北海道大学フロンティア基金を利用したご寄附のお願い

札幌博物場150年史~ 開拓使・札幌農学校以来の蓄積 ~」刊行資金へのご寄付お願い

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【プロジェクトの趣旨】

 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター植物園の博物館は、1877(明治10)年に開拓使が設置した札幌博物場を起源としており、北海道最古の博物館施設です。この博物場は1884年に札幌農学校(現在の北海道大学)の博物館となり、大学博物館としても日本で最も長い歴史を持っています。2024年に大学博物館として140周年、きたる2027年には設置150周年の節目を迎えることになります。

1882年に建設された新館の開業式の様子(附属図書館所蔵)

 博物館には、絶滅種エゾオオカミの剥製やブラキストン線の提唱の根拠となった鳥類標本や農学部で重要な研究を続けていた元館長阿部永博士の小型哺乳類標本などの動物学標本、明治・昭和期に収集・購入したアイヌ民族の文化資料、北海道考古学の黎明期の拠点として積極的に収集された考古学資料、南極に派遣されたカラフト犬タロなどの周知の重要資料のほか、大学博物館として受け入れ続けている北海道大学における研究活動の証拠としての学術標本が多数所蔵され、現在も新たな研究活動の資源として提供されています。

 また、管理する博物館建築の多くは重要文化財に指定され、建築史や建築意匠史の研究材料になるとともに、北海道を訪れる多くの観光客にも親しまれています。

エゾオオカミ
コレクションを守り続けてきた収蔵庫(1885年建設)

 しかしながら、この歴史的・現代的価値を有する博物館や所蔵・管理する研究資源については、詳しい紹介がまとめられたことがないだけでなく、その歴史の長さゆえに誤った情報が引き継がれていることが少なくありません。博物館には展示されている資料・標本以外にも重要な研究資源が数多く所蔵されていますが、その存在が知られていないことで、十分に研究に活用されているとは言えません。
 そこで、創立150周年を迎えることを契機に、今後博物館や所蔵資料を活用する研究者だけでなく、来館者の学びの参考材料になるような、博物館・所蔵資料・建築物の歴史や背景情報を取りまとめた『札幌博物場150年史~ 開拓使・札幌農学校以来の蓄積 ~』を刊行することとしました。

演武場(現在の札幌時計台)の扁額
札幌農学校の旗

 『札幌博物場150年史』の原稿は完成しており、図書館、大学、博物館等において「恒久的に所蔵される書籍」として販売した後は、多くの学生や来館者に気楽に手に取ってもらえるよう、附属図書館の学術成果コレクションHUSCAPで無料公開する計画も進めています。将来的な無料公開を実現するためにも、自己資金での刊行が必要になってきます。

 『札幌博物場150年史』の刊行は、北海道大学の150年の学術資源の蓄積と継承活動への理解を深めるだけでなく、未来の研究者の活用を促進するものです。この刊行に向けてお力添えいただきますよう、お願い申し上げます。

【刊行物の構成】

 『札幌博物場150年史』は、1.前史~開拓使・農商務省時代の札幌博物場、2.大学博物館としての札幌博物場、3.札幌博物場の展示公開の変遷、4.札幌博物場に蓄積された資料群、5.札幌博物場の文化財建築の5部構成と、付録として過去に博物館の資料を利用して行われた研究などの情報を掲載しています。以下に現時点での目次を掲載します。

