Newsletter #25-1 新任教員紹介

森林圏ステーション 雨龍研究林・准教授 森田 健太郎

経歴: 奈良県出身。北海道大学水産学部卒、同大学院水産学研究科修了。博士(水産科学)。日本学術振興会特別研究員DC2・PD、国立研究開発法人水産研究・教育機構水産資源研究所(旧北海道区水産研究所)主任研究員を経て、令和2年11月より現職。

 11月より雨龍研究林に着任した森田健太郎と申します。これまで私は、おもにサケ科魚類を対象として、寒冷な地域に生息するものほど体サイズが大きいという温度―サイズ則などを含む動物の生活史形質の変異や個体数変動が生じるメカニズム等に関する動物生態学、並びにダムや外来生物種などの影響に関わる保全生態学を専門として研究してきました。代表的な研究としては、山地渓流に設置された砂防ダムが在来種イワナに及ぼす生態リスクに関する研究が挙げられます。ダム上流域に隔離された局所個体群では実際に絶滅が進行していること及び遺伝的多様性が低下していることを野外データで示すとともに、個体群動態の数値シミュレーションによってダム建設の数十年後から絶滅リスクが増大することを明らかにしました。この他、水産資源の変動要因と生物多様性に配慮した資源管理に関する応用的研究についても取り組んできました。将来のサケマス類の増養殖技術の高度化に関して、人工ふ化放流に加えて自然再生産もバランス良く併用することで、天然魚から遺伝的に変質するという“家魚化”の懸念を払拭し、持続可能な漁業に取り組むことを提唱してきました。

 今後も、フィールドワークを基盤とした生態学研究の発展に寄与したいと考えています。特に、野生動物の生活史と個体群過程に関する基礎生態学と保全生態学に力を入れて取り組みたいです。これまで私が研究対象としてきた冷水性のサケ科魚類は、地球温暖化の影響を受けやすいことが想定され、また、彼らが暮らす河川の渓流域は、単一種の人工林や砂防工事などによる人為的な攪乱に晒されており、基礎生態学のみならず、保全生態学の題材として適しています。また、森林圏ステーションの豊かな自然環境を生かした体験重視のフィールド実習を企画していきたいと考えています。そして、研究することの楽しさを気づけるような環境づくりに力を入れたいと思います。大学時代には、研究活動を通じて「感動」してもらいたい、という思いがあります。それは、自然は理解するだけではなく、感じるものだ、という思いがあるからです。実際に現場に行って体験すると、理解を超越した生命現象を「感じる」ことができ、その感覚は、自らの力で研究の方向性を見出すうえで、かけがえのないものになると思うからです。森林生態系と水圏生態系は連動しており、幾許かの人間活動の影響を受けつつ、そこに野生動植物が暮らしています。こうした繋がりと実態をフィールド実習・演習を通して体感することで伝えていきたいと考えています。地域貢献と未来の研究者のために尽力したいと思いますので、これからどうぞよろしくお願いいたします。