忍路臨海実験所で開催の「ひらめき☆ときめきサイエンス」について

忍路臨海実験所では日本学術振興会の支援を受けて平成23年度から“ひらめき☆ときめきサイエンス〜ようこそ大学の研究室へ〜”を開催しています。これは、科学研究費補助金による研究成果をもとに、大学で取り組まれている研究の一端に触れてもらうという児童・生徒に向けた体験型プログラムです。

北海道沿岸は世界のなかで最もコンブ類の種多様性に富んだ地域のひとつです。多様なコンブは各地で“海中の森”を形成し、海洋環境の安定化や、さまざまな海棲動物の住処として重要な役割を果たしています。しかし、小樽を含む北海道南西部の日本海沿岸は、“暖流勢力の増大”や“季節風の弱化”にともなう環境の変化や、それに起因するウニの食害によって“コンブの森”の衰退が深刻化しており、忍路臨海実験所ではその保全に向けたフィールド研究を進めています。

これまでに得られた研究成果を受けて、実験所では小樽や札幌に暮らす小学5・6年生を主な対象として、@「北海道沿岸の“コンブの森”の現状とその保全研究」についての講義、A“コンブの森”の水質調査とそこに見られる海藻の採集&標本作り、B船上からの海中観察、Cコンブ類種苗の作出とその海中投入、D“コンブの森”の保全策についての意見発表会、などを行ってきました。私たち主催者側もこの授業を通して参加者からたくさんの刺激を受けており、例えば、子供たちの磯焼け域内にわずかに残るコンブ群落を前にして唖然とする姿や、将来の繁茂に向けて祈る思いで種苗の海中投入をする姿は毎年のことながらとても印象的です。また、平成23年度(平成25年度にも予定)には昆布漁業が盛んで、当センターの包括連携協定先でもある様似町からも参加者が集まりましたが、彼らが地元とは違ったコンブの種類や海中の環境に驚きながらも熱心に小樽や札幌の子供たちに“様似の磯”について語る様子も印象深いものでした。

実施後のアンケートから、忍路臨海実験所での授業は小樽と様似いずれの子供たちにとっても自分の暮らす地域の海について考えるよい機会になったようです。このプログラムはこれまでに臼尻水産実験所や生物生産農場、雨竜研究林でも実施されており、それぞれのフィールドを活用した独創的な授業によってセンターの研究活動が未来の博士たちに紹介されています。

(水圏ステーション 忍路臨海実験所 四ツ倉典滋)



写真1:実験所前浜で“コンブの森”について説明を受ける様子



写真2:磯船の上で水中カメラを熱心に覗き込む様子



写真3:“コンブの森”から採集された海藻の標本作りをする様子



写真4:海中に投入するためのコンブ種苗を準備する様子