自然資本である風力、太陽光、バイオマスを活用する再生可能エネルギーは、温室効果ガスの削減に貢献する一方で、その製造から設置、運用、廃棄に至るライフサイクル全体を考慮すると、森林伐採などの自然破壊を伴う開発行為であるため、生物多様性の消失、それにともなう生態系サービスの価値の低下などを引き起こします。そしてこのような開発行為はトータルで見ると人間活動の持続性に負の効果をもたらすことから「ネイチャーネガティブな開発行為」と言えるでしょう。これからも自然資本の持続的利用を実現するためには、「ネイチャーポジティブな開発行為」を社会実装する必要があります。加えて、自然資本の大部分は大都市圏ではなく、人口減少が著しい地域に存在しています。そしてこれらは、地域の持つ「財産」でもあります。この自然資本の利用については、地域社会の持続性、発展性に考慮する「地域社会ポジティブ」な考え方も強く求められることになります。
以上を鑑み、全国随一の再生可能エネルギーポテンシャルを誇り、人口減少社会における地域課題先進地である北海道において、ネイチャーポジティブかつ地域社会ポジティブを両立させるバランスの良い社会システムの実装を目指し、再生可能エネルギー関連産業の健全な成長と発展に貢献する人材育成および関連研究を実施するための教育研究拠点を北大に立ち上げました。
ミッション達成に向けて本センターが旗振り役を担わせていただき、関連する企業、自治体、研究機関などすべての皆さまと協力できる体制を構築して行く所存です。これからの益々のご支援、ご協力をお願い申し上げます。
北海道大学リニューアブルエナジーリサーチ&エデュケーションセンター
センター長 宮下 和士