北海道大学北方生物圏フィールド科学センター水圏ステーション
『北海道大学全学1年生対象』の一般教育演習「海と湖と火山と森林の自然(フレッシュマン実習)」と「フィールド体験型プログラム - 人間と環境科学(1)」:それぞれ毎年8乃至9月に1日の日程で、動植物プランクトンの観察、湖上での水質環境モニタリング及びサケ科魚類の脳解剖を行っている。
『北海道大学水産学部増殖生命科学科3年生対象』の「水産増養殖実習」:毎年10月に2日間の日程で、動植物プランクトンの観察、湖上での水質環境モニタリング及びサケ科魚類の脳解剖を行っている。
洞爺湖は、これまでに天然災害(数十年周期で繰り返される有珠山噴火による降灰)並びに人為的災害(水力発電のため導入した酸性河川水による酸性化、及び富栄養化)により多大な影響を受けてきた特異的な湖である。現在、湖水は水力発電・飲料水・農業用灌漑用水として利用され、湖内には内水面漁業の有用対象魚が棲息しており、北海道の湖沼における自然環境保全を考える上でモデルとなる重要な湖である。洞爺臨湖実験所では、学内共同利用施設としていろいろな研究者に研究の場を提供するとともに、道内の他機関と連携して以下の項目に関して共同研究を実施している。
湖水環境および食物連鎖に関する研究湖水の物理・化学・生物学的調査を総合的に行い、湖水の物理・化学的環境が、動植物プランクトン、底生生物、魚類などからなる食物網にどのような影響を及ぼしているかを解析する。
人工河川を利用したヒメマス、サクラマス(ヤマベ)の母川回帰に関する試験研究洞爺臨湖実験所と洞爺湖を結ぶ40mの人工河川(魚道)を利用して、いろいろな試験処理を施したもしくは性状の異なるヒメマス・サクラマスの稚魚を標識放流し、それらの処理や性状の母川回帰能への影響を解析する。
漁業資源管理に関する研究内水面漁業の有用対象魚を適正に資源管理していくために、洞爺湖での有用対象魚の孵化放流尾数並びに漁獲尾数を継続的に調査している。また、洞爺臨湖実験所でも孵化放流事業を行っており、刺し網による定期的な調査の他に、夏季には魚群探知機を用いた資源量調査も行っている。
北海道には湖沼や湿原が多く、未だ多くの自然が残されている。最近、特に環境保全に対する人々の関心が高まり、北海道の湖沼や湿原でもラムサール条約に登録するなどの活動が行われているが、一般に肉眼で観察することができる水鳥、水生植物及び水棲昆虫などに関心が集まり、肉眼で観察できないプランクトンのような小さな生物の消長にはほとんど関心が払われない傾向にある。
そこで、北海道の湖沼や湿原から淡水微細藻類を採集し、それらの植物相(淡水微細藻類相)を調べ、過去の文献等に記載されている種のリストと比較して、最近の気候変動や環境破壊などによりどのように種構成が変わってしまったかを調べる。
さらに、それらの淡水微細藻類、特に接合藻類の希少種を人工合成培地を用いて単藻培養することにより半永久的に系統保存し、将来その種が自然環境下で絶滅してしまった際、播種することにより自然環境の復元に利用できるようにする。
接合藻類に属するミカヅキモ属には、現在までに150を超える形態種が記載されているが、さらに一つの形態種の中に複数の生物学的種が存在することが知られている。これらの形態種や生物学的種を形態測定法、交配法及び分子系統学的手法を用いて解析し、ミカヅキモ属の種分化の機構を明らかにする。