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北海道大学北方生物圏フィールド科学センター水圏ステーション 厚岸臨海実験所

実験所概要

沿革

1931年(昭和6年)、寒流系生物を主とするわが国唯一の亜寒帯臨海実験所として厚岸町に設立された。1949年(昭和24年)、 隣接の旧軍用地と自然林野を加えて、総面積約40万平方メートルとなり、海産生物のみならず、鳥獣その他自然生物全般の研究の場としても活用され、 より総合的な海洋生物研究教育施設としての整備が進められた。旧軍施設は附属標本博物館となり、博物館法指定施設となっている。1965年(昭和40年)、 縦覧規定を設け、5月より10月まで一般に有料(2008年5月以降は無料)で公開している。水族館は1996年(平成8年)8月に廃止された。

2001年(平成13年)4月に、北海道大学の農学部の附属施設であった7つの演習林、農場、牧場、植物園、水産学部の附属施設であった臼尻水産実験所、 洞爺湖臨湖実験所、七飯養魚実習施設、理学部の附属施設であった室蘭海藻研究施設と共に統合され、北海道大学の学内共同教育研究施設である 「北方生物圏フィールド科学センター」を形成し、当実験所は、室蘭臨海実験所、臼尻水産実験所、洞爺臨湖実験所、七飯淡水実験所と共に、 その中の「水圏ステーション」に所属することとなった。当実験所においては、国内、国外の研究者や大学院学生、学部学生が研究遂行や実習受講のために来所し、 長期もしくは短期に滞在して研究や実習に従事している。

周辺環境と生息動植物

北海道東部太平洋岸、釧路市の東50km、厚岸湾東岸のアイカップ(愛冠)岬の断崖下の岩盤上に建つ。前面の海底は岩盤、砂礫。 実験所の前面は保護規制海域として了解されており、アイカップ岬海岸は特別研究保護区として研究者以外の立入を禁止、 野外実験に支障のないようにしている。特色のある寒流系生物は豊富に見られる。 湾奥に行くに従い泥質となる。湾に連なる厚岸湖は浅くアマモが群生し、大小のカキ礁があったが、現在ではカキ礁は消失した。 海水温は寒流の影響で20度を越すことは少なく6、7月は海霧の日が多い。1月ころより湖内は結氷し実験所前の海面も、 蓮葉状氷が連なる。雪は少なく除雪を要する日は少ない。午前10時の月平均気温の最高、最低月は8月(18.3度)、 1月か2月(-3.3度)であり、平均海水温のそれは8月(17.6度)、2月(-0.1度)である(1992~95)。

実験所周辺で見られる主な動植物は以下のリストのものである。このほかにも多くの生物種が見られる。

厚岸湖

  • アマモ
  • コアマモ
  • オオアマモ
  • シラウオ
  • ホッカイエビ
  • マガキ
  • アサリ
  • ホソウミニナ

厚岸湾

  • シシャモ
  • ハタハタ
  • コマイ
  • ホッキ
  • カレイ類
  • コンブ

大黒島

  • コシジロウミツバメ
  • オオセグロカモメ
  • ウトウ
  • ウミウ
  • エトピリカ
  • ゼニガタアザラシ
  • ゴマフアザラシ

実験所周辺

  • ヒドロ虫
  • イソギンチャク類
  • ゴカイ類
  • オオバンヒザラガイ
  • オホーツクヘラムシ
  • ホッカイエビ
  • オホーツクホンヤドカリ
  • ハナサキガニ
  • クリガニ
  • 複合ボヤ類
  • ミヤマカケス
  • エゾアカゲラ
  • シロハラ
  • ゴジュウカラ
  • キタキツネ
  • エゾウサギ
  • エゾリス
  • シマリス
  • エゾシカ

実験用生物の供給サービス

エゾバフンウニ供給サービス

エゾバフンウニは5月下旬から8月上旬ころまでが生殖期であるが、この十数年来、道東地域では生息数が減少し、実験所前面の磯での採集は困難である。 しかし、近年、周辺海域では厚岸漁業協同組合を中心に稚ウニの放流が行われており、生息状況も回復の兆しがみられる。それゆえ、2月上旬までに当実験所に連絡をもらえば、 当漁業協同組合のご協力により同組合・ウニ部会により採集されたウニを引き取り、その後生殖期まで当臨海実験所内の水槽で所員が飼育し、卵と精子が使用可能となった段階で 発生学研究や実習用など教育研究用に提供することが可能である。空輸による発送サービスも可能な地域に対して行っている。

その他の生物材料の提供・輸送サービス

所外の大学・研究機関から希望があった場合は、当実験所の業務に支障のない限り、教育研究用の生物材料の提供・輸送サービスも行っているので問い合わせられたい。 キヒトデは産卵期のものが4月下旬から5月上旬に使用できるが、湾内では産卵期前や後に駆除が行われているため、産卵期のキヒトデを集めることは難しい。 ただし、4月上旬頃までに連絡をもらえば収集が可能なことがある。なお、根室方面にまで足をのばせば6月中旬頃まで産卵期のものが収集可能な場合があるので問い合わせられたい。