目次

1 部 前史~開拓使・農商務省時代の札幌博物場
1.1 開拓使の博物場前史
 ケプロンの博物院設置構想と開拓使の資料収集 / ライマンの提言による開拓使の博物場設置構想
 コラム : 黒田清隆が採集した石炭
1.2 開拓使の博物場
1.2.1 北海道物産縦観所・東京仮博物場
 開拓使による博物場の設置 / 東京仮博物場の職員 / 東京仮博物場職員の活動 / 東京仮博物場の陳列・所蔵資料 / 東京仮博物場閉場にともなう所蔵資料の分散
1.2.2 札幌仮博物場
 札幌仮博物場の歴史記述における課題 / 札幌仮博物場の設立時期 / 札幌仮博物場の名称/ 札幌仮博物場の職員と活動 / 札幌仮博物場の公開 / 札幌仮博物場の所蔵資料 / 札幌仮博物場の建物と敷地 / 札幌博物場の建設
1.2.3 札幌農学校の標本室
 札幌農学校演武場内の標本室の計画 / 札幌農学校標本室の所蔵資料
 コラム : モースがみた土器
1.2.4 函館仮博物場
 函館仮博物場の設立 / 函館仮博物場の資料収集 / 函館仮博物場の開場と公開 / 函
館仮博物場の所蔵資料と函館県への移管
1.3 農商務省時代の札幌博物場
1.3.1 農商務省博物局・北海道事業管理局管理下の札幌博物場
 開拓使廃使にともなう札幌博物場の農商務省への移管 / 札幌博物場の運営目的の変化 / 札幌博物場の職員 / 所蔵資料の管理体制の整備 / 農商務省時代の札幌博物場の所蔵・収集資料/ 札幌博物場の公開
1.3.2 札幌農学校管理下の札幌博物場
 北海道事業管理局から札幌農学校への移管 / 札幌農学校管理下における札幌博物場職員 / 札幌農学校移管後の札幌博物場の活動 / 札幌農学校管理下の札幌博物場の資料収集 / 札幌農学校の北海道庁所属と博物場・標本室の統合

2 部 大学博物館としての札幌博物場
2.1 統合された札幌博物場と農学校の標本室
2.2 札幌農学校所属博物場の担当教職員と時代ごとの活動
[1]小寺甲子二時代(1886-1897) / [2]村田庄次郎時代(1897-1906) / [3]八田三郎時代(1907-1929) / [4]犬飼哲夫・名取武光時代(1930-1949) / [5]犬飼哲夫時代(1950-1960) / [6]阿部永時代(1961-1968) / [7]専任教員不在時代(1969-1998) /[8]資料管理再整備時代(1999-) /
2.3 今後の展望 「札幌博物場の200 年」に向けて

3 部 札幌博物場の展示公開の変遷
3.1 展示内容の変遷
 開拓使~農商務省時代の展示 / 札幌農学校時代の展示 / 『札幌博物館案内』の展示/ 北海道帝国大学時代の展示 / 北海道大学時代の展示(重要文化財指定以前)
 コラム : 宮沢賢治がみた札幌博物場
3.2 縦覧規程と入館者数の変遷

