〜30周年の節目に、実践と知恵がつながる草地の学び〜

2025年7月29日から3日間にわたり、第30回となる「グラスファーミングスクール」が開催されました。今年は記念すべき30周年という節目の会をファームエイジ株式会社の主催で、北海道大学COI-NEXT 次世代和牛生産システム構築拠点プロジェクトも共催として参加しました。地域資源を活かした持続可能な農業の普及と、環境教育の推進を目的に、産学連携による実践的な取り組みが展開されました。初日は「えこりん村」からスタートし、これまでの学びを共有し合う同窓会形式の特別企画で幕を開けました。

🍀過去と未来をつなぐ「えこりん村」での同窓会

これまで全国から草地畜産を志す仲間が集まり、学び、実践し、語り合ってきたグラスファーミングスクール。初日はその30年を振り返りつつ、各地で実践を重ねてきた卒業生たちが再集結。技術や課題、そして未来へのヒントが飛び交いました。

ガビン・シース博士の特別講演

今回のゲストは、ガビン・シース博士。ニュージーランドを拠点に長年にわたって持続可能な酪農経営を研究・指導してきた世界的な草地管理の専門家です。

草の力を信じること。動物の行動を理解し、自然のリズムと調和すること。これが経営の安定性と環境への責任を両立させる鍵である

日本とニュージーランドの放牧環境の違いを踏まえつつ、気候変動下でも草地を活かすための技術、草種の更新とローテーション、そして微生物と土壌の健康がいかに重要かが語られました。

🌾「草」と「土」を“見る”学び:草地品評会

今回参加された牧場主の皆さんが自牧場の牧草と土壌サンプルを持ち寄っての「草地品評会」が行われました。

手に取って香りを嗅ぎ、茎の太さや葉の密度、根の張り方、土の粒状性などを確かめながら、相互に評価し合うというユニークなワークです。ガビン博士の解説に加え、現場で使える技術のエッセンスが詰まっており、参加者からは「見えなかったものが見えてきた」との声も多数。

🐄 馬場牧場に学ぶ、グラスファーミングの実践成果

ここでは、グラスファーミングスクールでの学びを実践に変え、放牧による経営の安定化と利益率向上を実現してきた事例が紹介されました。

馬場さんの言葉が印象的でした:「土壌と草の管理がすべての基本。そこに集中することで、一人でもやれる酪農が見えてきた」

放牧導入により作業は効率化され、牛たちは足腰がしっかりし、健康的で強い個体に。さらに驚くべきことに、飼養頭数を減らしても利益が増えたという成果も。

これはまさに、「少ない労力・少ない資源で最大の成果を得る」グラスファーミングの哲学が、現実の農場で生きている証だといえるでしょう。

馬場牧場でのフィールドワークは、実際に実際に土を掘り起こして牧草の状態を把握することから、ライジングプレートメーターを使用して行う草地管理の基本、現地で実際に見て触って感じることでその学びは一層深いものとなりました。

持続可能な社会の実現に向けて

そして今回3日目は、私たちのプロジェクトに参加している内田義崇先生が、地球環境と農業の未来について講演してくださいました。
地球は今、危うい一線を越えつつあり、私たちの日常の選択がその行方を左右しています。食と農の背景には、窒素汚染温室効果ガスなど、目に見えない危機が静かに進行中です。このままでは、持続可能な暮らしも安心な未来も手放すことになりかねません。今こそ、地球の声に耳を澄ませ、「自分ごと」として行動を考えるときです。私たちの未来は私たち自身に委ねられている――そう強く実感させられる講演内容でした。

🌾積み重ねの30年から、次の30年へ

草地農業21のグラスファーミングスクールは、1996年の開講以来、一貫して「土・草・牛」の3要素を軸にした学びと、実践者同士のつながりを育んできました。今年もその精神は健在。むしろ、これまで以上に深化し、拡がっていると感じられた3日間でした。