2026年7月11日(土)、北海道白老町において、JST COI-NEXT「次世代和牛生産システム構築拠点」と北海道大学リジェネラティブ農林水産研究拠点(IRAFF)が主催し、一般社団法人 TOPとの共催によるサイエンスレストラン「北大グラスフェッド和牛が目指す未来」を開催しました。

当日は、北海道大学からプロジェクトリーダーの後藤貴文教授をはじめ、西邑隆徳理事・副学長ら10名が参加。さらに、北海道農政部長、白老町長、金融機関(三井住友銀行)、IT企業(NTTデータ北海道)、放送局(HBC)、地域住民の皆さまなど学外から20名をお迎えし、総勢30名で「科学」と「食」がつながる特別な一日を体験していただきました。

午前はフィールドへ―未来の畜産を支える現場を体感-

午前中は、本プロジェクトの主要な実証フィールドである株式会社敷島ファームを視察しました。

参加者の皆さまには、まず、代謝プログラミング(MP)技術を実践する敷島ファームの飼養現場をご案内しました。子牛が生まれてから育成され、放牧を経て出荷されるまで、一貫した飼養管理の様子を見学いただいた後、広大な放牧地でのびのびと草を食む牛たちの姿をご覧いただきました。研究によって生まれた技術が、実際の生産現場でどのように活かされ、「未来の和牛」が育まれているのかを体感できる、貴重な機会となりました。

科学が実際の生産現場で社会実装されている様子を体感いただき、参加者の皆さまからも多くの質問が寄せられました。

午後はサイエンスレストランへ ~研究成果を「食」で体験~

会場を白老町のブリュワリー「The Old Grey Brewery」へ移し、サイエンスレストランを開催しました。

まずは、後藤教授による「グラスフェッド和牛肉のサイエンス」、続いて敷島ファーム代表・高田社長による「白老町肉牛農場からはじめるゲームチェンジ」と題した講演を実施。科学技術と地域が一体となって実現を目指す、新しい畜産の未来について紹介しました。

その後は、村上シェフと奥田シェフが、白老の豊かな食材と研究成果を融合させた、この日だけの特別なコース料理を提供してくださいました。

地域の魅力と科学が融合した特別メニュー

  • ホッケのセビーチェ                                              白老で養殖が進められているホッケを「生」で味わう、新しい発想の一皿。セロリをベースとしたレモンの爽やかなソースが素材の魅力を引き立てました。
  • MPグラスフェッド和牛のカルパッチョ                                      この日、参加者の皆さまを最も驚かせた一皿です。霜降り至上主義でもなく、ただの赤身肉でもない――科学の力で引き出された、命本来の旨味と柔らかさ。通常のグラスフェッド和牛は赤身が強く、やや硬くなりがちですが、MP技術によって脂肪と赤身のバランスが絶妙な理想的な肉質を実現。その特徴をシェフが繊細な調理で見事に表現し、「こんなに柔らかい肉は初めて」「赤身のイメージが変わった」といった驚きの声が会場から上がりました。     
  • MPグラスフェッド和牛のステーキ みやび椎茸とホースラディッシュのソースを添えて                     メインディッシュでは、MPグラスフェッド和牛をステーキで提供。脂のしつこさがなく、赤身本来の濃厚な旨味と柔らかさを存分に味わえる一皿に仕上げられました。さらに、白老産「みやび椎茸」を添えることで、肉厚で芳醇な椎茸の旨味が和牛の味わいに奥行きを与え、素材同士が互いの魅力を引き立て合う見事な一皿となりました。科学が生み出した新しい和牛の価値を、シェフが白老の食材とともに一皿で表現した、まさにサイエンスレストランを象徴するメインディッシュとなりました。         
  • 虎杖浜たらこのオリジナルオイルパスタ                                     蒲原水産のたらこを使用し、「冷たすぎず、熱すぎず」という絶妙な温度で提供。たらこ一粒一粒の食感と旨味を最大限に引き出した、シェフの技術が光る一皿でした。        
  • 締めのデザート                                                コースの最後には、メニューにはない奥田シェフからのサプライズデザートが用意されていました。タルトに旬のメロンを合わせ、ふんわりとしたエスプーマをまとわせた一皿は、繊細な味わいと美しい盛り付けで参加者を魅了。シェフの感性が織りなす一日の締めくくりにふさわしい、心に残るデザートとなりました。 

「おいしい」が未来を変える

今回のサイエンスレストランは、研究成果を論文やデータではなく、「味わう」という体験を通して伝える新しい試みでもありました。

参加者からは、
「赤身肉の概念が変わった」
「地域の食材がこれほど魅力的だとは知らなかった」
「科学がここまで食のおいしさにつながることに驚いた」
など、多くの感想が寄せられました。

また、行政・大学・企業・金融機関・地域が一堂に会し、持続可能な畜産と地域づくりについて語り合うことで、産学官金が連携する本プロジェクトの大きな可能性を改めて実感する機会となりました。

私たちはこれからも、白老町を舞台に、科学の力で「おいしさ」と「環境価値」の両立を目指し、地域の皆さまが誇りを持てる新しい畜産と循環型社会の実現に挑戦してまいります。

ご参加いただいた皆さま、そして素晴らしい料理を届けてくださったシェフ、生産者の皆さまに心より感謝申し上げます。