

6月25日(水)にJA大樹町で畜産に従事する役場の職員のほか、JAと農家さん、学生さんを交え、21名が参加する畜産意見交換会を開催しました。
まず、このプロジェクトでの新しい生物科学概念「代謝プログラミング」による妊娠期や幼少期の栄養管理で牛の体質を最適化し、放牧でも牛が太る体質になること、それによって飼料には地方にある限界集落・中山間地域・離島等の豊富な植物資源を放牧活用し、その管理には先端の宇宙技術を駆使するIoTを活用した放牧管理システムの構築を目指していることが伝えられました。
大樹町は「宇宙のまちづくり」を標榜し、航空や宇宙分野での実験や飛行試験を積極的に誘致し、主にJAXAや大学などの研究機関が実験を行っています。
参加者の関心が最も集まったのは、やはりこのプロジェクトの核心である「代謝プログラミング」。それに加えて、「宇宙のまち」ならではの特色を活かした、AIや宇宙技術を応用した放牧管理の未来にも、多くの人が強い興味を示していました。
なかには、40年にわたり肉用牛の生産に携わり、最近ついに和牛の繁殖から身を引いたという方もいらっしゃいました。今の和牛生産に何を思い、次の世代にどのように引き継がれていくべきなのか――その答えを探るために、会に足を運んでくださったのです。
会場では、これからの和牛生産のあり方、そして若い世代がどのように和牛と向き合い、関わっていくのかについて、世代を超えた真剣な意見交換が行われました。


和牛生産の現場は、年々厳しさを増しています。高騰する生産コスト、担い手不足、そして未来への不安。それでもなお、「続けたい」と願う農家の方々がいます。畜産は、ただの仕事ではありません。命と向き合い、地域と生き、誇りをもって育ててきた営みです。
代謝プログラミングという新しい技術が、そんな思いに光をあててくれる日は、もうそう遠くはありません。子牛の段階から健康で、成長効率の高い個体を育てることで、生産コストを抑え、環境にも配慮しながら、持続可能で利益の出る畜産が実現できる――そんな希望が、今、確かな現実として姿を現し始めています。
さらに、放牧という自然に寄り添った飼養方法とこの技術を組み合わせることで、新たな可能性が広がっています。牛たちは、本来そこに生えている草を食べ、広々とした牧草地を自由に歩きながら、健やかに育っていく。その中で、適度にサシが入り、風味豊かな肉質を持つ牛を育てることも、夢物語ではなくなってきました。
牛が牛らしく生きること。その命が尊重され、穏やかに育つことで、私たちの食卓に届く「いのち」の重みも変わっていく。こうした放牧と代謝プログラミングの融合は、アニマルウェルフェアにもつながる、大きな一歩です。
生産者の「続けたい」という願いと、牛たちの「生きる」という営み。それらが調和し、持続可能な畜産の未来へと、静かに、しかし確かに歩みを進めています。




町営牧場で描いた、未来の放牧畜産のカタチ
今回、畜産意見交換後に大樹町の町営牧場の視察をさせていただきました。この代謝プログラミングと宇宙畜産という新しい技術を活かすことで、大樹町の公共牧場が持つポテンシャルが、これまで以上に鮮やかに浮かび上がってきました。
かつては1,500頭を超える乳牛を受け入れていたこの広大な牧場も、現在は受け入れ頭数が大きく減少し、維持のための町の支援や労力の負担が増しています。放牧地の草も十分に活用されておらず、草地の管理も大きな課題となっていました。
しかし、子牛の時期から代謝を最適化する代謝プログラミング技術と、この豊かな放牧環境を組み合わせることで、「放牧でもしっかりと太れる牛」を育てることができれば、牧場の活用価値は大きく変わります。放牧によって牛が牛らしく育ち、同時に収入増加や労力削減にもつながる可能性があります。
この技術を導入することで、大樹町の牧場は再び多くの牛と人を迎え入れる場所になり、「続けたい」と願う生産者たちの背中を押す、白老町に続く持続可能な畜産の拠点となれる――そんな未来のイメージが、今回の視察で確かな輪郭をもって見えてきました。






