Newsletter #20-4 ジャイアントミスカンサスの道内への普及を目指して

2019年2月19日

耕地圏ステーション 生物生産研究農場 山田 敏彦

 約10年前にはバイオマスのブームがあり、植物資源からバイオエタノールを製造する動きが北海道にもありましたが、いったんブームは静まりました。しかし、最近、バイオマスが話題に上るようになってきました。人類が直面している温室効果ガス削減の対策には、バイオマスの積極的な利活用がやはり不可欠です。低温条件でも高いバイオマス生産が可能で、肥料がほとんど不要であるなどの利点から、寒冷地のバイオマス資源作物としてススキ属(Miscanthus)が近年、注目され、特に、二倍体のススキ(M. sinensis)(2n=38)と四倍体のオギ(M. sacchariflorus)(2n=76)との自然交雑した三倍体雑種のジャイアントミスカンサス(M. x giganteus)(GM)の栽培面積が欧米では増加してきています。北大農場でもGMを長期間にわたり栽培し、その能力を調査しました。その結果、平均25.6 ±0.2トンha-1-1の高い乾物生産を実証できました(写真1)。また、土壌炭素貯留量は1.96 ± 0.82 トンha-1-1 であり、森林での値より高く、資源作物としてGMを栽培することにより、温室効果ガスを削減できる機能があることを明らかにしました(Nakajima et al. 2019, Carbon Management)。GMは地上部分が十分に枯れる晩秋から早春にかけて収穫を行います。北海道では冬季多雪地帯であるために、雪解け後に刈取らなければなりません。幸い、GMは風雪が強い冬季間でも倒れない特性があることがわかりました(写真2)。現在、北海道各地に資源作物のGMを普及させることを目指して、各地に試験栽培を開始したところであります。バイオ燃料の原料としての利用にはまだ技術的にハードルが高いため、当面はペレットとしての燃焼利用を考えています。地域に賦存する木質や稲わらなどのバイオマスとGMを混合したペレットの試作なども検討しています。燃料原料以外の用途として、家畜敷料としての利用があげられます。木質バイオマス高騰のため、家畜敷料不足が深刻な問題になっています。また、昨今話題のプラスチック削減のための代替素材としても注目されています。一方、農業の生産現場での従事者の高齢化、労働力不足に伴い、農地条件が悪い場所等で耕作放棄地の増加が予想されています。そのため、農地の有効利用の一つとして、栽培が容易で省力的なGMを栽培し、いろいろなバイオマス資材用途に利用されることを期待しているところです。

写真1.北大農場で生育しているジャイアントミスカンサス(11月)

写真2.北大農場で生育しているジャイアントミスカンサス(1月)