4 部 札幌博物場に蓄積された資料群
4.1 蓄積された資料群とその活用にあたっての課題
4.1.1 札幌博物場の資料・標本管理史
 開拓使時代の資料管理 / 農商務省時代の資料管理 / 札幌農学校移管後の資料管理と混乱 / 村田庄次郎による資料管理体制の再整備 / 再度の資料管理混乱 / 博物場名称変更にともなうラベルの更新と体系的なコレクション管理の停止 / 1930 年代の鳥類・哺乳類の再整理 / 1950 年代の鳥類標本管理 / 1960 年代 阿部永による現行台帳の運用開始 / 21 世紀 資料台帳のデータベース化
4.1.2 資料ラベルの利用年代
4.2 札幌博物場所蔵資料群の概要
4.2.1 鳥類標本
 博物場および大学関係者が収集した鳥類標本 / 研究機関・個人由来の鳥類標本群/ 鳥類標本全体の課題
 コラム:ブラキストンが調査した鳥類標本 ムギマキ
 コラム:北海道大学に生息していたシマフクロウ
4.2.2 哺乳類標本
 19 世紀に札幌博物場が収集した哺乳類標本 / 20 世紀初頭に札幌博物場が収集した哺乳類標本 / 20 世紀前半に犬飼哲夫が収集した標本 / 20 世紀半ば~後半に動物学教室関係者が収集した哺乳類標本 / 20 世紀後半に札幌博物場が収集した哺乳類標本 / 個人からの寄贈哺乳類標本 / 哺乳類標本全体の課題
4.2.3 その他の生物標本
 魚類標本 / 両生類・爬虫類標本 / 貝類標本 / その他の分類群の標本 / 鳥類・哺乳類以外の分類群標本の課題
4.2.4 民族資料
 アイヌ民族資料 / アイヌ以外の北方民族資料 / その他の民族資料 / 民族資料全体の課題
4.2.5 考古資料
 開拓使時代の考古資料 / 札幌農学校時代の考古資料 / 名取武光収集の考古資料 /その他の考古資料 / 考古資料全体の課題
 コラム:「北大式土器」の示準資料
4.2.6 歴史・勧業資料
 開拓使製造物品 / 博覧会関連資料 / 農商務省移管資料/ 水産博覧会出品資料 / その他の開拓使関連歴史資料 / 札幌農学校~北海道大学・札幌博物場の歴史資料
4.2.7 絵画資料
 札幌で制作された絵画・図 / 東京で制作された絵画 / 開拓使廃使後に制作された絵画 / その他の絵画資料
4.2.8 地質資料
 開拓使・札幌農学校の地質資料 / 現存資料 / ライマンコレクション
4.2.9 南極観測資料
4.2.10 その他の資料群
 宮部金吾資料 / ジョン・バチェラー資料
4.2.11 札幌博物場所蔵資料群全体の課題
4.3 その他の研究資源
4.3.1 写真資料
 開拓使時代の写真資料 / 大学博物館の写真資料 / 札幌博物場の写真資料群
4.3.2 映像資料
 八田三郎の映像資料 / 犬飼哲夫の映像資料 / マンローの映像資料 / その他の映像資料 / 映像資料の課題
4.3.3 図書資料
 図書資料の歴史 / 札幌博物場の図書資料 / 図書資料の課題
4.3.4 アーカイブズ資料
 アーカイブズ概要 / アーカイブズ資料の課題
4.4 札幌博物場から移動した資料群
 農商務省時代のアイヌ民具資料 東京国立博物館への移管 / 万国発明品博覧会に出品されたアイヌ民具資料 / スミソニアン協会国立自然史博物館からの依頼に応じたアイヌ民具資料 / 1890 年代の札幌農学校キャンパスへの植物・昆虫標本移管 / 1893 年の勧業資料の返納 / 東京帝国大学動物学教室との鳥類標本交換 / アメリカ自然史博物館との鳥類標本交換 / 附属図書館への開拓使写真資料の移管 / スウェーデン自然史博物館・ベルクマンとの標本交換 / 犬飼のアメリカ出張にともなうアイヌ民具資料の寄贈 / 名取の転出による考古資料の移動

5 部 札幌博物場の文化財建造物
5.1 重要文化財建造物 - 名称、範囲-
5.2 重要文化財建造物
5.2.1 博物館本館
5.2.2 博物館倉庫
5.2.3 博物館事務所
5.2.4 植物園門衛所
5.2.5 博物館便所
5.2.6 博物館鳥舎
5.3 登録有形文化財
5.3.1 北海道大学附属植物園庁舎(旧札幌農学校動植物学教室)
5.3.2 バチェラー記念館
 コラム:博物館本館はいつから「本館」なのか?
文献一覧
掲載図版一覧

【掲載予定写真から】

開拓使の官営工場で試作された胡桑酒
札幌農学校時代の縦覧券
博物館の外に展示されていた鰊漁船やアイヌの丸木舟などの様子
1990年以前の博物館本館内の展示の様子
千島で採集した熊の足跡が描かれた土器
農学部OBから寄贈されたキャンパス内を鉄道が走っていたころの写真
開拓使時代に制作された絵画資料
名取武光が制作を依頼して収集したアイヌの花矢資料群
札幌農学校農学教室の棟札