しました。

掲載広報誌はこちらから

 

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植物園で「葉っぱで作る植物図鑑」を開催しました

2018年8月3日

耕地圏ステーション植物園では,7月26日(木)・27日(金)の2日間にわたり,大学等地域開放特別事業「葉っぱで作る植物図鑑」を開催しました。
この企画は,例年同時期に,小学生を対象として実施しており,本年度も2日間で4回(1日2回),合計40名の小学生が参加しました。
両日とも天候に恵まれ,参加者たちは園内でハルニレの観察や葉っぱの採集をした後,室内に入り,職員の指導により図鑑づくりに取り組みました。
植物園では,3月にも小学生を対象とした「冬の植物園 ウォッチングツアー」の開催を予定しております。

園内で葉っぱの採集を行う参加者たち

室内で図鑑づくりに取り組む参加者たち

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Newsletter #19-4 自然エネルギー研究からの学び

2018年6月22日

耕地圏ステーション 生物生産研究農場 荒木 肇

 再生可能エネルギーの農業活用について、工学部から作物残渣のエネルギー資源化の研究依頼があり、北大農場で産出される作物残渣の所持熱量測定や粉砕、ペレット化の可能性調査が、自然エネルギー研究の始まりだった。地元業者からの依頼もあり、夕張温泉のボイラー室からの余剰熱と温泉廃湯(熱交換温水)とをハウス内と内部のベッドに導入して、冬季アスパラガスを試みた。ホテル社長や地元の設備会社社長が、自らの施設や道具でシステムをつくり、厳冬期でもハウス内暖房なしにアスパラが生産された。

 夏に雪冷熱や冬季に堆肥熱にチャレンジした。夕張市の閉校学校活用事業で、厚生労働省からの補助事業で、その一部には自然エネルギーによる体育館での野菜生産が含まれていた。自然熱源から人間が活用する熱量を獲得するには大量の雪や堆肥が必要である。「雪を使うと省エネ」「雪は代替冷熱源」には間違いないが、それを実現するには「研究施設」を作成してからの研究になる。上述の事業費から、雪冷熱は設備会社が地下雪室(L4.5xW3.6xH2.7m)を製造し、体育館内にアスパラガスやチコリーの栽培ベッドを利用させていただいた。

 チコリーは根株を定植して15℃で萌芽して食用にするが、20℃では葉が結球せず、10℃では葉が伸長しない。温度制御を研究するには好適な材料である。雪室からベッドへの冷熱輸送は雪室底部とベッド間に循環パイプを設置し、冷水循環で対応した。つまり冷水がベッドに行き、そこで暖められた水は雪下で冷却されて、またベッドに導く方法である。

 調査を継続すると種々の課題がでてきた。「室中の雪が7月で融けてしまった」。雪室といっても、壁には断熱材を貼り、地温伝導を抑制、融水はポンプでくみ上げ等の工夫をしているが、こればかりは雪量で解決するしかない。結局データを採取した年は25万円を払って美唄から雪を購入した。次に「冷水は来るがベッドは冷えない」。冷水はベッドの壁面を通過する。ベッドにも断熱材を底面・側面・天井に設置しているおり、ベッドおいたハウス内も地中熱の冷風を流している。地中からの冷風は地上にあがるとすぐに高温になる(空気の比熱はたいへん小さい)。周囲が25℃以上なら、断熱材を貼っていても、ベッド内部の気温は冷やせない。盛夏に雪冷熱でチコリーをつくる試みは失敗したが、「栽培箇所の断熱と培地の直接冷却」の重要性を認識した。あたりまえのことがやっとわかったのである。

 翌年は栽培室(断熱材で囲う、L1.8xW1.8xH2.4m)をつくり、この内部に地下3mの地中熱を導入するが、その導入パイプも断熱材被覆。栽培室内部には培養液を循環させる水耕装置を設置し、培養液中に雪冷水パイプを直接導入。結果としてこの方法は盛夏でも培養液を15℃に制御することとなった。

 培養液に投げ込みクーラーをいれれば設定温度は実現できたかと思う。技術研究とするなら、熱供給側(貯雪→雪冷水循環)と栽培装置側(室内温度や培養液循環)の双方が温度管理できる構造物であることが技術の鍵である。「雪で冷却」はローテクであり、「雪で冷えるのは当たり前」の発想もあり、研究費獲得も容易ではない。そのローテクを実現する環境にも考慮いただきたい。

 最後に環境で一言。自然エネルギーでの農業生産に関心をもつ学生が多い。なぜ実現できないのだろうか?原子力依存の政策にも問題がある。「自然エネは不安定か」はもちろんそうである。自然に依拠しているから。技術的にまだまだアイディアや知恵が必要です。そして自然エネ活用を動かす社会や組織が必要である。前述の研究では、技術だけでは自然エネ活用はできないと実感した。自然エネを使う社会をどうつくるか? 初期投資の確保、自然エネ活用事業の経営、利潤分配等の課題があり、この「環境起学」が重要。熱心な学生がいるが外部資金が不充分で、研究費をかなり投入した。退職までには赤字解消を申し添える。


養液栽培でのチコリー生産

地下雪室への雪の追加


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Newsletter #19-3 北方生物圏フィールド科学センターへの要望

2018年6月13日

大学院農学研究院 研究院長 横田 篤(センター外運営委員)

