
― 次世代和牛生産につながる研究を世界へ
2026年8月9日から14日にかけて、韓国・大田(テジョン)で「第72回 International Congress of Meat Science and Technology(ICoMST 2026)」が開催されました。

ICoMSTは、食肉科学・技術に関する研究者や専門家が世界各国から集まり、食肉の生産や品質、評価など幅広い分野の最新の研究成果を発表し、意見交換を行う国際学会です。
今回、COI-NEXT「次世代和牛生産システム構築拠点」からも、北海道大学、帯広畜産大学の研究者・大学院生が参加し、それぞれの研究成果を発表しました。
成長初期の「体の中で起こる変化」に迫る研究
北海道大学からは、研究課題1「代謝プログラミング」の研究に参画する鈴木准教授と、修士課程の大学院生2名が参加しました。
8月11日の「Muscle Biology & Meat Biochemistry」セッションでは、鈴木准教授が、離乳期における肝臓の遺伝子発現に着目し、コレステロールや脂質代謝に関わる変化について発表しました。
2名の修士課程の学生さんは、それぞれ母体の栄養状態が胎児の発育や心臓における遺伝子発現に及ぼす影響、出生後の初期段階における免疫状態と、その後の腸内細菌叢の変化との関係について発表しました。


3名の研究はそれぞれ異なる視点から、牛の成長初期における栄養、代謝、免疫、生体機能に着目したものです。
牛がどのような環境で成長し、体の中でどのような変化が起こるのかを明らかにすることは、その後の成長や生産性を考えるうえでも重要なテーマです。
こうした成長初期の変化を捉え、その後の成長や生産につながる要因を探る研究は、次世代の和牛生産システムを考えるうえでも重要な基盤となります。
肉質を「測る・見る」ための新たなアプローチ
帯広畜産大学からは、研究課題3のリーダーを務める口田先生と、その博士課程の学生さんが参加しました。

「Meat Quality」セッションでは、口田先生が、枝肉の脂肪酸組成を現場で推定するための携帯型近赤外センシング技術について発表しました。
また、博士課程の学生さんは、枝肉断面の画像から得られる複数の筋肉の特徴を解析し、枝肉単価を予測する研究について発表しました。
さらに、口田先生の研究室から、もう1名の学生さんも参加し、霜降りの画像解析と日本人消費者による牛肉の官能評価との関係について発表しました。
この研究では、オーストラリア産および米国産牛肉を対象に、霜降りの量だけではなく、その細かさや粗さなどの特徴と、消費者が感じる「おいしさ」との関係を解析しています。その結果、適度な脂肪交雑を持つ牛肉では、霜降りの細かさが官能評価と正の関連を示す一方、霜降りの粗さは負の関連を示す傾向が示されました。
こうした画像解析による客観的な肉質評価は、脂肪交雑の「量」だけでは捉えきれない牛肉の特徴を評価する方法として、今後の品質評価への活用が期待されます。
研究分野を越えて、次世代の和牛生産を考える
今回のICoMSTでは、牛の成長初期における栄養や代謝、免疫、生体機能に関する研究から、枝肉の脂肪酸組成や画像解析、さらに霜降りの特徴と消費者による官能評価まで、牛の成長や肉質に関わるさまざまな研究成果が発表されました。
それぞれの研究テーマやアプローチは異なります。
一方で、牛の成長を支える生体メカニズムを明らかにする研究と、枝肉や牛肉の品質を客観的に評価する研究は、より良い牛肉を生産するための知見を蓄積するという点で、重要なつながりを持っています。
COI-NEXT「次世代和牛生産システム構築拠点」では、研究課題1「代謝プログラミング」をはじめ、複数の研究課題がそれぞれの専門性を生かして研究を進めています。
今回のICoMSTでの発表は、こうした研究成果を世界の研究者に発信するとともに、海外の最新研究に触れ、研究者同士が意見を交わす貴重な機会となりました。
今後も、研究課題や専門分野を越えた連携を進めながら、次世代の和牛生産につながる研究成果を国内外へ発信していきます。