 私の専門は農芸化学の応用微生物学で、学生時代を含めこれまで40年近く専ら実験室におりましたので、フィールド科学センターとは接点がありませんでした。しかし農学研究院長として3年前からセンター外運営委員となり、漸くセンターとの関わりができました。そこで運営委員会での経験と農学研究院や北大の運営面からの要望を述べてみたいと思います。
 運営会議に出席して初めて知り印象的であったことは、センターの各施設が各領域の学内外の研究者に利用されているだけでなく、文科省教育関係共同利用拠点として学外や海外からも学生を受入れ、フィールド科学に強みのある北大の教育研究に有効利用されていることでした。一方で、組織再編により2001年にセンターが誕生し各領域が一つの組織にまとまった意義を踏まえた今後の展望についての議論が必要ではないかと感じました。これは逆に言えばセンター発足時に農学部から農場、牧場、演習林、植物園と一挙に4つもの附属施設が切り離されたことの教育研究面におけるデメリットをどうしても考えてしまうからです。
 次に本論として北大の運営面から見た要望です。そもそも演習林や農場は維持資金としての基本財産であり、その運用(経営)収入は札幌農学校や北海道帝国大学の経常的な運営財源でした。秋林ら(北大演研報 54(2), 273-298 (1997))は、例えば昭和初期に雨龍地方演習林の森林売却益によって理学部創設費(昭和2~5年)の半分が賄われ(現在博物館となっている旧理学部の建物新営費の70%)、他にも医学部附属病院拡張費(昭和元〜9年)、農学部の改築(含現在の本館新営)費(昭和7~12年)の大部分が支弁され、これが農学校から帝国大学への昇格やその後の総合大学化の決め手になったと述べています。国の財政が逼迫する中このような自己資金の有無は大学運営に決定的に重要であったため、当時の帝国大学は演習林の拡充に努めました。中でも北大の演習林は広大で現在でも国立大学の全演習林面積の1/2、世界の大学演習林としても最大の面積を誇っています。残念ながら現在は過去の過度な伐採により森林が回復せず、研究林の収益はごく僅かと聞いています。
 一方、世界一の広大な面積を生かしてカーボンオフセットの仕組みを導入すれば、伐採によらずに持続的な収益をあげることが可能との試算があります。法人化による財政難に苦しむ今こそ演習林設立の原点に立ち返り、全学の経営に貢献する時ではないでしょうか。センターの理念としての「持続的な生物生産」にも合致し、緑のスクールカラーを持つ北大らしい先進的な取組みとして世間からも評価されるでしょう。この取組みは過去に何度か検討されていると聞きますが、この機会に是非推進し実現していただきたいと考えます。
 フィールド研究に従事していない素人が勝手なことを申し上げました。ご無礼や私の思い違いがあれば指摘いただき、ご容赦とご教示を乞うものです。

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Newsletter #19-2 桃栗三年柿八年…

2018年5月15日

水圏ステーション 七飯淡水実験所 山羽 悦郎

 20年以上前に、「桃栗三年柿八年といいますが、これは種(タネ)から栽培した場合です。甘柿の枝を渋柿の根に接木すれば、八年かからずに甘柿を食べられるのです。このような種苗生産を魚でできないでしょうか。…」という文章で始まる科学研究費の申請をしました。首尾よく研究費に採択され研究が始まりました。どんな研究かというと、まずある魚(ドナー種)の発生過程で分化してくる生殖細胞の元となる細胞(始原生殖細胞:PGCといいます)を取り出し、別の種(宿主種)の胚へ移植します。そうすると宿主種の生殖腺にドナー種のPGCが組み込まれ、やがて宿主種の生殖腺の発達に伴ってドナー種の配偶子(卵、精子)が作られます。このままだと宿主種の配偶子も作られますから、宿主種のPGCは分化できないようにします。このようにして、別の種の配偶子を作る魚が作り出されました。約3ヶ月で成熟するゼブラフィッシュを宿主種とし、成熟に1年以上かかるキンギョやドジョウの精子が作れたのです。つまり、キンギョやドジョウのPGCをゼブラフィッシュへ接ぎ木することで配偶子を作るまでの時間を短縮することができました。しかし、どんな魚の配偶子も作り出せる訳ではありませんでした。同じ属の近縁種なら卵も精子も作れますが、遺伝的な距離が遠くなるにつれて精子だけしかできなくなり、目のレベルまで離れると配偶子は作られませんでした。接ぎ木の場合でも、種間の遺伝的距離が遠くなればつながらなくなりますから。
 「接ぎ木」というのは農業・園芸用語です。別の種の配偶子を作り出す魚は、動物での「キメラ」という用語を使います。キメラというのは、遺伝的に異なる2つ以上の細胞から個体が構成されているという意味を持ちます。受精後、細胞が増殖をする時期に、同種の他胚からの細胞を移植すれば簡単にキメラは作り出せます。キンギョにフナの胚を移植すると、キンギョとフナの細胞をもったキメラができ、さらに両方の配偶子を作ります。すなわち、一つの個体から複数の個体の配偶子を生産することができます。これを発展させれば、多様性を持った配偶子を少ない個体に作らせることができるのではないかと考えています。現在、数多くの胚からPGCを集めて移植したキメラの誘導を目指し、研究を進めています。


ゼブラフィッシュに移植されたウナギのPGC(緑)、周りの赤い細胞がゼブラフィッシュのPGCs

キンギョにフナの胚盤を移植した胚から発生したキメラ個体


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